第六百十八話 県大会個人戦
また情報をミスしました。柔道のインターハイの場合、団体戦は型抜きではなく、ポイント制(勝ち数できそう)でした。物語だと盛り上がる勝ち抜きについついしてしまいました。申し訳ございません。
過去の例をとり、盲目の人の目を生活が送れるレベルまで補助するメガネがあるなど、現実とはかけ離れてるので
異世界転生するまえから異世界だんたっだと思っていただいても構いません(正確には今より未来でしょうか)。
申し訳ございませんでした。
以後、現実的なルール等は無視します。
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昨日と全く同じ会場にて、俺たち4人と柔道部員たちは集まっていた。
「今日は個人戦だね」
俺たち四人は今日も翔の応援をするの。
今言った通り、個人戦だからね、翔の勇姿をとことん見られるよ! やったね!
「いやあ、二日連続悪いな」
「いいんだよ! 親友だろぉ!」
「そうよ」
「ふふふ」
翔がなんだかすごく嬉しそうに笑っている。ああ、そういえば今日はサプライズも用意してきたんだっけな。
「そういえば今日はお弁当持参なんだっけ? みんなお弁当は持ってきたの?」
「俺はリルが持ってきてくれて……だがリル、揚げ物ばかりを…」
「俺はおにぎりだけっす」
「俺もだ」
なるほどなるほど、打ち合わせと美花の予測通りだ。リルちゃんも予定通り揚げ物を作って持ってきてくれたらしい。これならばみんなにご馳走を渡せる。
美花と俺とでアイコンタクトをとり、俺は近くにあった袋から重箱を取り出したの。
「ね、お昼になったらみんな一緒に食べない?」
「「「えっ……!?」」」
「私達で作ってきたのよ。リルちゃんが揚げ物ばっかり作ったのもそのためよ」
「俺と美花はまた別のもの作ってきてるんだ。たくさんあるからね!」
柔道部員たちが目をパチクリさせてるの。俺と美花は話を続けることにした。
「もちろん、俺と美花と桜ちゃん…そしてリルちゃんの4人の手料理だよぉ! 打ち合わせて、朝早起きして作ったの!」
「そういやリル、朝早くおきて忙しそうにしてたな……これか」
部員たちはゴクリと唾を鳴らした。
「え、えーっと、お昼になったらこの重箱の中身を食べていいんすよね?」
「うん! みんな持参したおにぎりを主食に、おかずとして食べてね! あ、もちろん、ゴリセンもですよ?」
「おお、いいのか、嬉しいな」
部員たちの目の奥に、なんだか燃え盛る炎が宿ったみたいだ。これもやる気を出させる作戦の一つだからね!
ふふふ。
「おれ……おれ、柔道やっててよかったわ」
「ああ、まさか、まさか、三大美女とその妹さんの手料理が食えるとは…夢か? これは夢か?」
…ん? 三大美女なのになんで桜ちゃんだけ別に言ったんだろ? 美花もリルちゃんと桜ちゃんで三大美女だよね? ちょっと疑問に思ってたところに、翔が話しかけてきた。
「なあ、叶君は作ってないのか? いつもだったらノリノリでこういうの参加してると思うんだが」
「叶はね、『こういうのは女子が作ったものを食べさせるのが一番だから、俺が参加するのは無粋だよ』って言って作らなかったんだよね」
「お前は作ったんだよな?」
「うん、腕に自信あるからね! アナズムに行ってから」
「………お前、本当にそれでいいのか?」
「ん?」
「……いいんだな。アイドルやってるぐらいだしな」
ちょっと何言ってるかわかんないや。なにが疑問なんだろうか。叶が言ったみたいに女子じゃないのに作っちゃったのがいけなかったかしらん? んー、でも翔は俺が作ったものでもニコニコして食べるしなー。んー?
「ああ、弁当で盛り上がるのはいいが、そろそろ本番だぞ」
「お、忘れてた。じゃあわりぃ、控えてくるわ」
「「ん! 頑張ってね」」
「「頑張ってください、翔さん」」
「頑張ってね、ショー!」
「ああ、頑張るぜ」
リルちゃんは人前だから少し自重しながらショーに抱きついた。すぐに離れると、ショーは微笑みながら舞台裏へと消えてゆく。
リルちゃんは美花の隣にちょこんと座ったの。
「わふふ、ショーの勇姿が見られるよ。私、これが目当てなんだ」
「やっぱりそうなのね。でも他の部員の子も応援してあげなよ?」
「勿論だとも! でもショーは誠心誠意全力で応援するつもりさ」
ショーってば愛されてるなぁ…。そんなんだから他の学校から、ショーとリルちゃんが抱きつきあってるときにすごい睨まれるんだよ。きっと嫉妬だよそれ。
「 それにしても初戦からいきなり翔なのね」
「ああ、それはだな」
ゴリセンが会話に入ってきた。
「それは?」
「あいつ、地区大会で無双したからな。まず間違いなくシードがあればシードだったんだが、今大会はシードがない。ま、その名残だな。恥に追いやられてるだよ」
「そ、そうなんですか」
となるとやっぱり相当な無双したんだろうなぁ。なんか危ない系の集まりを1人で壊滅させちゃうようなやつだから、本気出せば大会でも無双できるんだね。
「あ、ショーだっ。えへへ、かっこいい」
アナウンスに名前と高校名と学年を呼ばれながら、ショーは土俵の上に上がった。続いて敵方もだ。
いやぁ、やっぱり翔はイケメンだわ。こうしてみると全然違うもんね。
「……始まるな」
2人のもとに審判がついた。
帯のあたりで拳を作り、2人は礼をする。
『ハジメッ!』