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第六百十二話 有夢のところにも


 サーカスから帰ってきた次の日、つまり火曜日。

 どうせ今日も4時限しかない授業ですぐ終わる。美花と付き合う前はこういう日はどっぷりゲームに浸かったものだけど、今はそうはいかない。

 

 そういえば最近ろくにゲームしてないな。とは言ったもののこの時期にゲームばかりしてたら普通は怒られるんだけどね。うちの学校勉強に関しては厳しめだから、あと数週間で期末だとピリピリしてる。

 と、いってもピリピリしてるのは先生も、それも位が高めの人たちだけだけど。



「きりーつ。れぇーい。さいならー」



 今日の日直のなんとも力の抜けた声が響く。

 俺たちは一斉に立ち上がり、カバンを背負い込んだ。



「じゃー、また明日な」

「わふ、じゃね!」

「ん、またね」

「二人ともじゃあね」



 翔とリルちゃんはこれから部活だ。

 4日後の県大会に向けて猛特訓中。俺は多分全国大会で翔が優勝できるだろうと信じてる。

 あ、しょーがゆうしょーって、ダジャレじゃないよ。



「今日は帰ったら何しよっかっ」

「何しようねぇ…」



 すんごい昔から毎日どちらかの部屋で一緒に居るからもうレパートリーがない。大抵ゲームだね。

 なんか最近、これもやっぱりステータスのおかげなのかは知らないけれど、美花がゲーム上手くなってきた。

 もともと格ゲーやシューティングゲームは美花の方が上手かったんだけど、ビデオ人生ゲームとかそこら辺のやつ。



「じゃあ今日はレーシングゲームして、負けたほうが脱いでくってのはどう?」

「ここはアナズムじゃないんだから……」

「あー、そっか」



 美花はたまに脱ぎたがる。

 なんの兆候かはもうわかってるけどね。ここは地球の日本だし、そうやすやすとはいかない。



「むむ」

「どしたの?」



 美花がいきなり立ち止まった。



「いや、今なんか予感がしてさ」

「また勘? 今回はなにかな?」

「なんか久しぶりにお地蔵様見に行こっかなって」



 実際のところ1週間に1回は幻転地蔵のところに行ってるんだけど、アナズムでも2週間過ごしてるからね、感覚は久しぶりなの。



「じゃ、そうしよっか」

「ん!」



 そういうわけで帰る途中にある幻転地蔵の元へ。

 とりあえずこのお地蔵様の前に立ったら合掌することにしてる。正しいかどうかは知らないけどね。



「ここに通うのも何年だっけ?」

「あら、私はあなたが引っ越して来る一年前からここに来てたから…16年?」

「てことは俺は15年か」



 あっという間だなぁ…にしてもこのお地蔵様はいつも丁寧に掃除されていて全然何十年何百年も前のものとは思えない。すごいよね……まるでアナズムの素材でできてるみたいな。

 まあ、俺と美花を向こうに送ったのはお地蔵様だからあり得るかもしれないけど。



「んー、じゃ、帰ろっか」

「うん」



 帰ろうとして俺と美花は後ろを振り向いた。

 その時、目の範囲内に黒いフードの男が見えた。顔は見えない。



「えっ」

「いつの間に…」



 どうやら美花にも見えるみたいだ。ということは俺だけの幻覚じゃないんだね。

 


「えっ……なにこの人……」

「分かんない……」



 もしかして俺と美花を誘拐しに来たとか?

 別に自意識過剰とかじゃなくて、本当にされる寸前まで行ったことあるからものすごく警戒してるの。

 


「偶然…か」

「……?」



 こわいよ、なんかボソボソ言ってるよ。

 


「時が経つのは早いものだ。二人とも大きく、美人になったな」

「ななな、なんですか?」



 どうやら俺たちのことを知ってる口ぶり。

 でもどこかで……。



「有夢、お前の弟から私の話は聞いてないか?」

「あっ……」



 そうだ、この人、叶がいってた黒いフードの怪しい男の人だ。俺たちのことをしってる怪しい人。



「き、聞いてますよ」

「そうか、はははは!」



 なんなんだろう、この人。やけにテンションが高いけど……。にしても俺の本名の方を話した?

 アナズム関係者だったとしても、俺の本名を知ってるのは皆んなと光夫さんしか居ないはずだけど。



「で、なんなんでしょうか…?」

「いぃや、顔を見ただけだ。特に用事などない」

「そ、そうですか……」

「とりあえずこれでさらばだ。また私とあう日があるだろう」



 そういうと黒いフードの男の人はスゥッと消えてしまった。まるで幽霊のように。



「……会っちゃったね」

「ね」

「なんなんだろう……」

「私達のことを昔からしってるアナズム関係者なんて私達5人しか居ないわよね?」

「うん」



 なにがしたいのか全然わからないのがこわいよ。

 うぅ…これ叶とか臨戦態勢バリバリだったんじゃないかな?



「ところで有夢」

「ん?」



 美花がどことなく嬉しそうにモジモジしてる。なんなんだろう。



「その、ずっと庇おうとしてくれててありがと」

「あ、ああ」



 そういえばやってたな。

 たぶん、ほぼ無意識にしてたんだと思う。



「えへへ…」



 道端だというのに美花は頬にキスをしてきた。



#####


<再知>7/24(月)、26(水)、27(金)は投稿をお休みさせて頂きますm(_ _)m


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