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第六百四話 動物園デート…? (叶・桜)

「見て見て! ライオン! 六本脚じゃなくて黒光りもしてないやつ!」

「そうだね、あの大きい口で桜を食べちゃうかもね……」

「む、さっきからそればっかりね」



 熱帯地方の動物を見て回っていた二人は半分まで来た。アナズムだったら魔物だったとかと冗談や笑い事を言い合いながら。



「……っ!?」



 そんな最中、叶が鬼の形相で唐突に後ろを振り向いた。



「どうしたの? 叶」

「いや……ちょっとね。気の所為かな」

「そうなの?」



 それ以降、叶はどこか警戒した雰囲気を出したまま桜と園内を練り歩く。

 園内の食事処の近く、猿山の前で二人は足を止める。




「猿山ね」

「種類は違えど、人間は猿から進化したと考えると進化ってのはすごいよね」

「……でもたまーに思うんだけどさ、お姉ちゃんやあゆにぃとかみたいに、猿からじゃなくてリスとかから進化してそうな人っているよね」



 叶は桜のそんな不意な考えに相槌を打った。



「あー、顔が猿とは程遠いってことね。美人とか可愛いとかも人間特有でしょ」

「リルさんは狼だけど」

「翔さんに甘えてるところ見る限り、狼というより豆柴だよね」

「うん」



 二人は毛繕いをしている猿やリンゴをかじっている猿を(少なくとも桜は)悠々と眺めると、食事処へと歩を進める。



「ふれあい広場と熱帯地方ブースで結構時間とったからね。お昼ご飯食べよう」

「いいよ? ここって前にニュースで見たんだけど、カレーを本格的にしたんだっけ?」

「そうそう。研究に研究を重ねてとても美味しいカレーを作ったとかいう。それは高級レトルトカレーとしてスーパーでも売られるレベルで…」

「じゃあカレーね」



 食事処に入り、二人はその評判のカレーの甘口と辛口をそれぞれ頼んだ。



「……食後にアイスクリーム食べていい?」

「今日は金をたくさん持って来てるから好きなだけ食べるといいよ」

「あ、やっぱり奢ってくれるんだ? ……一応私も持って来てるんだけど…」

「いいからいいから」

「んー……」



 加えて、アイスクリームもカレーを食べた後に食べるということとなった。



「美味しいっ」

「流石自慢してるだけあるね…食べ終わったら次は海洋動物だよ」

「ペンギンさんとか?」

「そうそう」




 しばらくしてアイスクリームも二人の座っている席に届いた。



「……一口あげる」

「俺もアイス食べるよ?」

「でもほら、味が違うし……あ、あの…口開けて…」

「ふふ、わかった。あーん」



 見事にデザートまできれいに食べ終わった二人は、予定通りに海獣やペンギンがいるブースへと移動する。



「わぁ…ペンギン!」

「アナズムでまだ1回もペンギンの獣人も魔物も見てないね」

「そう言えばそうね。北のほうにいるんじゃない?」

「そうかも………ん?」

「ん? 叶、どうかしたの?」



 ペンギンを見ている最中に、叶はものすごい形相で一点を見つめている。なにか危険なものに気が付いたような感じだ。



「か、かなた?」

「ペンギン見てるとこ悪い。俺…トイレ行ってくる」

「えっ」



 その場を急いで離れようとする叶。

 しかし桜はとっさに叶の手を掴んだ。



「……危ないことに首を突っ込んじゃダメ。やめて」

「……」



 もし叶がいなくなったときのことを考えながら力を込めて、手を握っている桜は、同時に涙目にもなっていた。

 叶はしばらく考えてから桜の頭を撫でる。



「最近言ってなかったけど、俺たちにストーカーがいる」

「えっ…目のことでテレビで放送されたから?」

「最初はそうだと思ったんだけどね、翔さんのところにも現れるらしい。どうも違うようなんだ。アナズムと関係してるように思えてならない。……そして今、そのストーカーがそこにいる」

「っ!?」



 桜はさっきまで叶が見ていた方を慌てて見た。人影はない、が、嫌な予感がすることだけは確かだった。



「な…なら、なおさら私もついてく」

「ダメだよ」

「やだ。ついてく。叶が付いて行かせなくても私は勝手についてく」

「……困ったな」



 叶は自分の後頭部を掻いた。

 そして一つ浅めの溜息をつく。



「わかった。でももし俺に何かあったら逃げ……」

「私も同じ目にあうわ」

「え?」

「当たり前でしょ? 私から叶をとったらお姉ちゃんみたいになるわよ? だから同じ境遇に立ってずっと一緒にいたいの。…どの世界でも」



 目を少し赤くした桜を、叶はじっと見つめる。何か強い覚悟を感じた。



「そうか。行こう」

「えへへ。……じゃまにはならないように頑張るから」



 叶が見つめていた方向。園内でも寂れている昔動物のブースがあった物置。スタッフオンリーと書かれた張り紙が所々に貼ってある。もちろん、人通りはない。

 そこに叶と桜は突入した。



「……なんか…向こうとは全然違う」

「そりゃ、寂れてるってやつだからね」



 二人で警戒しながら叶が見たものを頼りに進んで行き、そのうち小さ目の広場のような場所にたどり着く。

 そこには黒いフードを被った何者かがいた。

 

 


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