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第五百八十六話 ブフーラ城

「む、こんなところに少女が何のようだ。この国の者ではないな? 観光か?」



 門兵さんが俺たちを足止めする。メフィラド王国ではお城の出入りは、お隣さんということもあってほぼ顔パスになってるんだけどね。今は変装してるしそういうわけにはいかない。



「あ、いえ、ボク達、ラーマ国王様に呼ばれて来たんですけど」

「えっ? ラーマ国王に呼ばれて? ……今日呼ばれてるのはあの、アリムちゃんととミカちゃんだが……」

「とりあえず冒険者カード見せた方が速いですかね?」

「その容姿の年齢で冒険者カード…まさか!?」



 ここまで言うとわかったようで、門兵さんは驚きを隠せないみたい。俺とミカは冒険者カードを提示した。

 


「あああ、アリム・ナリウェイ様とミカ・マガリギ様、ごごご、ご確認しましたぁ!!」

「…手にとって見て見なくても良いんですか?」

「わ、私のような者がアリムちゃん達のカードに触れるなどできませぬ! さあさあ、どうぞお入りください!」



 俺たちに対応していないもう一人の方の門兵さんも、何だかワクワクした顔で門を開けてくれた。



「もう変装といても大丈夫ですかね?」

「は、はい! もし誰かが押し寄せようとも、必ずやアリムちゃん達に被害が出ないようにするので! もう解いて頂いても大丈夫です!」

「どうも」



 俺とミカは変装をとき、門の中、城の敷地内に入って行く。まじまじと門兵さんに見られてるよ。まあ慣れてるけどね。

 お城の御庭をトコトコと歩いてると、一人の色黒白ヒゲのおじいさんが目の前に現れて、深々とお辞儀して来たの。



「アリム・ナリウェイ様、ミカ・マガリギ様。ようこそおいでなされました。私めが案内をいたします」

「よろしくね!」

「よろしくお願いしますね!」

「は、はいっ!」



 紳士っぽいおじいさんが嬉しそうに目を爛々とさせてるよ。一瞬でイメージが崩れたね。



「この国は自意識過剰かもしれませんが、ボク達のファンがすごく多い気がしますが、何か原因でもあるのですか?」



 俺はそう、このアリムファン紳士に訊いてみた。実際、街の中を歩いていたら、メフィラド王国の城下町とためを貼るくらいの俺のポスターが貼ってあったんだ。

 メフィラド王国はいわば、俺を産出した国だからわかるんだけど、ここは遠いからね。



「国王様にはもうお会いになられてるのですよね? ご存知の通り、国王様はお二人の熱狂的なファンでして。それもアリムちゃん様達が勇者になる前からの」



 ほえー、勇者になる前からファンで居てくれたんだ。

 それは大事にしなきゃね! まあ、だからと言ってお付き合いも結婚もしてあげないけど。

 


「正直に申し上げますと、最初は皆、不安だったのです。何か得体の知れない少女に心酔してしまったと……。しかし、ポスターがこちらの国にも回ってくるようになり、よくできた写実を見るうちに皆の心は変わった……」



 なるほど、つまり最初は怪しがってたけど俺の顔を見てからはもう皆んなをメロメロにしちゃったと。なんだ、いつものパターンか。



「つまり、この国挙げてあなた様の熱狂的なファンになったわけです。私も含め」

「じゃあサインか何かいりますか?」

「あ、あの本人に名前を書いてもらい価値を高めるというアレですか!? ……良いのですか? こっそりやっていただいても…」

「まあまあ、何かの縁ですし。いいよね?」

「うんっ」



 ちなみにサインという文化を持ち込んだのは言うまでもなく俺だ。

 いそいそとポスターを1枚広げるドルオタ紳士。

 その合間に一瞬で俺とミカはサインを書き込んだ。



「これにお願……あれ?」

「もう書きましたよ」

「それで良いですか?」

「家宝とさせていただきます」



 またまた深々とおじいさんはお辞儀をするの。

 そんなんで家宝になんてなるわけないのにね、なんて思いながら鑑定してみたら[宝級]と出た。ついに名前を書くだけで宝級になるようになったのか。コワー。



「じゃ、案内してくれますか」

「お任せくださいませませ」



 俺たちはドルオタ紳士につられ、庭を通り、城の中に入った。そこで迎えるのは大勢のメイドさんや使用人さんの『いらっしゃいませ』のお辞儀。

 なんだかデジャブ。

 きゃーとか、本物だーとか、明るい声が聞こえてくるし気分は悪くない。



「どうですかな?」

「なんだかとってもアラビアンですね!」

「アラビ……なにか新しい食べ物ですかな?」



 アラビアンはこっちじゃ通じないか。

 メイドさん達も赤や黄色といった色とりどりな布がひらひらとした服着たりしてるんだけどな。



「ようこそ、よく来てくれたアリムちゃんとミカちゃん!」



 しばらくしてラーマ国王が本当に嬉しそうに上から降りて来た。俺のファンの古参は満面の笑みで迎えてくれる。



「お邪魔します」

「なんならずっと居てくれてもいいのだぞ?」

「いえ、結構です」

「……そうか」



 あからさまにしょんぼりしだしたよ!!

 もう少し言葉は考えたほうがよかったかな。





 


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