第五百八十五話 ブフーラ王国へ!
「というわけで、叶、お願いできる?」
「うん、いいよ」
サクラちゃんとチェスをしていたらしいカナタは説明をすればすぐにオーケーを出してくれた。
優しい…だからお兄ちゃん、カナタ好き。
「迎えに来て欲しい時はまたメッセージで言ってね。…でも午後11時だとか、朝の5時だとか、変な時間になるんだったら一泊してきて」
「桜と仲良く添い寝してるからかな?」
「………うん、まあそうだよ美花ネェ。寝てるから起こさないでってこと」
ミカの冷やかしを軽く受け流したカナタは、俺たちに互いに近づくように指示。無論、俺とミカは抱きつきあった。
「じゃ、飛ばすよ」
「「はーい」」
そう、返事をした瞬間に、周りの景色が変わってしまう。瞬間移動はやっぱりすごいな。
つまり俺とミカはブフーラ王国の首都の城下町に着いたわけだ。
目立たないような場所を選んで送ってくれたのか、ここは路地裏。俺とミカはすでに変装済みだからもう路地裏から出れば街を堂々と歩けるの。
「あん!? このガキどもいつのまに!?」
どう見てもゴロツキって感じの人が後方からやってきた。そっか、メフィラド王国みたいに全員一旦死んで、犯罪者とかは牢屋に入れたわけじゃないから、ブフーラ王国の城下町の路地裏は治安が悪いのか。
これは失念していた。
いくら変装しているとはいえ、俺とミカは今、普通に可愛い女の子。わー、身の危険だー。
「ぬおい見ろよ、めっちゃ美人だぜ、よく見たら」
「ほほう、マジじゃねーか」
さらに何人か近づいてきた。こんな狭い路地裏に、俺とミカ含めて6人いる。暑苦しいなぁ、もう。
「こりゃ、取っ捕まえて売っぱらうコースだろ」
「いやいや、まずは俺達の道具にするのが先決じゃね? 何発か遊んだくらいで商品価値さがんないだろ、この子達なら」
「ほーん…つーか、そもそも身につけてるものがめちゃくちゃ高級そうじゃねーか」
ジロジロと見てくる。ここは建前だけどおれが前にでてミカを庇うようにしてるよ! まあそんな小さな気遣いはミカはきにしてないみたいだけど。
「んじゃ…ちょーっと痛いけど我慢ちまちょーねぇ」
俺たちを一番最初に見つけた男がナイフを抜く。
商品価値うんぬんの話ししてたのにナイフ使うのはアホなんじゃないかと。ちょっと思った。
「おま、手で捕まえろよ、手で。傷をつけたらそれこそ価値下がるだろ」
「おっといけねー」
ナイフをしまう。
ああ、こうしてるとウルトさんに助けられた時のこと思い出すなぁ。あれからずいぶんと変わったものだ。ふふ。
「おい、お前何を笑ってる?」
「おっといけない」
笑ってるのがばれちゃった。
「ぐぬぬ…まあいい。捕まえるぞ!」
先頭に立っている男は俺とミカに腕を向けて迫ってきたの。だから俺は一瞬で懐に潜り込んで、死なない程度に一発、蹴りをかましてあげた。
放射線状に綺麗に吹っ飛ばせたよ! ふふん。
「………え?」
この人達からみたら一瞬の出来事だったんだろう。なぜか仲間が吹っ飛んで唖然としてるんだね。
「お…おおお!? 吹っ飛んだぞあいつ!?」
「ガキが大の大人を吹っ飛ばす……もしかしてこいつら、ステータス高い系のガキか!?」
「うっわまじかよ! にげんぞ!」
俺たちに深追いなんてすることなくさっさと退散しようとしてくれた。今のが何かの間違いだろうとか言って深追いするよりよっぽど賢い行動だ。
「こういうの久しぶり」
「変装してなかったらまず別の反応だったわね」
俺とミカは路地裏をすぐに出た。
路地裏の入り口付近なのにこの治安の悪さ……あとでラーマ国王になにか策を練るように言ってあげよう。
無理やり治安の悪さを抹消する装置を作って渡してあげてもいいかも知れないね。
「よし、じゃあ行こうね!」
「うん!」
俺とミカは手を繋ぐ。
デートみたいな感覚でこの町を練り歩こうと思うんだ。
ここはスパイスとかが有名らしいし、日照時間が長いから日焼けしてる人も多い。そういう気候に合わせた家も特徴的。
「なんかインドとかそこらへんに来たみたい」
「あー、わかる」
地球のものとは違うけれど、テレビでよく見るインドのような風景かもしれない。
カレーライスが食べたくなってくる。
まあこの世界にはお米なんて概念は俺が持ち込むまでなかったし、カレーもないんだけど。
もしかしたらナンならあるかも。
「あれだよね、ラーマ国王のお城」
「そだね」
ど真ん中にそびえ立つ、屋根が丸いお城。
うむ、なかなかに煌びやかかだ。メフィラド王国の西洋風のお城とはまた違う。
早速そこまでたどり着いた。
じゃあ早速中まで入っちゃおうね。