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閑話 王子達のデート (side オルゴ) 1

「オルゴ! その…服装はどうでしょうか?」



 デート当日。

 オルゴとミュリ、ルインとリロの2組はそれぞれ城内の別の場所で待ち合わせをしていた。

 オルゴとミュリは中庭の目立つ像の前。



「ああ、えっと……いいと思うぞ」

「そうですか? ふふ、良かったです!」



 本当は『可愛い』だとか『綺麗』などと浮いた言葉を言いたかったオルゴだが、とっさに出たのがその言葉だった。

 喜んでいるミュリに対し、オルゴは自分の中で若干、葛藤をする。告白した時みたいにはっきりと気持ちを伝えられないものかと。



「じゃあ、行きましょうか」

「そうだな」



 とりあえず迷いは捨て、オルゴはミュリとの_____もとい、女性との人生初のデートが始まった。

 二人は白の敷地を出る。

 オルゴもミュリも、言ってしまえば貴族の息子・娘であり、その見てくれは立派なもの。

 もっとも、貴族の息子らしい格好がオルゴに似合っているかは別として。



「それで、どこに連れて行ってくれるのですか?」

「ああ、まあ…ついてこい」

「ええ、もちろん」



 オルゴは歩き出した。

 それにつられて、ミュリも一歩後ろでついて行く。

 そんなミュリの癖に、オルゴは気がついた。



「ミュリ」

「はい、なんですか?」

「俺の隣に来い」

「えっ…? あ、はい!」



 ミュリも自分が癖で1歩間を置いて歩いていることに気がつき、慌ててオルゴのとなりにつく。

 二人はそのまま歩き出した。しかし、ミュリはまた1歩を開けてしまう。

 オルゴはまたそれに気がついたが、昔からの癖であることは知っているのでそれ以上は言及しないことにした。



「着いたぞ。ここだ」

「わぁ…! 食べ物屋さんの屋台がたくさんある通りですね!」

「そうだ。いや、まずはここでハッチャケようとおもってな。……って、バカか俺は! ミュリの服を汚しちまうだろ…別の場所に…」

「ふふ、大丈夫ですよ。楽しむこと優先ですっ」

「そ、そうか、なら」



 二人はその通りを歩き始めた。

 一つの屋台の前で足を止める。



「まあ、サンドイッチの屋台ですね!」

「……サンドイッチもすっかり一般的に普及するようになったな」

「パンに合いそうな具を挟むだけのアリムちゃん考案のお手軽料理ですもの! …ここは、スイーツサンドのようですね」

「バリエーションも増えたものだ」



 二人は早速一人一つずつ買い、食べ始める。

 そこでオルゴは一つのことを思い出した。

 デートが決まった際に読んだ、デートの攻略本。その中の一つに『カップルは食べ物を食べさせあったりするものである』という項目があったことを。

 自分の握っている、生クリームと薄皮まで向き甘いシロップに漬けた柑橘系の果物を挟んでいるサンドイッチを見つめた。

 そして、生クリームとイチゴのサンドイッチの2口目を頬張ろうとしているミュリの口を見る。


 実際、生まれたタイミングもほぼ同じで、ずっと一緒に居た彼らは食べさせあいっこなどはとうの昔に何度もやっていた。その時は恥じらいもなにも感じなかったが……オルゴは今、意識をしてしまった。

 間接キスという意識を。



「…オルゴ、どうしたの?」

「えっ…あ、いや…」

「もしかして私のも食べたくなりました? ふふ、しょうがないですね。一口だけですよ?」



 そう言ってミュリは差し出してくる。断るわけにもいかないオルゴはそれをおとなしく受け取った。

 ……ゴクリと生唾を飲み、意を決してかじる。

 甘かった。とてつもなく甘かった。

 しかしそれはどうにも、生クリームとフルーツだけのせいではないような気がどうしてもオルゴには感じている。



「そんなに美味しかったですか? 取り替えっこします?」

「えっ!? ……あ、ああ、うん」


 

 自分は食べたのにミュリには与えないのはおかしいとオルゴは考え、すんなりと自分のサンドイッチを渡した。

 ミュリはニコニコしながらそれを受けとると、早速一口かじる。

 オルゴはその光景を、ミュリのイチゴサンドを丁寧に握ったまま眺めた。



「うん、これも美味しいですね! はい、返します。私のも返してください」

「ああ」


 

 何が何だか、ミュリに心を奪われたまま、オルゴはサンドイッチの再交換を果たした。

 そしてもう一度、ミュリが噛んだ後の歯型を眺める。



「……今日のオルゴはなんか変ですね?」

「そっ…!? そうか? ああ…そうだな、ミュリとのデートが楽しすぎるのかもしれんな。浮かれてるんだきっと」

「私もずっと胸のあたりがドキドキしてたんです! …えへへ、これがデートってやつなんですね! 私も浮かれちゃってます!」



 そう言って少し顔を赤く染め微笑みかけてくるミュリに、オルゴは完全にやられてしまった。

 サンドイッチを食べ終わった(オルゴはおずおずとなんとか食べきった)二人は、他の屋台も巡りながら食べ歩いた。

 そして通りを抜け、オルゴが先導してデート予定地へと向かった。ミュリはその半歩後ろをついて行く。



######


思ったよりも長くなりそうです。この話もほんとは一話で終わらせるはずだったのですが、どうやら三話くらいになりそうです。

なので、ルイン編も三話になると思います。

となるとだいぶ長くなるので、十四章あたりでアリムたちの話を挟んだのと同様に週間に1回、この王子たちの話を挟むことにします。

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