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だい五百八十二話 カーテンコール

 ホワイトタイガーの日の輪くぐりが終わった。

 いやぁ、迫力がすごいね。まだ魔物相手に苦戦してたころに魔法を放つ動物を見た時の感動に似てる。

 


〈皆様、ここまでご覧いただきありがとうございました!〉



 バックグラウンドでこのサーカス団のテーマソングが流れてきた。どうやらこれでおしまいのようだ。

 いやー楽しかった。

 途中で観客参加型のものとかもあったんだけど、それに参加しなかったのはちょっと後悔。

 ちなみに、俺を光夫さんの元やこのVIP席まで案内してくれたあの人はトランポリン芸で出ていたよ。


 舞台の裏から続々とサーカスの団員さん達が観客に向かって手を振りながら出てくるの。

 


〈では公演で頑張ってくれたラブロングサーカスの団員さん達を紹介しましょう! まず、エアリアルを演じてくれたのは______、______、______、______です!〉



 エアリアル…最初の布でクルクルするやつを催してくれた数人の男女が手を繋ぎ、腕を振りながら観客に向かってお辞儀をする。

 この例にならって、次々と舞台を演じたサーカス団員さん達がだし物事に手を繋いで観客に礼をするのを繰り返す。



〈そしてー! このサーカス団のピエロ、ロングハート君〉



 最後の方にピンで呼ばれた光夫さんは、みんなに手をフリフリしたと思ったら3連続でバク転なんか披露してきた。よくカツラとか赤鼻とか落ちないなぁ。

 


〈最後に私、司会を務めましたのは______です!〉



 司会者さんの名前呼びが終わったら、団員さん達はロングハート君を中心に集まってきた。

 それで全員して手を繋ぎ、ぺこりとお辞儀をする。


 それとブザー音とともに垂れ下がってくるのは、金の刺繍が入った真っ赤なカーテン。

 ゆっくりと垂れて行くカーテンはこう…余韻をよく誘ってくれる。

 そして最後にそのカーテンは閉じきった。

 ライトが幻想を砕くように明るくなる。



〈本日はお越しいただき、誠にありがとうございました! お帰りになさる際は、お荷物の忘れ物がないよう、ご注意ください〉



 その声とともにみんな、荷物の整理をしてから立ち上がるの。



「あー、楽しかったね!」

「ね!」

「わふん、サーカスはすごいねぇ…。初めて見たけど迫力が…」

「そうか? なら良かったぜ」

「桜はどうだった?」

「うん! すごかった! 目が見えてて良かったよ」



 俺たちも各々感想を述べあいながら、席から立ち上がろうとした。



〈連絡です、連絡です! 成上有夢さん、成上有夢さん、団長からお話があるということなので、お手数ですが、団長室までお越しください〉



 だけれどそんなナレーションが聞こえてくるの。

 まあ次はお昼休憩に入って結構時間あるから呼ばれちゃうよね。



「んあー、呼ばれちゃった。行ってくるね」

「わかった。向こうの公園で待ってるね」



〈あ、追加連絡です。成上有夢さんと御一緒の方々もお手数ですが、お越しください〉



 つまり6人全員行けということか。アナズムの知り合いを増やしたいのかな? 



「結局私達も行くんだね」

「あはは、巻き込んじゃってごめんね」

「まあいいよ、にいちゃん。その、元々魔神に操られていた人がどんな人か、間近でしっかり見ておきたいしね」

「……だな。俺も叶君と同感だ」



 そういうわけで全員で荷物の整理をしてから席を立ち上がり、俺が案内してもらった例の団長室まで行くの。

 間も無くして着いた。

 ノックをし、返事がされたら戸を開ける。



「来ましたよ。何でしょうか? 要件って」

「ああ、よく来てくれました。わざわざすいません。ま、ま、とりあえずそこらの椅子にお座りください。それと化粧もこのままでごめんなさいね」



 言われるがままに俺たち6人は椅子に座る。

 俺達全員と丁度よく向かい合えるような場所に光夫さんも座った。



「えー、まずは御礼ですね。有夢さんは先ほど言った通り、この世界に帰してくれたこと、深く感謝いたします。また皆様、本サーカス団をご覧いただきありがとうございました!」

「すごかったデス! 私、サーカスというものを初めててみたノですが…」

「おお、そう言っていただけると本当に嬉しいです」



 リルちゃんの感想に、本当に嬉しそうに光夫さんは笑った。笑ったはいいけど顔がピエロだからめっちゃ怪しく見える。



「サーカスは本当に面白かったです。心から楽しませていただきました。…それで要件は何でしょうか」



 やはり一番発言力のある叶が切り込んで行く。

 まだちょっと色々と警戒してるみたい。



「いえ、少々向こうにいてことのある方と顔を合わせてみたくなってしまいましてね」

「なるほど、そうでしたか」



 か、かにゃたの顔が臨戦態勢に入ってるよぉ…。

 そりゃ、敵だったって説明しちゃったから仕方ないけど…うー…何かあったら俺が止めないとね。

 そんな叶の様子に気がついているのかいないのか、光夫さんは話を続け始めたの。

 

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