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第五百七十五話 ロングハート君

 どこだったかなぁ…いや、やっぱりピエロは厚化粧だからわかんないや。あれが光夫さんって訳じゃなさそうだしね。光夫さんのダンディなタイプな顔からあれは想像できない。


 あ、今度はロングハート君、皿回しを始めた。

 棒一つもって、そこに白いお皿を乗せて、クルクルと回し始めたの。


 でもやっぱりワザとだろうけど、皿回しが失敗してしまう。

 『ああ~っ…』見たいな落胆の声が一瞬だけ起こった。

 ちなみにリルちゃんも桜ちゃんもその声の一つとして混じってるよ。


 でもそこはサーカス。

 皿が地面に当たる瞬間、ゴム製だったのかなんなのか、ポーンと反射してロングハート君の手元に戻ってきたの。

 

 

「すごいねこれ、割と高度な技術だ。手元に戻るように考えて回してたよ、アレ」

「そうなんだ…」



 サーカスってすごいなぁ…。はっきり言って俺と美花と翔は2回目な訳だけど、10年前のことなんて、ほぼ、強烈なこと以外はみーんな忘れてるからね。

 目の前で見ると新鮮だなぁ。

 パチパチと拍手喝采。

 俺ももちろん拍手するの。



「あ、まだなんかするみたい!」

「サービス旺盛だな」



 ハートロング君、今度はダーツみたいなのを取り出した。さっき売り子をしてた団員さんが、パンパンに膨らんだ風船5個を腰から浮かせてハートロング君より遠くに登場するの。なるほど、あれを割るんだね。



「あれをあの距離から割るのか。今の俺たちなら楽にできそうだね」

「スキルの効果がいくらかこっちで反映されてる俺たちと比べたらダメでしょ、叶! ぷくぅー!」

「にいちゃん、ほっぺた膨らませないでよ…わかってるから…」

「…えいっ」

「ぷひゅー」



 俺の膨らませたほっぺたは美花の手によって空気を抜かれてしまった。 

 こんな感じであの風船も割れてくかな?



「ああ、失敗したよぉ…」



 1投目、リルちゃんがそう叫ぶ。

 まあやらせだよね。そして2投目も同じように失敗したの。んで、3投目!



「ぉぉ!」



 ついにダーツの一つが風船に当たり、割れた。

 ハートロング君はピョンピョンとうれしそうに見えるように跳ねている。

 4投目も当たった。

 パンと軽快な音を立てて風船が割れるの。



「お、距離を伸ばすようだぞ」



 売り子さんを後ろに下げ、自身元の位置より下がったロングハート君は再びダーツを構える。

 かなり距離が長い。まあでも、まだテレビとかでよくみるくらいの長さかな。

 そして2本手に持ち、同時に投げたの。

 見事に一回で風船が2つ割れた。



「わふぅ! すごいね今の!」

「ああ、さすがサーカスって感じだな!」



 うん、一つ当てるだけでも難しそうなのに、2本同時に投げて2本とも当てちゃうのはすごい。

 でもよく思い出したら、普通に動画やテレビで見てたよこれ。生で見るから全然違うけど。



「さらに距離を伸ばすのか!?」



 観客の1人がそう叫んだ。

 ロングハート君はさらに売り子さんを後ろに行かせ、自身もかなり後ろに下がる。

 だいぶ俺たちの方に近づいてきた。



「いや、これは流石に無理だろう」



 翔がそう言う。なんかさっきから色々コメントしてるし、翔もだいぶ楽しんでるみたいだね。

 ……俺はふとした違和感に気がつき、スマホのカメラでズームをして売り子さんを見てみた。



「どうしたの、有夢? 成功したところ動画に撮るの?」

「うん、まあ…」



 会場内じゃなかったら一般客も撮影OKだからね。

 でもそれより気になるのがこの違和感だよ。なんだか、スタッフさん達側も驚いてる気がするんだ。

 気がする…というか、実際そうだった。

 

 この出し物の協力者である売り子さん本人が驚いてる。遠巻きからロングハート君の様子を見てる他の団員さん達も、なぜかロングハート君のこの距離調節にすっごく驚いてるみたいだ。

 作ってできる表情じゃないのがわかる。

 予定になかったことをしようとしてるのか…?


 ロングハート君がグルングルンと腕をわざとらしく、大振りに回転させ始めた。

 そして野球選手がボールを投げる時のようなフォームをとると、ダーツの針を投げた。


 ダーツの針は失速することなくきちんと飛んで行き、やがてかなり遠くにいる売り子さんの風船にヒット。そこでやっと動きを止めた。

 


「うぉぉぉぉすげぇぇぇぇ!!!」



 大歓声が湧く。いや、俺自身もそう叫びたい気持ちだ。

 すごいよ、本当にすごい! あんな距離で届くもんなんだ! 写真をパシャパシャ、動画を撮りトリ。


 もう一度団員さんの方を見て見ると、真面目にぽかんとした表情をしてるの。やっぱり打ち合わせでなかったことなんだね。


 自分の身内が驚いていることにも気が付かず、今度はロングハート君、懐からピンク色のアート用の風船を取り出した。

 それを腰に差していたヘリウムガスのような物のノズルに取り付け、プシューっと空気を入れる。

 そして、よく捻じ曲げて、まあ、定番といえる犬さんを作ったの。

 

 それに紐をくくりつけ、額に手を当てて子供達を探し始めた。もちろん、子供達はワクワクした表情を作る。

 まあ、俺らは子供らしい子供なんていないから、選ばれるわけないよね。

 なんて思ってたら、ロングハート君はこちらを見つめると首の動きを止め、ここまでスタスタと歩いてきたんだ。



 そして桜ちゃんを指差した。

 桜ちゃんは驚いた表情をしながら、自分を指差す。

 ピエロは頷いた。


 桜ちゃんは呼ばれた通りに少しだけ前に出て立ち上がり、ロングハート君から犬さんの風船を受け取った。


 その瞬間…! その瞬間に!

 ロングハート君は俺の方を見た。いや、本当に驚いた表情で二度見…ううん三度見してきた。そして、驚いてはいるけど押し殺したような声で、こう言ったんだ。



「もしかして……アリムちゃんですか!?」




########


有夢の癖



(`・н・´) <プクゥ-


 ↓


(ノ)・H・(ヾ) エイッ>


 ↓


( ´・ω・`) <プヒュー



 このように有夢君はあざといです。






 

 

五百七十五話なので、ここで一句。


有夢はね

あざとさこそが

全てだよ

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