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第五百五十六話 暇な日 (翔)

 特に何もない今日という1日。

 この世界では暇つぶしできる内容が限られちまってるから、暇な日はどうしようもないくらい暇だ。


 筋トレももうリルの体を引き締めるための運動と共に済ましちまって、仕事もしなくていいとなるとマジであとはどうやって過ごすか。これが問題だ。


 そんなわけだから俺は漫画を読んでいる。

 アリムの作ったアイテムから作った漫画だ。地球の物ですら何でもかんでも取り出せるのがすごい。


 

「わふん」



 そんな俺に対し、リルはただ俺に寄り添って密着しているだけだ。肌の温もりと胸の柔らかさが腕に伝わってくる。こいつはこんなんで時間が潰せるのだろうか。

 いつも謎だ。



「リル、何かしなくていいのか? 暇だろ?」

「わふん、ショーの近くにいるのが一番落ち着くからね」



 そう言いながら俺の肩に頭を乗せてくる。

 そんなリルに俺は手を回し、そこから頭付近を撫でてやると喜ぶ。いつもそうだ。


 しっかし、あれだ…俺はリルと何かしなくていいのだろうかといつも若干不安になる。彼氏だしよ。

 俺だけが暇つぶししているわけにもいかねーだろ。

 そのうち有夢の二の舞になるんじゃねーかな、なんて考えたりしちまう。



「リル、何かしてほしいことはないか?」



 漫画を置き、リルの頭を引き続き撫でながらそう訊いてみた。今日はもうなんでも聞いてやろう。

 いつもは渋っているが、一緒にお風呂入りたいだの、営みをしたいだの言われても従うつもりだ。

 リルはどうしてこんなに誘ってくるのか……逆に俺はどうしてこんなに断っちまうのか(それでも1週間に1~2回は…)わからないがな。



「そうなのかい?」

「ああ、なんでもいいぞ」



 なんか物をねだってくるのだったらそれでもいいんだが…。



「じゃあこのまま抱きしめてよ」

「わかった」



 俺はリルを俺の膝の上まで移動させ、抱きしめる。

 華奢だが柔らかい…でもどこかしっかりしている。変態みたいなこと言うが、相変わらず抜群だ。

 しかし抱きしめるなんてことは結構頻繁にやってる気がするんだがな。わざわざこれを頼むなんて女の子の気持ちってのはわからん。今日はそんな気分なんだろ。



「わふん、いつまでこうしてくれるんだい?」

「今日は好きなだけ。まあ体制くらいは整えるがな」

「ちょうどよかったよ、今日は無性に甘えたい気分だったんだ」



 リルは強く抱きしめ返してくる。

 確かにリルはやけに甘えてくるときが結構あるな。今日はちょうどその時だったんだろ。

 俺の気分とリルの気分がうまく合致したんだ。

 ……甘えたがってるときはいつも相手はしてやっているが。



「そういえばさっき、『なんでも』って言ったよね?」

「ああ、言ったぞ」

「じゃあ今日は一緒にお風呂入ってくれるかい?」

「…いいぞ」

「わっふん!」



 尻尾をパタパタさせて喜んでいる。

 一緒にお風呂に入る際は大抵バスタオルなんてつけねーから必ず夜伽へと突入しちまう。

 ぐっ、しかし喜んでいるリルがめちゃくちゃかわいい…。こんな喜んでくれるなら日頃から何もかも受け付けてやろうか。

 


「ん…」



 互いに無言で抱きしめ合う。

 暖かくて柔らかい上に、この静寂はなかなか良いものだ。しかし、そんな中、あるものが俺のそんな感覚を取り払った。



【ショー! リルちゃん!】



 有夢…正確にはアリムからだ。

 目を瞑って俺にのんびりと抱きついていたリルも目を開き、それに脳を傾けているよう。



【なんだ、どうした】

【む、ちょっと不機嫌だね。もしかしてお取り込み中だった?】

【そのお取込み中がどこまでを指すかわからんが、まあそんなところだ】

【ごめんねー。いやさ、みんなの武器を新調しようって思い立ってさ、カナタ達にも同じ内容を連絡してるんだけど…もし伝説級の武器とかを持っていたら俺のもとに持ってきてよ! 神具級にグレードアップするよ!】



 本当に唐突に思い立ったんだな。

 


【リルはスキルで作り出す斧がメインなんだが…。俺のレーヴァテインみたいに、スキル武器を付与できるみたいな斧を1からつくれるか?】

【わふん、作ってもらえるならそれがいいよ】



 そのあとリルは小声で、『ショーとお揃いだし』と呟いた。思わず軽く頭を撫でる。



【オッケー、作れるよ! ごめんね唐突に。じゃあ今日中にショーの持ってきてね】

【あいよ】

【じゃあね】



 そこでメッセージは途絶えた。

 今更武器を強くしても意味ねーとは思うが、これも有夢の暇つぶしの一環なのかもしれねぇ。

 暇なのはわかるから協力してやるよ。



「武器かぁ…しばらく触ってないね」

「ああ、そうだな」

「その代わりショーを触りっぱなしだよ」

「俺もリルに触れまくってるな」



 主にどこに…とは言えねーけど。

 武器を握ることなく彼女とこうしてゆっくりいちゃつけるのはめっちゃ幸せだよな。



「昼飯までこうしてるか?」

「わふん、そうするよ。今日はたっぷり甘えてもいいんだよね?」

「ああ、好きなようにドンと甘えてこい」

「わふーん!」


 

 リルと俺はキスをし始めた。

 キスの後にはまた抱きつきあった。

 抱きつきあった後に_________有夢のもとに向かった。

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