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第五百五十五話 道化の帰還

 屋敷の中のある一室。

 何かに使うかと思って、こう…危ない地下室的なものを作っておいてよかったよ。

 いや、使い道なさすぎてミカとちょっと危険な遊びする時が仮にでもきたら使おうかと思っていた程度の部屋だから、逆に使い時がきて良かったというべきか。

 

 とりあえず鉄格子の囲いの中に、俺は光夫さんの小指を放り込む。何百万何千の魔物の命を奪ってきた俺だけど、未だに人の死骸は慣れないよ。

 

 次はアムリタを用意。

 アムリタのおかげで今の俺達は居るわけだから、本当に神の道具だと思う。……神の道具といえば、まだショーやカナタ達に神物級のアイテムひとつもあげてなかったや。


 魔神と同等レベルの敵が現れたりして、誰かが応戦して…武器が弱くて死んじゃったりしたら嫌だから、明日あたりにでも4人分の武器製作に取り掛かろう。


 アムリタの瓶を牢屋の中に投げつける。

 見事に小指に瓶の中身が降りかかり、再生が始まった。

 小指一本の切断面から急速に何かが生えてくる。

 ぐちゃぐちゃと…いや、そんな生々しくはないかな。


 でもまあ、普段はグロテスクが少ないタイプの漫画の、珍しいグロシーンくらいにはグロい。

 まああまり現実だと捉えられる光景ではないけれど。


 …リルちゃんもこんな感じだったのかな。

 ミカとサクラちゃんにリルちゃんの復活を任せて悪いことしたかしらん?

 でも男性陣は彼女の裸を見る訳にはいかなし、あれは仕方なかったのかもしれない。

 まだあの時はグロさがわからなかったから、リルちゃんの彼氏であるショーにもその生き返る姿を見せるわけにはいかなかったしね。


 割と早く光夫さんの復活は完了した。

 …気がついたけどやっぱり裸だ。うまい具合にモノだけは見えないけれど…とりあえず俺はダークマタークリエイトで服を着させたよ。

 うん、俺が裸を進んでみたいのはミカぐらいだからね。

 他の人の裸は見たくないよ…まあショーみたいに完成されてるなら芸術点として話は別だけど。



「おはよーございますっ」



 少し大きめの声でそう叫んでみる。

 40代後半とみられるダンディなタイプのおじさんの目は開かれた。



「あ…ああ、ここは?」

「ボクの家の地下室です」

「ああそうだ…俺は処刑されたんでしたねぇ」



 辺りをキョロキョロとみながら、肩がうなだれた。

 やっぱり死刑とかで死んでから生き返らせられるのって気分がいいものじゃないのかな?



「ありがとうございます、アリムさん」

「いえ、約束ですので。地球に帰りたいという気持ちはボクもすごくわかりますし」



 光夫さんは自分の首を撫でている。

 もしかして死刑って斬首刑? なかなか怖いね。



「それではもう帰りますか。それとも、アナズムを去る前に最後にアナズムの料理とかでも食べますか?」

「…そうですね、早く帰りたいですが、やはり最後にこの世界の料理を食べてからでもいいですよね。お願いできますか?」

「いいですよ」



 いちいち作るのがめんどくさいので、アイテムマスターでこの世界ならではの料理を作り、光夫さんに食器と飲み物ともに出してやる。



「ドラゴン肉のステーキなどですか」

「はい、植物系モンスターを使用したサラダもありますね、あとは」



 まずドラゴン肉のステーキなんて地球では食べられないでしょう。…ワニ肉って味近かったりするかな?

 いや、ワニ肉は鶏肉に近いらしいから違うかな。



「とても美味しいです…」

「そうですか、良かったです」



 ついついぶっきらぼうに返事しちゃう。仕方ないかもしれないけど。

 光夫さんはあっという間にドラゴン肉やその他魔物の肉料理、野菜を平らげると『ごちそうさまでした』と言って食器を置いたの。



「もう思い残したことはないですか?」

「ない…ですかね、あ、いえ一つだけ」



 思い出したようにそう言った。



「なんですか?」

「俺のスキル…『契約の理』と『霧化』というスキルをどうにかして残すことは出来ないでしょうか? 多分…地球に戻ったらスキルは消えてしまうんでしょう?」

「ええ、消えちゃいますね」



 ていうか強制契約と霧になるやつって、そんな名前のスキルだったのか。悪魔の効果とかじゃなかったんだね。

 


「アイテムに関するアリムさんだから、その…こんなのでお詫びをすませるつもりはないですが、下手なSSランクのスキルより強いこのスキルを、アイテムで抽出できればして、受け取ってくれませんか?」



 たしかに強制契約は下手なSSランクのスキルなんかよりも段違いで強い。この俺ですら上手いことやられたやつだからね。……スキルカードにするか。



「わかりました、では…これ、スキルカード化できるカードです。2枚渡すので、額に当て、それぞれにスキルを込めてください」

「やはりできるのですね…。わかりました」



 俺から無垢のスキルカード2枚を受け取った光夫さんは、言った通りにスキルを抽出してくれる。

 その2枚の新しいスキルカードを俺に渡してくるから、額に当てて確かめてみたところ、ちゃんと宣言通りのスキルが込められていたの。



「たしかに受け取りました」

「……ではもう思い残すことはありません。帰らせていただけませんか?」

「はい」



 俺は幻転地蔵さまを出し、いつもの手順で光夫さんに触れさせる。



「では……あと数秒で帰ります。もし…もし、良かったらラブロングサーカス団を見に来てくれませんか? テントが近くを通ったらですが…」



 ラブロングサーカス団、この人が団長を務めている日本屈指のサーカス団の一つだね。

 ……もし近くに来たらデートで見に行くよ。



「大切な人と一緒に見に行きますよ。契約…ではなく、約束します。もし光夫さんを見かけたら、『アナズムではどうでしたか』と声をかけますね」

「あはは、いいですねそれ。ということはこちらの記憶は向こうに行っても残ったままなんですね」

「ええ」



 光夫さんの身体が消えてゆく。

 しっかりと転送はされてるみたいだ。この人の場合、転生数は稼げてないから、地球に帰ったらもうアナズムに戻ってこれない。……多分。



「……最後に、貴女の地球での名前を聞かせてください」

「成上 有夢と申します」

「じょうじょう あゆむ…ですか。わかりました忘れません。それでは…さようなら」



 最後に光夫さんは微笑むと、完全に消えてしまった。

 残ったのは暗い鉄格子しと、幻転地蔵様のみ。

 …………部屋に戻ってミカとイチャイチャしよっ。

 


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