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第五百四十九話 結婚式後 それぞれ

「……わふ」

「どうしたんだ? リル」



 リルが俺のことを見ている。

 昨日、この国の大物の結婚式が終わった。流石は有夢の抜群のセンスだぜ。めちゃくちゃ良かった。

 しかしそれが終わってからというもの、リルは俺のことをうらめしそうにみてくるんだぜ。



「…わふぅん」

「お、おい、どうしたんだよ…聞かせてくれよ」



 不機嫌ではないということはわかるんだが、いかんせん、なんでこんな態度とっているかがわからない。



「ショー、わがまま言ってもいい?」

「な、なんだよ今更。かまわねーよ」


 

 狙ってやってるわけじゃねーんだろうが、上目遣いがキュンとくる。



「ありがとう。じゃあ結婚しよう?」

「……はい?」

「わふん、半分冗談だよ」



 一転、にっこりと笑いながらリルはそう言った。

 なんだ冗談か、びっくりした。



「……あのSSSランカーのパラスナさんが兎族だったなんてびっくりしたよ」

「あ、ああ。俺はこの世界にいる時間が短いからそんな驚かなかったが、周りの反応からして非凡なんだろ?」

「そうだよ」



 俺の隣に座り、肩に頭を乗っけて来ながらリルは相槌を打つ。



「……私、パラスナさんの気持ちが痛いほどわかるよ。きっと…もう死んじゃいそうなくらい幸せなんだろうなぁ」

「なんでだ?」

「わふん、簡単な話だよ。パラスナさんは生まれも育ちもこの国らしいんだけど、そうなら奴隷扱い…良くても差別はされて来たはずなんだ。時代的にね。そんな中ずっと優しくしてきてくれた人と結ばれるのは______」



 そこでリルは話すのをやめると、また俺の目をじっと見つめてきた。ああ、そうか。自分とすこし状況が似ているっつーことか。

 パラスナ…って人がリルに当てはめれて、ウルトって人が俺になるな。リルにしてみれば。



「まあ要約すると、シンデレラでいう、私やパラスナさんがシンデレラでショーとかウルトさんが王子様だよ」

「そ、そんなもんか?」

「そんなもんだよ」



 リルにとっては俺は王子様? いや、ウルトさんみたいな好青年ならわかるが俺は筋肉だぜ? ……でもリルがそう思ってくれてるなら…そうなのかもな。



「まあ、あれだ。リル。前も約束したが…いつかああいう結婚式、あげられるといいな。いや、あげような」

「わふん! そうしようね! あのウェディングドレス姿はしばらく私の憧れだよ! 私もウェディングドレスに身を包ませてくれると嬉しいな」

「ああ、きっとな」



 普通なら数年後はどうなってるかわからないだとか言いたくなるかもしれねー。

 でもこうして、本気で俺と結婚したがっているリルを見ると、まだ付き合って数ヶ月なのに、俺の一生の相手はこいつ以外ありえないと思っちまうから不思議だ。

 ……オカルティックに言えば、運命を感じるっつーやつかもな。



「そしてショーの子供が欲しい」

「なんかそれ久しぶりに聞いたな」



 そう言われると今なら明確に、子供がいるお腹をさすりながら笑いかけてくるリルを想像できる。うん、幸せだ。



「わふん。でも今は考え違うよ。子供は確かに欲しいけど二人の時間をたっぷり過ごしたらにしようね! 子供ができたら二人っきりのお出かけもしにくくなっちゃうし。エッチもできなくなる」

「エッチって…まあそうだな。これからもよろしくな」



 そう言うと、リルはホッとしたような顔をし、嬉しそうに俺に抱きついてきた。



____

__

_



「どうだった、結婚式?」

「綺麗ねぇ…」



 カナタとサクラは自室で二人で話し合っていた。



「私もあげるならあんなに豪華なのがいいなぁ。でも呼ぶのはお母さん達や友達とかだけよ?」

「そうだね。あんなにきたらめんどくさいしね」



 まだ14という歳である二人にとっては先の話であったが、十分な憧れは抱いている。



「ウェディングドレス着てさ……」

「桜のウェディングドレス、絶対綺麗だよ」

「そうかな? えへへ」



 サクラはとても嬉しがった。

 そんなサクラをカナタは微笑ましく見つめる。



「でも将来、サクラのウェディングドレスを一番近くで見ることになるのは______」

「え、き、決まってるでしょ? 決まってるわよね?」



 意地悪く間を延ばすカナタに、サクラは焦りを覚えながら迫った。



「うん。俺だといいな」

「……そ、そうよ。か、カナタじゃないとダメなんだからね。わ、私をこんな…カナタに依存させておいて、前からいなくなるとか許さないんだから」



 顔を少し赤くしながらサクラはカナタに自分の本音を伝えた。カナタはとても嬉しそうにはにかむ。



「俺もサクラに依存してるかも」

「しょ、しょうなの? 私がいにゃいとダメ?」

「うん、生きてけない」



 カナタはそう言うと、はっきりと言われて顔を赤に染めて行くサクラを満足気に眺めつつ頭を撫でながら、二人で一緒に作ったドーナツを一つかじった。

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