第五百四十七話 結婚式後 当日
「ブーケ、キャッチできたのマーゴさんだったね」
「そうね。あれでラハンドさんと結ばれると良いんだけど」
新郎新婦の外周はつい数分前に、パラスナさんがブーケを投げてから出発した。
馬車の用意とかパレードのための街民や旅行者、道の整備はさすが国王様が代表してやっただけあってとても良くできているの。
ちなみにウルトさんは街のみんなにわかりやすいように、身体や顔の半分だけをラストマンにしてる。
パラスナさんは頭にうさ耳、お尻に尻尾が生えてきただけでそこまで変わらないからそのまま。
「しかし…アリムの出し物には負けるな。我が国の力で出来る限りの事はしたつもりなのだが…アイテムマスターとデザイン性がやはりすごい」
「えへへぇ…! ありがとうございます!」
いつの間にかとなりに来ていた国王様に褒められちゃった。頑張っていたぶん、とっても嬉しい。
「世辞ではないぞ? 是非とも王子達の結婚式の取り仕切りをアリムにやって欲しいほどだ」
まだよそよそしさが残る、2組のカップルの方をチラリと見ている。国王様的にはあの4人に早くくっついて欲しいのかしらん。
「その時になったらまた頼んで下さいよ」
…でもいつのことになるのやら。
あの4人の様子を見ていると、どうやらまだキスもしていないみたいだ。
結婚して子供を作るなんてまだまだまだ先のことだろうね。下手したら俺とミカが先に結婚しちゃうかも。
「ところでアリム、一つ重要な話がある。……場所を変えて…と言いたいところだが別にここでも問題ないか。私とアリムぐらいしかわからんだろうからな。念のためにメッセージに切り替えるぞ」
「わかりました。…ミカ、しばらく待っててね」
「うん」
此の期に及んでの大事な話ってなんだろ。
俺と国王様は二人だけの個別メッセージを開いた、頭の中で。
【……メフィストファレスのことなのだが】
【え、メフィストファレスですか!?】
すんごく久しぶりにこの名前を聞いたような気がする。
メフィストファレスこと、愛長 光夫さん。
魔神の一柱であるサマイエイルを生き返らせ、俺たちと同じ故郷である地球に帰ろうとしていた人だ。
何百年もかけたらしいけれど、結局それは(大方俺のせいで)失敗し、無力化されてこの国に捕らえられてるんだ。
サマイエイルに良いように使われた人とも言える。
さらに元はと言えばこの世界に呼び出された理由も神様のお遊びだとかなんだとか。つくづく悲惨な人だ。
それでもサマイエイルを復活させ、俺の大事な大事なミカとカルアちゃん…ウルトさんにとってはパラスナさんとか。この国のこの街に住んでる人は俺とウルトさん以外みんな殺されたからね。全くもって許してない。
ちなみに地球での職業はサーカス団の団長さんらしい。
俺とミカも行ったことのあるサーカスだった。
【あの人がどうかしましたか? 脱走とか?】
【いや、やはりアリムの作成した拘束具は素晴らしい。脱走なんぞは起きる予兆もなかった。……今回の話題はな、もうそろそろ時期だということだ】
【え、なんの……】
そう聞き返すも、国王様は渋い顔をする。
【アリムはしっかりしている。もはやこの国、否、アナズムに居なくてはならない存在だ。しかしそれと同時にカルアと同い年の、成人もしていない少女でもある。あまり生々しい話はしたくないが、時期というのはだな________】
それ以降メッセージを送って来ず、国王様は自分の首を手刀で軽くトントンと叩いた。
ああ、つまりそういうことか。
やっと死刑にするんだね。あれからもう数ヶ月経ってるけれど。ということはやっとあの人を地球に返すことができる。
【死刑ですか】
【人がわざわざ伏せたというのに…まあ良い。そういうことだ。本来ならアリムには伝えなくても良いことだが、どっぷりと浸かっている関係者のために報告しておいた】
【取れるだけの情報は搾り取れたんですか?】
【あ、ああ。おかげさまでな…】
…俺にも内密にしておきたそうな感じを見ると、これはもう今のうちにお城の牢屋の中に潜り込んで指の一本でも光夫さんから持ってきた方がいいかもしれない。
マグマに投げ込まれたりしたら生き返らせるのすんごいめんどくさいからね。
それはそうとメフィストファレスの処置が決まったのなら、サマイエイルに利用れていた元勇者のヘレルさんはどうなるんだろうか。
【わかりました。把握しておきます。ところでヘレルさんはどうなるんです?】
【彼奴は元勇者であるが、ステータス上では現役の、現代の勇者だ。ティール曰く、この国内で正式な勇者が見つからなかったのは、ヘレルが生きていたかららしい。勇者を我々の監視下に置かないわけにはいかないから、国内軟禁拘束する。本当なら反逆罪で死刑なのだが、勇者であるということと、ギルマーズ以外は不利益を被っていないことを考えてな】
ということはヘレルさんはあのまま城の中でエルさんと仲良くやっていくのか。
あんまりあの二人に合わないけれど、きっとイチャイチャしてるに違いない。
「では、とりあえず覚えておきました」
「うむ。こんなめでたい式で凄惨な話をして悪かったな。…今後ともよろしく頼む」
「はいっ!」
国王様は軽く微笑むと、俺とミカの前から立ち去っていった。




