第五百二十七話 ラーマ国王の恋
「ふえ……」
そう、やっぱり告白だ。
このなんとも言えない感じはそうだ。
予感は確かにしてたけど驚いたのも確か。
俺は1時間も固まった…ような気がする。実際は5秒くらいだろうけど。
「ああ、すまないな。突然で驚いただろう」
ええ、驚きましたとも。
「余は元々アリムちゃんのその美貌に強く惹かれていた。まるで魔法のようだ。気がついたらファンクラブに入ってしまっていた」
そ、そうなのか。
美貌ねぇ……俺はミカにしか興味ないから自分が可愛いってことしかわからないけど仮に俺も、俺から見てるミカと同じように神々しいレベルで美人に見えるんだったら…そうなんだろうね。
「そして今…ランチを食した。まさしく神の味だ……難しいことを抜きにし、単刀直入に言えば惚れてしまった。惹かれること、惚れてしまうこと…この二つが混ぜ合わさり、元々私の中にあったある感情が爆発してしまったのだ……」
おんなじ姿勢のままでめっちゃ語ってるよこの人。
貴族や王族の告白の仕方ってこうなのかな?
んー、でもルインさんやオルゴさんのイメージとは合わないからやっぱり性格次第なのかな。
「わかっている。アリムちゃんと余の年は10ほども離れている……不安もあるだろう」
そういえばウルトさんとほぼ同い年って言ってたっけ。
つまり22~23歳。……で、俺は13歳。
世間一般ならまず間違いなくロリコンって言われてるよね! まあ俺とミカが大人気になる時点でこの世界の人たちはロリコンが多いんだけどね!
「また、16になるまで結婚はできないが……今の年齢でも婚約はできる________」
16かぁ…こっちの世界で16になったら、ミカと結婚しなきゃね。そしたらもう幸せなんだけど。
子供を作るのは25歳くらいでいいか。それまでは今みたいにイチャイチャしようね。
「________余は何を言っているのだ。そんな気が早い…と、とにかくアリム・ナリウェイ、余は貴女に恋をしている。どうか…受け入れてくれないか?」
あっ、つい告白されてる時の癖でミカのこと考えててラーマ国王の話全然聞いてなかったや。
そもそも中身が本来男である俺が、男からの告白を受け入れるわけがない。
……アリム的には翔とかはかっこいいと思うけど、あくまでそれくらいだし。
断っちゃおう。
「えっと…その、ごめんなさい」
俺は…期待に満ちた顔をしているラーマ国王にそう言い放つ。申し訳ないけどね。
「……あまり物で釣りたくは無いし、傲慢にもなりたくなかったが、余の妻となれば金や地位、権力や名声がありのままだぞ。王妃となるのだからな」
前置きをそうつけてくれるだけでも、この人はかなりいい人なんだろうけれど……俺はただ首を横に振った。
「そ、そうか…そもそもアリム・ナリウェイはそれらを手にしていたものな。やはり…会って初めて告白するというのはダメだったか。博打過ぎたようだな……」
本当に残念そうな顔してる。本気だったんだね。
「えっと…その、ごめんなさい」
「いやいいよ、こっちこそ突然悪かったね。またいつかチャレンジさせてもらってもいいかな。いつか」
まだ諦めないようだ、仕方ない。
もう正直なことはなさてしまえ…あ、ほんとは男だってこと以外ね。
「はい…あ…でもその…ボク心に決めてる人がいるので難しいです」
「ええっ!? 心に決めた人がいるのかい!?」
ラーマ国王はそう驚いた。
ラーマ国王だけでなく、ハヌマーンさんまで。
…ちなみに国王様とティールさんも一瞬驚いたけれど、ミカの方を見るなりすぐに納得した表情をする。
「はい。ずっと好きで…相思相愛なんです」
「アリムちゃんにそんな人が居たのか……もしかしてそこのティール王子とかかな? あるいはルイン王子とか…」
ティールさんは自分の名前を呼ばれて一瞬ギョッとしている。まあ…男の人ではないよね。
俺はミカにアイコンタクトを送る。
了解したと、ミカは頷いた。
「ん? どうしたのだミカちゃん、唐突に立ち上がって……」
その問いに答えずに、ミカは俺の真横にまで来る。そして俺も立ち上がる。
立ち上がった拍子にミカが俺の頬にキスをした。
……そこまで頼んでないんだけどなぁ。ま、いいか。
「え?」
どうやら他国から来た二人はもう何が何だかわからないみたいだ。ポカーンって顔をしてる。
「あっ…はは、言っちゃえばこういうことなんですけどね」
思わず頬を掻きながら、ミカの肩に手を回す。
ミカが手を回したのとは関係なく抱きついて来た。
……ちょっと今の話で嫉妬したのかな? 可愛いなぁ。
「そうか……そうだったのかっ…ははは、はっはっは、はっはっはっはっは!」
唐突なラーマ国王の高笑い。
なんだか悪者が悪あがきに笑う時みたいな笑い方だ。
「……はぁ。となると………」
な、なんだろ、突然雰囲気が怖くなって…!




