第五百二十六話 ラーマ国王と食事
「お待たせしました!」
俺とミカはできた料理を運んできた。
食堂には今回は本当にこの人達をもてなすためだけなんだろうね、カルアちゃんやこの国の重役さん達はおらず、国王様とラーマ国王、その護衛の人とゴルドさん、そしてティールさんも居るね。
あと俺とミカの席もあるみたいだね。
その席がラーマ国王のすぐそばなのがあれだけど。
「前菜…タンのオリーブ仕立てです!」
説明しながら一つ一つお皿を食べる人の前に並べてく。
あ、ちなみに俺達の仕事は料理を運ぶまでだから、説明は口でしていて実際の配膳はメイドさん達がやってくれてるよ!
「おおっ…これは本当に美味しそうだな!」
「実際に美味なのだ…ではいただこう」
「うむ。食材に感謝を込めて」
ラーマ国王は前菜を一口、口に入れた。
カラン…と音を立てて手に持っていたフォークを落とす。
「国王様っ!?」
まだ口の中に入れていない護衛のひとが、驚いた様子でラーマ国王に駆け寄った。
なんだかラーマ国王、震えてるような気がするんだけど。
「………び」
「び?」
「美味すぎる。…………これはこの世のものなのか!?」
近くまで来ていた護衛の人を吹っ飛ばしちゃいそうな勢いでラーマ国王は立ち上がった。
美味しかったなら何よりだよね。
「し、しし、しし、正直に言おう、アリムちゃん…。申し訳ないがどうあがいても真・料理ぐらいだと思っていた。それでも普通に美味いが、大抵の上級シェフやスキルポイントを余らした冒険者は同じような味を作れるものだ。余ですら作れる。……が、これはなんだ? 神か? 神の食べ物か?」
ありゃ…前菜でこうなっちゃいましか。
俺の料理に惚れすぎて他のが食べれなくなるんじゃない? なーんてね。
ていうか涙流してるような見えるんだけど気のせいですかね?
「本来なら…本来ならアリムちゃんの料理を食べられるだけで大満足だったのに……!」
拳握ってプルプル震えてる。
大丈夫かなこの人。
「あ…あの、とりあえずフルコースなので…デザートが食べ終わってから……」
「はっ…そ、そうだな。悪かった…ハヌマーンも席に戻って食べてみるがよい」
「そうさせていただきます」
あの護衛の人ハヌマーンっていうんだ。
なんだか顔と名前のイメージぴったり。
護衛のハヌマーンって人も俺の作った前菜を食べるなり震えだし、そして涙する。
「いやぁ…アイテムマスターってすごいね」
「何よ今更」
ミカに耳打ちをするも、さも当たり前のように言われてしまったよ。
前菜からサラダ、スープにパン、魚料理から肉料理…最後にデザートを出して少し豪華な昼食は終わった。
終始震えている二人を見るのは少し面白かったりして。
ちなみにメインである肉料理は少し奮発してドラゴンのお肉のステーキにしたよ。あ、ローズドラゴンではなくて普通のチャイルドラゴンとか。
まあそれでも号泣してたし満足してくれてたんだろうね。
「実に……美味であった。余は生粋の王族であるが故に世のうまいものは大体食したつもりでいたが…。メフィラド国王がアリムちゃんはアナズム1の料理人であると言っていたこと、強く実感した」
えへへ、なんか照れますなそう言われると。
まあ結婚式でも大体在庫を処理するように高めの食材を選んで調理するつもりなんだけどね。
「………メフィラド国王、少々この場をお借りしても良いかな?」
とても嬉しそうな…そしてなにやら覚悟を決めたような表情をしてラーマ国王はそう言った。
「……? なにをするかはわからないが…変なことでなければ」
どうやら国王様もラーマ国王がなにをしようとしているかさっぱりわかっていないご様子……それどころか護衛のハヌマーンさんですら頭にハテナマークを浮かべてる。
「感謝します」
そう、感謝の言葉を国王様に述べるなり立ち上がるラーマ国王は、座っていた椅子を持ち上げ数メートル遠くへと持って行ったかと思えばすぐに戻ってきた。
そして俺の真後ろに立つ。
え、なんなの?
「アリムちゃん…いや、アリム・ナリウェイよ、椅子ごとこちらを向いてくれぬか?」
「はぁ…いいですけど…」
俺は言われた通りに椅子ごと方向転換して後ろを向いた。改めてこんな間近で見ると、やっぱり王者の風格があるしイケメンだし、若々しくてパワーに溢れてる感じ。
「……すぅ…はぉ」
深呼吸をするラーマ国王。なんでだろう。
それにしてもこの雰囲気どこかで味わったような気がする。なんというか……相手から緊縛した雰囲気が醸し出されるこれは……俺も美花も嫌という程地球で味わってる。
例えばバレンタインに___時には校舎裏で___時には唐突に______。
「よし」
覚悟を決めなおしたのか、ラーマ国王は座っている俺のことをまっすぐに真剣な眼差しで見つめてくる。
そして……おの目線に合わせて膝を折り、片手を差し出して一言。
「余と結婚前提で付き合ってくれないだろうか」




