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第五百二十五話 ブフーラ王国

「そういえばアリムちゃんは魔神を二柱も倒してしまったんだっけな?」



 ラーマ国王はしばらく笑ってた後に、そう尋ねてくる。



「はい、倒しちゃいました」

「……やはりただ事ではないな。この世界の課題であった魔神を二柱も倒してしまうとは。もはや我々とは別次元に生きてるようだ」



 ほんとにここらから関心しているようだ。 

 なんだか恥ずかしいな。



「ところで我が国にも魔神が」

「えっ…」

「まて、そんなあからさまに嫌そうな顔をするな。それでも可愛らしいけども…なにも倒して欲しいわけじゃない」



 いけないいけない、国王様達みたいなお偉いさんの前なのにね。魔神退治ってほんとにめんどくさいから顔に出ちゃった。

 倒した欲しいわけじゃないならなんだろう。



「というより、そもそも我が国にはすでに魔神は存在しない。もう正確にはわからぬくらい過去に封印した上で滅ぼしてしまっているのだ。つまりアナズムにはもはや魔神は居ないということだな」



 なんだそうだったのか。

 この世界の歴史的書物はいくらか読んでるとはいえ、そこまで深くは読んでないから知らなかったな。

 結構こういうこと多いなぁ…反省して、この世界の歴史を今度、本格的に勉強来てみるかな。



「しかし……ラーマ族の血筋である私にはかの魔神を倒すために必要な力『導者を選ぶ権限』が残っていてな」



 メフィラド王国のステータスから勇者を見つける力と…えーっと、確かエグドラシル神樹国の異世界から賢者を呼び出す力で良かったかな。

 それらと同じわけだ。

 話を聞く限りでは、このラーマ族の能力っていうのはどうやら自分自身が自由に自分以外を指名できるらしい。

 ラーマ国王は話を続けている。



「ま、指名しようと思える者も居るに居るのだが、なんだかもったいない気がするし、どうせなら伝説的な人物に与えたいだろ?」



 あっ…この流れってもしかして……



「そこでアリムちゃん、導者にもなってみないか? ここ数代に渡って誰も指名していないのだが_____」

「お断りします」



 俺はそう即答した。

 受け入れられると思ったのか、ラーマ国王は目を点にしてる。



「なぜだい?」

「それをもらうと…なんだか滅ぼされたはずの魔神が復活してきたりして面倒になる気がするんです。ぼくはとにかく、このまま平穏に暮らしたいので…」



 この世界じゃあひょんな事で色々生き返るからね!

 灰からリルちゃんだって生き返ったんだし、封印されて滅ぼされた魔神が復活するのもおかしい話じゃない。



「…ふむ、確かに。先代達もそれを危惧して導者の称号を誰にも渡さなかったのかもしれない。そういうことならいいんだ」



 この人は本当に話をしっかりきいてくれるし、すこし無礼かもと考えがよぎってしまうような言葉でも気にしてないみたい。いい人だ。



「……もうそろそろ昼食の時間だな」



 話がひと段落したところで、時計を見ていた国王様はそう述べた。確かにそんな時間だ。

 ……でもわざわざ俺の前でそんなこと言うってことは?



「……すまないアリム、礼なら後日するから昼飯を作ってはもらえないだろうか」

「なにっ……アリムちゃんの手料理だと!?」



 さっきまでの紳士的な雰囲気はどこへやら。

 目を見開いて食い気味に国王様に問い返すラーマ国王。

 というか、護衛の人もそんな感じで驚愕を隠しきれない顔をしてる。



「いいですよ」

「そ、それは本当か!?」

「安心してくだされ……アリムの料理はアナズム1うまい、これは私が保証する」



 実際そんな称号も俺持ってるしな。

 しかし、ラーマ国王は味ではなくまた別のことに喜んでるようで……。



「味も期待するが…あ…『アリミカを愛でる会』の特別名誉長として、これより至福なことはないだろう」



 あ、やっぱりその会に入ってたんですね。

 俺たちは日に日に仕事を少しずつに抑えてるというのに、あの会は人数が増え続けてるからね。



「ぜ、ぜひ頂こうか!」

「改めて、良いか? アリム」

「ええ、構いませんよ」



 料理くらいならね、いくらでも作ってあげますよ。

 作るの嫌いじゃないし、余りまくってる食材をとにかく減らしたいしね。



「では食堂で待っていてはくれぬだろうか…ゴルド、お二人の案内を頼む」

「はい」



 ゴルドさんはラーマ国王とその護衛の人を連れて玉座の間から出て行った。

 国王様が玉座から降りて、俺たちのところに寄ってくる。



「すまぬな、迷惑かけて」

「いえ、いいんですよ」

「あの国とは昔から友好ではあったが、このご時世なにがあるからわからぬから、その友好を深めたいのだ。幸いにもラーマ国王は二人の大ファンとやらでな。……どうか頼めないだろうか、今日の間、多少話をしたりするだけで良いのだ」



 国交のことなんて、はっきり言って政治には全く関わってないからわかんない。でも俺達のファンが相手で、尚且つそれが一番いい友好を深める方法だとしたら協力してもいいよね。

 それに見てる限りミカ派じゃなくて俺派っぽいから。



「わかりました。任せてください!」

「いやすまぬ、ほんとすまぬな」



 俺とミカは本当に申し訳なさそうに腰を折る国王様をなだめ、ラーマ国王を待たせたら悪いので、食堂のキッチンへと向かった。

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