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第五百十九話 リルとお地蔵様 (翔)

 ……大人な約束をしてから、俺とリルは電車に乗って俺らが住んでる地区に戻ってきた。

 自宅は一旦素通りし、そのまま目的地に向かう。



「ここが有夢んちで、こっちが美花んちだな」



 目的地に到着してすぐに、まるで今の有夢たちの間柄のように隣同士で建っている2件の家をリルに紹介した。

 


「本当に隣同士なんだね。窓からやり取りできるって聞いてたけど、これならたしかに安易かもしれない」



 うん、ここから毎日毎日交流してあのバカップルはお互い好きになってったんだよな。

 そう考えるとなんだか時間の流れを感じるな……幼稚園からのダチとしては。

 やっぱ、あの2人の結婚式の仲人とかそういうの諸々は俺にやらせてもらわないとな。

 逆に俺とリルの結婚式は有夢に頼むか。



「みんなのお家は把握したよ。アナズムの関係で何かあったらここにこればいいね。……ところでショー、ショーが私を連れて行きたい場所って、ここだけじゃないんだよね?」


 

 さすがはリルだ。

 詳しくは話してないのに、次の目的地があることは察していたか。

 

 

「まあな。次に行こうとしているところは…はっきりいえば俺らがめちゃくちゃお世話になってるとこかな。俺とリルをこんな関係に導いてくれた要因の一つと言っても過言じゃねーし、有夢と美花を今のようにしたのもそれが大きく関わっている」



 そうなんだ。

 有夢曰く…美花と再会できた1番の要因なんだと。

 ステータスの画面の説明を最初にしてくれたのも…。

 


「わふん、縁結びの神様の社かなにか?」

「ああ、はっきりいってかなり近いかもしんねーよ。マトは当たってる。とりあえず行こうぜ」

「うん」



 俺とリルは歩き出す。

 夜道も暗くなっている。

 ここら辺は(有夢と美花があるためかもしれないが)変質者が多く出現していた過去があるからな。リルをしっかり守らないと。

 ちなみにここの軽犯罪率の高さは親父がなんとかして他の地域に比べて治安がいいレベルにまでしている。

 だとしても不安だ。


 俺らの次の目的地は、前の目的地からかなり近い場所にある……いや、居る…それも違うな。いらっしゃる…だな。

 ものの数分歩いただけで、俺とリルはその目的の場所までたどり着いた。



「ここだ」

「……ん、お地蔵様?」



 少し暗すぎたからスマホのライトで照らす。

 俺らの目の前にはかのワープ装置と全く同じ風貌の『幻転地蔵』様が鎮座していた。



「リル、このお地蔵様に見覚えないか?」

「うーん? 私、お地蔵様を生で見るのは初めてなんだけど……あ、でも一つだけわかるのはこのお地蔵様、普通のお地蔵様とはデザインが違うね」



 そうなのだ。幻転地蔵は他のお地蔵様とは、一見でなんとなく…意識下でわかる程度に何やら風貌が違う。加えて色々と噂などが飛び交っている不思議なお地蔵。



「本当に見覚えないか?」

「えっ…あ、あぁ!?」



 リルは驚いて一瞬だけ大きな声を出すが周りに迷惑にならないようにすぐにつぐんだ。



「……こ、これって移動する装置の…」

「そう。あれはこの地蔵様と全く同じ見た目なんだ」

「ぐ、偶然なのかな? あ…いや、アリムちゃんがこのお地蔵様を模倣してあの装置を作ったんだよ」

「それが違うらしい。なんだかな__________」



 俺は有夢から、暇で駄弁っていた時に聞いた、この地蔵様に関することをリルに全て伝える。

 _____有夢と美花に世界の説明をしたのは幻転地蔵だということ。

 _____幻転地蔵と全く同じ文を、アナズムの神様も送ってきているといつこと。

 _____装置自体、有夢が作りたくて作ったわけでなく、魔神の部下の1人の効果で作ってしまったこと。

 これら全てを伝えた。

 ……リルは拍子抜けした表情で、キョトンとしている。



「つまり…えっと、この方は私たちの世界の神様なのかい?」

「その可能性が高いな」



 なにか重要なこと忘れてる気がするが、とにかくこれはすごいことだ。

 有夢が本来なら死ぬところをアナズムに送られたのも、このお地蔵様兼神様が考慮してくれたのだろう。



「まままま、マジかい!?」

「おそらく…な」

「おおおおおお、お祈り捧げなきゃ…えっと…あ、この方がショーに干渉したということは、私とショーがこうしていられるのもこの方のおかげなのかもしれない。……と、とりあえずお祈りをしなきゃ……!」



 リルは手を組み合わせ、その場で立ち膝をしてポーズをとった。……これがアナズムでのお祈りの姿なのか。

 結構な期間にアナズムにいた気がするが、初めて見たな。

 もしかしたら特別な場合にしかお祈りしないのかもしれないが。



「……!」



 しばらく目を瞑っていたリルはカッと目を見開いた。

 なんだ、もうお祈り終わったのか。

 俺も親友を助けてもらったことしかり、素敵な彼女と出会えたことしかり、お礼を言いたいんだけどな。



「リル、祈りってやつが終わったなら俺も祈りてーから、少し待っててくれよ」



 そう言ってみたが、リルは目を開いたまま瞬きせずに動かない。



「リル…?」

「________っ!」



 リルは唐突にお地蔵様の首に手をかけ、動かそうとした。

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