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第五百十四話 買い物デート (叶・桜)

 食堂で食事を取り終わった2人は、この日の記念としてハリセンボンのプラスチックのストラップ(カップル用2つ付き)を買い、水族館をあとにした。

 そしてある目的のために地下駅内に戻ってくる。



「ほ、本当に買い物するのよね?」

「うん。桜がおしゃれできるような服をね。プレゼントするよ。デパートと駅内服屋の両方を回ろうね」

「お金は大丈夫なの?」

「それは本当に心配しないで。大丈夫だから」



 桜はそれでも心配な眼差しを向けている。しかし、その視線を珍しく無視する叶。

 結局そのまま2人は駅内から行けるデパートの中に入ってしまった。



「ここのデパートも何回も入ったね。あとでどこかカフェにでもよって、甘いもの食べよっか」

「うんっ!」



 またこれも叶が奢るつもりであることに桜も頭の片隅で気がついていたが、とことん甘いものには目がないために喜んで即答してしまったを

 また、やはり手を繋いでエスカレーターで何度も階層を移動しているうちに、女性ものの服屋、靴屋、アクセサリー屋などがずらりとならぶ階層にたどり着く。



「ここでとりあえず買おう。靴は…今のままでも大丈夫そうだね」

「う、うん。これはお父さんが誕生日に買ってくれたのだから」



 嬉しそうに微笑む桜から、今履いているその赤い靴が本当にお気に入りであることがわかる。



「アクセサリーはどうしようか。腕輪や指輪、ピアスは穴開けなきゃだから論外だとしてイヤリング……」

「ま、それらは要らないわね。首飾りと髪飾りくらいかな」

「まあ首飾りもあれ以上のものは無いと思うけど」



 普段、アナズムで桜がつけているブリージンガメンを思い出しながら2人はそのような結論に至った。



「じゃあ本格的に服屋さんに行こう。下着とかは買う必要ないから……」

「ば、ばかっ!!」


 

 久しぶりに叶にバカと言う桜。

 下着という単語に反応したのであった。



「そ、そんな下着一緒に買うなんてできるわけないでしょ! 叶に見せるわけでもないのに!」

「あはは。だよね」



 うまい具合に受け流して、叶は桜の腕をひきながら良さげな服屋の一つに入る。



「じゃあ、好きなの選んでよ」

「えっ…あ…うん…」

「っていうのも難しいと思うから一緒に選ぼっか」



 ひっそりとコーディネートのこともアナズムで勉強してきた叶はそう言ってみる。



「お、お願いね」

「ふふ、任せてね」



 そうして2人は服を選び始めた。

 しばらくして、桜は気になった2着を叶の前に持ってくる。



「こ、これどっちが似合うかな?」



 これから冬になることを考えて選ばれたその2着。しかし、それはどちらも無地でありとてもではないが今回の買い物の趣旨にあった物ではなかった。

 値段もリーズナブル。



「んー…そういう同じようなのばっかりだから今日は買いに来たんじゃないか。…桜が悩んでる間に一通り選んでみたんだけど、みてみる?」

「と、とりあえずね」



 桜は持って来たその服らを元の場所に戻してしてから、叶の選んだ服の1セットをみた。



「どう?」

「か、かわいい。でも…こんな可愛いの私に似あっ____」

「似合ったでしょ? アナズムではどうだった?」

「どうだったて言われても……。叶が似合ってるって思ってくれてればいいし…」

「だからそれ選んだんじゃない。サイズも合ってるはずだよ。試着してみて」



 叶がそう言うから、と、自分に言い聞かせて桜は試着室に入り、着替えた。

 その際に値札とかも全て確認。

 値段に驚き叶への文句を考えながら試着室から外に出る。



「どう?」

「すっごくかわいい…っ!」

「あ…ありがと」


 

 叶の心からの感嘆の声に桜は頬を染めた。

 しかし、すぐに少しため息まじりにこう続ける。



「でもね、上下と羽織るもの合計で1万9000円よ?」

「そうだね。それがどうかした?」

「……本当に、私にこんなに払うの?」



 叶はそう言われそのクリクリとした丸い目を一瞬だけ見開いてから、クスリと微笑みつつ頷いた。



「払えるからね」

「……前みたいにどうせまた払ってくれるんでしょ? でも、申し訳ないんだけど」



 はぁ…と、桜は大きなため息をつく。



「なにもお金をかけなくても私は叶のことす、すごく好きだっていうのに……別に…」

「ん? わかってるよ」



 なんともないことのように、叶はさらりとそう言ってのける。



「そ、そうなの?」

「うん。俺が桜になにか奢ったりする理由は好かれたいためじゃない。桜の喜んでる顔がみたいっていうのと、より可愛くなってほしいとき必要だと感じたものを買う…つまり必要事項だからだよ」



 その言葉についに桜は本日数度目の、煮えたぎったような赤面をし、慌ててロッカーの中に隠れこんで着替えを終わらせてしまう。

 そしてまだほんのり赤いまま出て来た桜は、そのさっきまで来てた服を叶に押し付けた。



「……叶がそうしたいからそうするって言うなら…し、仕方ないわよね」



 

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