第五百五話 デート移動中
家から出て地下鉄にたどり着いた。
いつもより美花を見つめる人の人数と、その秒数がとてつもなく多い気がする。
「有夢とデート…幸せっ」
「まだいつもの地下鉄の駅に着いただけだよ」
周りから見たらすごくベタベタし合ってるんだろうなぁ…って思う。でも気にしないし、気にしようとも思わない。
俺と美花は異世界をめぐって巡り回って、やっと再開できたっていう過去があるんだからこれくらい、いいと思うんだ。
日曜日の午前8時だから人もそんなに多いほうではなく、車両内の椅子に2人並んで座ることができた。
美花は俺の肩に首をもたれさせる。
「やっぱりアナズムでデートするよりドキドキするっ…! なんでかな?」
「わかんないけど、確かにそうだよね」
本当になんでかはわからない。
アナズムで初デートした時より、こっちで初デートの方がドキドキするんだ。長年の夢の一つが叶ったような、そんな達成感じみたものが心の中に浮き上がる。
電車の中でもずっと手を繋いで、身を寄せ合って……毎日一緒にいるのに、よく続くなとは思いながらもお話をして……そんなこんなで過ごしていたらあっという間に乗り換えをするための駅に着いた。
そして電車を乗り換えても、また、同じようなことをする。
もし俺たちの一部始終を見ている人がいたら、ただのバカップルだと思うかもしれないね。まあ…一部始終見てる人なんているわけないんだけどね!
…って言いづらいのが俺たちの辛いところなんだけど。
まあそんなの慣れてるし別に構わない。
「そういうば有夢! 私達、付き合う前にもよく一緒にお出掛けしたよね?」
「うん、もう数え切れないくらいだね」
2人っきりが大半だけど、両親が付いてたり…叶と桜ちゃんも付いてきてたりしたことも含めるとすごい数になる。
そもそも、母さんと美花のお母さんが仲がいいってこともあって、家族ぐるみで一緒の旅館に行くってこともあったからねぇ。
「あの頃…どうだった?」
「どうだったっていうのは?」
「んーとね、その、私のこと好きだったんでしょ? ドキドキしてた?」
正直に言って仕舞えばそうなんだ。
ずっとドキドキしっぱなしだった。…小学生低学年頃は色々よくわかんなかったからそうでもないかもしれないけれど、5~6年生以降は特に。
歳を重ねるにつれて魅力を増してく美花に比例するようにドキドキするのも増えていっていたような気がする。
(まだ付き合っていない)好きな人と一緒にいるというのは、なんだか甘酸っぱくて……でも、関係が崩れてしまうのが嫌だから告白できない、なんてもどかしかったなぁ。
そういえば、どこかでかけるたんびに告白するチャンスが無いか狙ってた時期もあったっけ。
今考えてみると結構チャンスがあった気がするけれど、恥ずかしかったのか一度もしなかったね。
「かなり、ね。出かける時だけじゃなく…いつも」
「そっか…そうなんだ! 私もだよ」
微笑みながらそう言う美花。
やっぱりドキドキする。付き合っているのに甘酸っぱい心地がするのは…これも…実は付き合い始めてからずっとだったりする。
本当に…俺は美花のことが好きなんだなぁ…なんて。
「えへへ…有夢…好き_______あ、着いちゃった」
美花と俺とで見つめあっている間に、どうやらこの電車は俺たちの目的地へと着いてしまったようだ。
次はここからバス停でバスに乗って遊園地まで行く。
だから俺と美花は駅を出てすぐのバス停でバスを待ったんだ。ものの3分くらいできたけど。
「事前に時間調べておいて正解だったね」
「ねーっ」
俺と美花はバスに乗り込み、2人席で相乗りする。
不思議と昔から相乗りなり、隣に座るなり、公共施設だけに限らず学校の席替えだって、美花と俺が隣同士になる確率がすごく高い。
これも運命ってやつなのかも! ふふん。
「バスの中はそこまで人目がつかない…よね?」
そう言うなり美花は俺の腕に思いっきり抱きついた。
柔らかい感覚と、女の人特有(俺からも発せられてるらしいけど)のいい匂いが出現。
「ほんとはキスしたいんだけど」
「あはは、それはもっと人目のつかないところじゃないと」
バスの中では俺と美花はあんまり喋らず、ただただこっそりと抱きつきあった。
こっそり…なんて言っても周りから見たらベッタベタなんだろうけれど。
「着いたらまず何乗る?」
「……今は決められないね、現地に着いたらにしようか」
「んっ!」
そうこうしているうちにバスは終点で停車。
遊園地に着いたんだ。
うちからここまでおおよそ1時間40分の遊園地。
俺達がしょっちゅう来たりしてる。
俺と美花は運賃を払い、バスの外に出て同時に背伸びをしながら顔を合わせた。
「じゃあ…入ろっか」
「うん!」




