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第五百一話 部活体験 (翔)

 試しに2週間という日数にわたってアナズムに留まり続けて見た結果、なかなか良いという決断が叶君の中で出たようで、今後からこのサイクルを続けることになった。

 今度は、今日から地球での1週間が始まるんだぜ。

 ……つーか、始まったんだぜ。


 2週間ぶりの授業は、特に楽しいものじゃあなかった。

 っつーのも、叶君が勉強にハマったことにより、先の2週間のうち3日間程度は俺らも感化されて勉強しまくったからだ。

 3日間ぐれー勉強したところで、普通はそんな半端じゃなく大きく変わることはねーんだけど、なにぶん、アナズムだから。

 ステータスやらアイテムやらが大きく影響し、高校卒業且つ大学入試に必要な勉強は全て終わらしちまった。

 

 つまり、授業がつまらない。

 リルはやっぱりこの状況こそが楽しいのか目を輝かせながらカリカリと勉強を続けているが、有夢も美花も俺と同じようで、授業中の欠伸が極端に増えた気がする。


 まあ、勉強はいまはどうでも良い。

 それより重要なこと。それは今日はリルが柔道部を見学することだ。

 

 顧問には電話で『転校生のリル・フエンが部活をしたがっており、柔道部を見学したい。マネージャーかふつうに部活生志望である』と、地球での前の週に話をつけてある。まあ、実際はもう少し砕けた言い方なんだがな。


 顧問からの反応としてはやはり女子が部活に居ないからそこらへんを心配してたのと、マネージャーについては考えてみるとのこと。

 良い顧問で良かった。ゴリラだけどな。



「では、気をつけて帰るように!」



 そうこうしているうちに学校も放課後となる。

 


「ショーっ! まずは部室に案内してくれ!」

「おう!」



 俺とリルの仲は、山上や佐奈田のせいで学校中に広まり終わっている。全学年全生徒、さらに先生方まで含めた全員が俺らの間柄を知ってるんだ。

 つまり、こうして普段はクールさを含んでいると見られているリルが、俺の前でにっこりと笑いながら俺の手を引いたとしても、『お付き合いしている間柄なのか』と質問されることはない。

 ……冷やかされはするけどな!

 

 そのままリルの細くてひやりとする手を引いて、俺は部室前までやってきた。

 いつもいつも出入りする部室。

 部室と言っても、ふつうに体育の授業の一環として柔道をするときにこの部屋を使うから、割と共同な部屋だけどな。

 更衣室は男女別だから安心している。

 リルの着替えが俺以外のやつ……いや違う、俺や他の部員に見られることはない。

 ふう…。へんなこと考えてしまった。まるで俺がリルの着替えを覗いても構わないみたいじゃないか。例え溺愛されてる相思相愛の恋人だったとしても、それは流石に良くないな。


 ちなみにリルはすでに女子用の柔道着一式ならすでに持ってある。まあ、転校してくる際に学校から買わされたらしいんだけどな。



「お邪魔します! うん、やっぱりマットの上でやるんだね!」

「おう」



 ちょっと早くホームルームが終わり、さらに飛んできたために早く着きすぎたみたいで、顧問すら居ないこの部室。俺とリルで二人っきりだ。

 なんだか新鮮な感じがする。



「ふわぁ…よく練習してる、汗のにおいが染み込んでる感じがするね」

「そ、そうか」

「男の人が頑張って流した汗のにおい、好きだなぁ。つまり、ショーのにおいは大好きだよ!」

「そ、そうか」



 なんでそんな唐突にドキッとすることを言うんだ。

 こちとら、何かいつもと違う雰囲気の部室に若干戸惑ってるっつーのに。その原因もリルだけどな。



「………お、部長」



 唐突にガラリと開かれる部室の戸。

 同時に入ってくるのは2年A組の、俺の同期であり副部長である剛田だ。



「おう、きたか」



 こいつもかなりガタイが良い。

 身長は176cmだが、腕が丸太のように太く体重も重い。

 そして一本背負いが大得意っつーやつだ。

 ちなみに趣味はチェスとそろばんだ。



「ん…? 火野、お前の隣にいるのは例のあの子か?」

「そうそう、ノルウェーからの転校生________」

「ちげぇよ、その前にお前の彼女なんだろ? このリア充め」



 かなり皮肉のこもった言い方だ。

 もしかしたら嫉妬してるのかもしれねーな。



「そ、そうだ」

「…ったく、羨ましいぜ。ただでさえ彼女がいるってだけで羨ましいのに、ましてや美人でスタイルが良くて、頭も良くて運動抜群で外国人女性ときた」

「わ…わふ、あ、ありがと」



 リルは少し照れているな。

 まあどれも本当のことなんだがな。

 


「……んで? なんで部室にフエンさんを連れて来たんだ?」

「ああ、部活をするなら柔道部が良いってんで、ふつうに部員にするなり、新しく今までは居なかったマネージャーとして活動してもらうなりしてもらうための見学だな」

「ほーん」



 剛田がリルの方を見る。

 3秒ほどじっとみた後、今度は俺の方を見返して来た。



「色々と羨ましい」

「……ふふ、だろ」

「…くそっ。見学だかなんだか知らないが自慢しに来やがって! お前、今度のインターハイでいい結果残せなかったら焼肉おごれ」

「…まじかよ」

「まじだ」



 とまあリルは気にせずそんな話をして居たときに、また、この部室の戸が開いた。

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