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第四百九十一話 リルが学校へ -5 (翔)

「ごめんねショー、なんか迷惑かけちゃったね」



 放課後、帰る支度のできたリルがそう言ってきた。

 昼休みにリルがみんなの前で俺のことを紹介した時、その場にいた男子の反応のタイプは2つに分かれてたんだ。

 一つは激しく嫉妬するやつ。

 


『クッソなんだあいつ!』

『だから下宿先に……チネッ』

『羨ましい。処す』



 みたいなこと言われた。

 もう一つのパターンってのが。



『ああ、やっぱり翔か』

『だろうな。命を助けてもらった~の時点で大体わかってた。そんなことするのは翔しかいない』

『アリちゃんに美花ちゃん…そしてフエンさん。翔は可愛らしい女性を狩るたらしなんですぞ! 今後はハーレム大魔王と呼ぶのですぞ!』



 みたいにこの展開を予想してた奴らだ。

 中学からの同級生だったやつが多い。

 中には女子でもこういうタイプが少なからず居たみたいだな。


 そして俺はイケザンの野郎から『ハーレム大魔王』という不名誉な称号をもらった。

 はっきり言わなくてもいらない。



「じゃあ帰ろうか」

「うん!」



 数名の男子の視線が痛い中、俺とリルは横に並んで学校を出て行った。

 いつもならこの日は部活で柔道をしている。

 うちの学校の柔道部は週3、あまりバリバリやらないって感じだな。

 でも過去に…つっても去年とかインターハイに出場して優勝したりしたから、ゴリセン(顧問)の教え方が半端じゃなく上手いんだと思う。量より質ってやつだな。


 まあでも今日は休ませてもらったからリルと一緒にこうやって下校できてるんだ。 

 普段だったら有夢や美花と一緒に帰って居るんだけどな、休みの時は。

 ……今年のインターハイ近いけど大丈夫だよな?



「こうやって学校行って…お勉強してお友達とおしゃべりして…好きな人と登下校する。そして帰る家もあるんだ。ああ…なんて幸せなんだろう」



 リルは俺の手を握り、腕に頬ずりをしている。

 


「そうか。まあこれからもっと…その…なんだ。俺が幸せにしてやるよ」

「ふふふ、そうかい? 期待はしてるけど無理はしない程度にしておくれよ?」

「おう」



 しばらくして駅前の、リルが朝に入りたいと言っていたカフェに辿り着く。外見はとくに変わったところもないが、ここのカフェの店内は…たしか学生が近くにいるからとかいう理由で、若者の注目を集めるような可愛いものを集めてたはずだ。


 俺とリルは店内に入る。

 そして店員さんに勧められるままに二人用の小テーブルに腰をかけた。



「可愛いものがたくさんあるね!」

「だろ? なんでもうちの高校の女子の流行に合わせたものを展示してあったりするからな」

「そうなのかい? 抱っこちゃん人形とか?」

「だ……抱っこちゃん人形?」

「わふ、知らない? 日本で流行ってたものらしいんだけど」



 なんというか…聞いたことはあるが…。

 よくわからん。しかもそれって母さんたちの世代よりさらに前…より、またさらに前のものだったはず。



「いやーわかんないな」

「そうなんだ。まあ知らないなら仕方ないね。何か頼もうよ」



 リルはニコニコしながらメニューを開いた。

 やっぱり少し俺や美花としゃべるのと、他のやつとしゃべるのとでは声のトーンが違うな。



「私はブレンドにしよう」

「俺もだな。…すんません!」



 店員さんにコーヒーを頼み、数分ですぐに運ばれてきた。そこから俺とリルはいかにも高校生カップルらしい会話を始めた。



「私、今日はずっと注目の的だったね」

「まあ今週はずっとそうだろ」

「ねぇ、ショー…変なこと聞いてもいいかい?」

「なんだ?」



 モジモジとリルは顔をちょっとだけ赤らめながら話を続ける。



「私って……可愛い?」

「え、ずっとそう言ってるだろ」

「あ、いや…ショーはね。でもほら今日はみんなからそんなこと言われたから。ほら、私って耳もいいし、『可愛い』って呟いてくれた人の声が男女ともに結構聞こえてきたんだ」



 そっか…確かにうちの学校は顔がよすぎて(主にありミカ)、顔の感想言うのが当たり前になっちまってるからな。その正直な言葉がリルに聞こえてきたんだろう。



「うん、だから自信持てって」

「そ…そうなんだ。ショーにとって害にならない程度の顔で良かったんだけど。そう言ってくれるのは嬉しいな」



 ブラックのままコーヒーを、リルは一口すする。



「いや、逆に今は俺が釣り合わないって言ってる人もいるんじゃないか?」

「わふぅ!? そんなことないよ! どうして私とショーが釣り合わないのさ、しかもショーが下だって!? それはありえないよ!」



 さらにコーヒーをガブリと一口飲み込むと、そう怒り出したんだ。



「そ、そうかありがとな」

「うーわふん! 当然だよ!」



 俺が頭を撫でてやると落ち着いたのか、嬉しそうに目を細め出し、喜んだ。そこら辺の犬っぽいさは抜けてないのか。



「よし、じゃあそろそろ帰ろうか!」

「お、もういいのか」

「わふ」



 カフェでコーヒー1杯を飲み終えた俺たちはリルの気が済んだらしい。

 俺たちは金を払って店を出てから、さりげなーく手を繋いで家に帰った。

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