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第四百九十話 リルが学校へ -4 (翔)

 


 あれからリルはほとんど全ての教科で無双し始めた。

 数学の問題はもちろん、世界史や英語なんて楽勝だと言わんばかりにそれぞれの授業で優等生っぷりを発揮していた。

 そうして昼休みになって、まあ普通ならみんな弁当やパンとか…学食やらを食い始める時間だわな。

 そんな時間にリルはお弁当を持ちながら俺の前に来た。



「ショー! 一緒に食べ__________」

「フエンさん一緒に食べよーっ!」



 リルが…俺のリルが女子に囲まれてしまった。

 せっかくリルが誘ってくれたのに。

 女子の壁からリルは少しだけ顔をのぞかせアイコンタクトを取ってくる。

 俺は手で『一緒に食べてやれ』とジェスチャーをする。

 リルはこくりと頷くと。



「わふ、じゃあ今日はみんなと一緒に食べようかな」

「イェーイ!」



 というわけでこのクラスの女子16人中17人が机をザザーッと並べて食べ始めた。

 なぜか有夢がその中に混じってるし、誰もそれを不思議だと思わないのが流石だと思う。

 とは言っても有夢は美花と食べたかっただけだろうけどな。二列の机群の一番端を二人で迎え合わせにしてお互いの顔を見れるようにしてるしよ。



「フエンちゃん、すっごーい! できない教科なんてないんじゃない?」

「ありがと。でもそんなことはないよ」



 やはりというか、質問タイムが始まった。

 本当に些細な質問から核心を突きまくってる質問(そういうのは大抵佐奈田が訊き、美花が誤魔化していた)まで。

 人気者は大変だなぁ…なんて考えながら、よく考えたら有夢や美花もここまででないけれど毎日こんな感じなんだよなぁ。アナズムでも地球でも。

 人気者って実は損しかしてないんじゃないか?

 そんなことはないか?


 

「ところで訊こうと思ってたんだけど、日本に来た理由って日本が好きだからなの?」



 お昼時も半分を過ぎた頃、また佐奈田がそう質問をした。ちなみに俺はリルへの質問に弁当を食いながら聞き耳を立ててだけで時間を潰してしまったようだ。

 とにかくこれにはリルはどう答えるか。

 変な返答しなきゃいいが…。



「んー、それもあるね。でも違うよ。夢があるんだ。そしてそのためにある人を追っかけて来たんだ」

「ある人を追いかけて来た? ……ふむふむ、それってもしかして朝に言ってた『ある理由』に関係ある?」

「関係あるというよりそのままだね」



 何か深い話をしていると、さっきまで特に聞き耳を立てていなかった男子まで聞き耳を立て始めた。

 この流れはあれか、俺がリルの彼氏だって晒されるか?

 それはそれでいいけどな。

 しばらく男子らから弄られそうだが。



「へええ! じゃあ…その人に会うために」

「うん。会って…話をして…恋心を伝えるためにやって来たんだよ」

「きゃーっ!」



 女子がキャーキャー騒いでる。

 彼女持ちでない男どもはすぐさまに落ちこんだ表情を浮かべ始めた。



「じゃあなに、その人に会うために勉強頑張って新しい制度を駆使してわざわざ日本に?」

「そうなんだ」

「はぁーっ。え、その人なんで好きになったの?」



 その質問に対し、リルは少し頬を染めながら返答をする。



「……二回も命を助けられたから。今の私はその人なしじゃあ存在しなかったんだ。本当だったらもう2回も死んでるんだよ」



 恋愛話が好きな女子グループの熱狂が凄まじいことになっているな。確かに側から見たら命を2度も助けられ、結果その相手を好きになり、大変な苦労を重ねた結果日本に来てしまうなんて壮絶なラブストーリーだよな。

 まあ、その相手ってのも俺なんだけど。



「へ、へえ。じゃあその人の行方とか探して_____」

「いやもうどこにいるかは知ってるし、こっちに来てから毎日会ってるさ」

「わぁ…わぁ!!」



 教室がさらにさらに盛り上がる。

 今や男達も食い入るように聞いている。

 リルの話し方もうまいんだろう。

 きっと話し下手ならこの時点で俺がそうだと明かしてたはずだ。

 あ、有夢がこっち向いた!

 美花と一緒に俺に向かって苦笑して…また前に向き直した! おちょくってきやがったぞあいつら。



「ま、まさかもう告白した?」

「だいぶ前にしたよ」

「それで?」

「いいよ…って」



 湧き上がる教室と、いつの間にか廊下にできた野次馬。

 主に湧き上がったのは女子で、落胆したのは男子だ。

 


「すごいすごい! じゃあそれが夢で、夢は叶ったんだね!」

「そうだよ!」

「どんな人、どんな人なの!!」



 興味津々で女子達がリルに問う。

 リルは頬を掻きながら等々に立ち上がる。



「みんなのよく知ってる人だよ」

「え、知ってる人?」

「今連れてくるから」



 そう言ってリルは俺のもとまでやってきた。

 教室の空気が止まる。

 リルが手を差し伸べてきた。



「わふ、なんか付き合わせてごめんね、ショー」

「いや、いいんだよ」



 俺はリルの手を掴みそのまま立ち上がった。

 と、同時にリルは俺の腕に抱きついてきた。



「この人」

「ははは」

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