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第四百八十七話 リルが学校へ -1 (翔)

「どうかな?」



 リルが俺の部屋に入って来ると同時に、そうきいてくる。



「可愛いぜ」

「ありがと…この学校の制服はすごくかわいいね」



 スカートをひらひらさせながらリルはそう言った。

 リルは俺に着替えるなり真っ先に制服姿を見せにきてくれたが、言葉に出した通り、すげー可愛い。


 リルが可愛いのは当たり前の話なんだが、うちの学校の制服は相当な可愛さだとこの地域一帯で評判なんだぜ。

 故にそういう変態的趣味を持つ人がうちの学校の制服を欲しがるのだとか…。


 まあそれは厳しく取り締まられてるし、俺が見かけたなんかこそこそと悪さをしていた奴らを片っ端から投げ飛ばしていたら、自然とそういうの無くなったけどな。


 さらに言えば強面の人間から遠ざかられるようになっちまったが…なんでだろうな?



「荷物はきちんと持ったか?」

「うん、バッチリさ!」



 ようし、それなら準備万端だな。



「行くか!」

「うん!」



 俺とリルは家より外に出た。

 …流石に俺とリルは初登校で手を繋ぎながら登校するだなんて真似はできない。

 一緒に並んでリルに見える建物や道に迷わないための目印などを教えつつ、駅まで進んで行く。



「電車の中は痴漢が多いから注意しろよ」

「ふん? そうなの?」

「ああ」


 

 駅について切符を買ってる最中に、俺はリルにそう忠告しておいた。ここらの電車内は痴漢が多い。

 ひったくりやスリは滅多に見ないんだがな。

 もっともそのターゲットとなる大半は有夢か美花であり、俺が二人が被害に遭う前に捕まえちまったりしてるから、最近じゃあ見なくなったけど。

 一時期は本当にひどかったから、用心に越したことはない。

 やっぱり美人すぎるってのもキツイものだよな。

 それも綺麗系じゃなく、気が弱そうな可愛い系だからか、あの二人。

 まあそこら辺の事情は犯罪者じゃねーからよくわからんけども。


 リルも一見するとクールな顔立ちだけどな、もう一度見てみると可愛系だからな、心配だぜ。



「むうう? 人が多いね」



 電車に乗るなりリルはそう言った。



「そうか? これでも朝早いから少ないほうだぜ?」

「そうなのかい? ふーん」



 リルは俺に身体を寄せる。

 冬服用の制服を着てるから胸の柔らかさまでは分かりにくいが、こうして寄りかかられるのも悪くはないな。



「それにしてもショーってジロジロ見られるんだね?」

「ん? そうか?」



 リルは電車つり革と俺につかまりながら、目をせわしなくキョロキョロと動かしている。



「うん。数人からね。しかも戦闘民族…狼族であった私だからわかるよ、これは格上の敵を見るような目だね。怯えを含んでいる。その中の1人か2人、ちょうど私の周辺にいる人はメスの対象として私の四股を見つつショーを警戒しているみたい」



 ……リルって俺のお守りしなくてもやっていけるんじゃ…。い、いや万が一ということもあるし、それにリルは俺の彼女だ! 変態には髪の毛一本触れさせない。

 


「そうか、そりゃあ心配だな」

「でもショーは守ってくれるんだろう? ノアの箱舟に乗った気でいるよ」

「おう」



 しばらくして俺たちが通っている学校へ続く駅に到着した為、電車を降りてホームに入り、改札口を通って外に出た。

 ちなみにリルは俺がやり方を教えなくても勝手に切符などの操作をしちまっている。

 まあ万国共通だしな、今の世の電車システム。

 記憶があるんならできて当たり前か。



「それにしても、学校だなんてやっぱりわくわくするね」



 駅から出て、リルはそう言ってきた。



「ん、そうか?」

「うん! 勉強できて…運動できて、青春ができるのさ! こんな贅沢はないね。もちろん、私の青春はショーが居てこそだけど」



 ここ3日間…正確にはアナズムと合わせて6日間、ウキウキしっぱなしだったからな、リルは。

 俺はまあ普通に通ってるし、そこまでウキウキすることなんてないけれど、リルのあの育ってきた環境を考えると学校はすごいものなんだろう。



「それにしてもお店がたくさんあるね。帰りに寄って行ったりしちゃダメなのかな?」

「いや…うちの学校は特別に素行がいいから、大丈夫なんだとよ。普通の学校だったらダメなとこも多いらしいが」

「じゃあさ、じゃあさ、帰りにカフェとか寄っていけないかな? 放課後の過ごし方も青春の一環だと思うんだ」



 今日この日はリルの初登校であるために部活は休ませてもらっている。つまり放課後に時間が空くわけだ。

 金も今は金欠ってわけじゃないし(個人的にうまくやりくりしてると自負してるから金欠になったことはないけれど)、良いかもしれない。

 学校帰りに彼女とカフェに寄る。

 …なんだか俺もワクワクしてきたぞ。



「あ、校門が見えたね」



 俺が考えにふけってるうちにいつの間にか学校までついてしまったようだ。

 有夢たちと登校する時同様、誰かと登校すると時間が早く感じる。



「じゃあここで一旦お別れだな」



 リルはまだ下駄箱がなく、さらあ今回は一度職員室などを介してから教室に来るらしい。

 転校生の紹介みたいなことしなきゃなんねーからな。



「わふ、またホームルームでね!」



 リルは俺に手を振りながら、俺から離れ、教職員用玄関まで走って行った。

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