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第四百七十七話 待つ日

「ぷくー」



 叶がすっごくむんずけてる。

 ……というよりほっぺたを膨らませてる。

 俺がいうのもなんだけど、あざとい。



「そんなにほっぺ膨らませないの」

「だって……」



 まあ叶がこんな風にしてるのも仕方ないと言えば仕方ない。まあそれには色々訳があるんだよ。


 リルちゃんが初めて地球に来た日から、アナズムと地球を交互に行き来してそれぞれ3週間とちょっと(計1ヶ月半)が経った。

 その間にたくさんのことがあったんだ。

 まず、俺と美花が付き合ってることが地域ほぼ全体に伝わった。そのおかげもあってか、美花と俺へのナンパはグンっと減ったよ。スカウトマンは未だにたくさんくるけど。

 そして何故かそれ以外の用件で声をかけられる回数も増えたし、今まで通りすがった人からの視線の数が増えたり、振り返ってきては2度見から3度見になったりしてる。

 まとめちゃうと、俺と美花が付き合う前より大変なことが減ったかな。

 やっぱりどんな人間でも彼氏彼女持ちだと寄りつかれにくくなるんだね!


 まあ、それに対して大変になったのが叶と桜ちゃん…いや、正しくは桜ちゃんだけかな。

 美花と同等の可愛さを持つことが世間にバレちゃった桜ちゃんはあれからすごいらしい。

 同時に叶と付き合ってることも広まってるから全盛期の美花や俺よりは酷くないんだけど、それでも人に絡まれることが異常に多くなったのだとか。

 ま、どう考えても一回テレビに出ちゃったからだね。

 そのぶんみんな話しかけやすいんだよ、仕方ないね。


 無論そうすると桜ちゃんのナイトである叶のお仕事は格段に増えるわけで。

 電車の中や、街で一緒に歩く時もかなりビンビンにレーダーを張って警戒してるらしい。


 でもそんなの序の口。

 あの二人の忙しさの本番は顔の可愛さとかそういうの関係ないところにある。

 ……それは桜ちゃんの目が見えるようになったこと事態。


 桜ちゃんの目が悪くなった原因は桜ちゃんが小さい頃に目に時計が落下してきて、目の大事な部位のいたるところが損傷したから。

 ほぼ盲目に近い状態で、メガネの技術が進んでる今の世の中だから瓶底眼鏡みたいな眼鏡で普通の人並みに生活できてたけど、そんな世の中じゃなかったら…えっと確か点字ブロック(今はもうどこにもない)がまだあった時みたいに道を警戒しながら歩かなくちゃ行けなかったんだってね。


 そこまで酷い状態だった目が治ったんだもん。

 そりゃあ研究対象にされちゃうやよね。

 

 桜ちゃんは、叶の脳味噌を研究してくれている研究所と同じ研究所の眼科で調べられて居て、1週間に学校を除いてのかなりの時間をとられちゃってるんだ。

 つまり、叶と桜ちゃんが一緒にどこかでかけて遊園地でラブラブするのは無理ってこと。

 だから叶はすんごくむんずけてる。まあ半分ふざけてむんずけてるんだろうけど。


 あ、ちなみに俺と美花もまだ地球でデートしてない。

 とりあえずあと1週間は様子を見てみようかってことになってる。もう死にたくないしね。



「で、地球のデートなら…たしか今月中には行けるはずだから。……ごめんね? いつも研究所への行き来も一緒についてきてもらってるし」

「いいよ好きで付いてってるんだし。向こうには知り合いもたくさんいるしね。それにデートのこともわかってるさ。ちょっとふざけてむんずけてみただけだから気にしないでね」



 叶と桜ちゃんが仲睦まじくイチャイチャしてる。

 いやぁ、微笑ましいなぁ、なんて。そんな俺も美花と腕を組みながら立ってるんだけど。



「それにしてもリル…遅いな」



 翔がスマホの画面を見ながらそう呟いた。

 


「飛行機が遅れたって言ってたしもうちょっとかかると思うけど」

「ああ。それでもちょっと心配だな……」



 美花の問いに翔は本当に心配そうに答える。

 今俺たちは翔の家の前で突っ立ってるんだ。


 というのも…今日ついにリルちゃんが日本に来るからね。そのお迎えっていうことで。

 実際、今も引越し業者さんがリルちゃんの部屋になる予定だという部屋(俺たちは先に見せてもらった)に荷物を運んでいるところ。

 だから家の前に1台くらいのトラックも並んでる。

 そしてついでに言うとマスコミや政治関係の人達も来てたりする。リルちゃんがこの新しい外国人孤児を応援するシステムの第1号らしいから。

 それにしてもポケットの中の名刺群、後でどうしようか。



「うーん、連絡するかな…」

「電車の中とかだったらダメじゃない」

「だよなー」



 ポケットから取り出したケータイをすぐに戻す翔。



「………あ。ヘッヘッヘ」



 美花は小さくそう呟くと、顔を怪しくニヤけさせた。

 ニヤけ顔も可愛い。

 でも何か気になるから思いついた内容だけちょっと訊いてみようかな。



「美花どうしたの?」

「いや…ちょっと予感がしただけ。ふっふっふ」



 予感ってなんだろう。

 美花の勘は当たるから怖い。

 それを利用して何かしようとしてるんだろうね。

 実際、美花は翔に何やら話しかけ始めた。



「ねぇ、翔。翔ってばリルちゃんのことどう思ってるの?」

「えっ? …ああ…えーっと…」

「恥ずかしがらずに言っても良いんじゃない? 少なくとも今まで私と有夢について色々言って来たんだから。今度は翔が自分のこと言いなよ」



 なんだか美花ってばグイグイいくなぁ。

 やっぱり気になるんだろうか。アナズムじゃあリルちゃんと仲良くなってるしね。



「あ、ああ、そ…そうだな。俺はそうだな、リルのことは正直言えば…そうだな__________」



 頬をぽりぽり掻きながら恥ずかしそうに語り始めた翔。

 美花はそんな翔を……翔を見ずに、別の方を見ていた。

 俺もそっちをふと見てみる。

 なんかキャリーケースを持った人の人影が近づいてきていた。それが誰だかすぐにわかっちゃった。


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