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第四百七十六話 引き受けの申し出 (翔・?)

 あれからリルと俺は非健全なことを…まあ歳も歳だし、ちょっとだけしてから、色々と慌ててたこともあり、一旦冷静になるようにお互い言い聞かせつつ服を着なおした。



「ま、まあ今後は…な。たまーにでいいからよ」

「わふ、そ、そうだね。たまにだね、うん」



 リルは顔を赤くしながら、顔をうつむかせる。

 しおらしいな、なんか。恥じらいを持とうが持たまいがリルは可愛いか…な、なんて。



「とりあえず、何から向こうで変わったことなかったか?」



 とりあえず話題と頭の中身を挿げ替えてみる。



「わ、わふ。そうだね。院長先生…ああ、孤児院の院長先生ね。あの人がすごくいい人なんだよ」

「そ、そうなのか」



 なんとか話題を変えることに成功したぜ。

 このまま話を続けていこう。



「どんな人なんだ?」

「ど、どんな人って言われても困るよ。まだ1日しか一緒にいてないんだから」

「まあそれもそうだよな」



 その院長先生って人にとっては1日じゃないのにな。

 そう考えるとなんか寂しい気もするが…仕方ねえかな。



「まあでも、とにかくいい人だよ」

「そうか」



 これで会話終わりか?

 まて、このまま会話を終わらせてしまったら、またちょっとだけ恥ずかしい雰囲気になっちまう。

 何か話題…話題は…あるか? いや、あるじゃねーか!

 リルに伝えなきゃいけないことがあるのをすっかり忘れてたぜ。



「なあリル! リルを俺の家で預かる話なんだけどよ」

「わふ! 話が進んでくれたかい?」



 リルは狼耳をピーンと立て、聞き耳をたてるように人間の方の耳を傾けてくる。



「ああ! 今日もう申し込んだ」

「えっ、あれからもう申し込んだのかい!?」

「おうよ」



 というのも、俺が夜飯を食ってる最中に母さんと親父にリルがこっちの世界に来れたこと、さらにはノルウェーの例の永住予定留学生であることを話したら、飯を食い終わってからすぐに親父が申し込んでくれたんだ。

 だからどうするだとか相談するまもなかったぜ。



「リルも選べるんだろ?」

「わふ、そうだよ! 私にも決定権があるからね、絶対に火野家様を選ばせていただくよ」



 リルは満面の笑みでニッコリしながら、嬉しそうに俺にもたれかかってくる。

 俺はリルの頭を撫でた。



「…これでショーと私はずっと居ることになったね」

「ああそうだな」

「ショーはそれでいいのかい?」



 リルは真剣な表情でそうきいてきた。

 


「どういうことだ?」

「私がずっと一緒にいてうざったらしくないかい? もっと言えばその_____」



 どうやらリルは俺にとってリルが負担にならないかとか、そういうのを心配してるみてーだな。

 もうこういう話は何回目だかわかんねーけど…今回もちょっとかっこいいこと言ってやるか。



「みなまで言うな。俺はり…リルがいいんだ。うん。そっちこそどうなんだよ」

「わふん。私はショーが良いなら側にずっと居たいよ。私にとってショーが全てだから」



 噛んじまった上に全てだからとか言われた。

 うまく決めようと思ったのに。

 つーか、逆に単純に一緒に居たいと言われてしまって俺は内心、めちゃくちゃ喜んじまっている。



「そうか。ならそうするか」

「わふー」



 リルはさっき散々抱きついてきたというのに、また俺の腕にしがみついてきた。満面の笑みで。



___________

_______

____



「……あいつ、いたナ」

「ああ。まさかあんなところに居るとは思わなかったな」


 

 ある空間にて、燃え盛って居るような見た目の者と羽の生えた腕に女性のような見た目の者が、無限に湧き出る酒を片手に話し合っている。



「アナズムに居ねェことはわかってたがよ」

「ああ、しかし存在を消されたのではなく別世界に居るとは……」



 黄金色が広がる空間に、浮かび上がっているモニターを見ながら二人はそう言い合う。

 いま、その画面に映っているのは、あまりにも美しい少女と同等に近い女性的美しさをもつ少年の、その2人が少年の部屋で話し合っているところだ。

 二人は何かをしようとしていたが、そのそぶりをやめると口づけをし始め__________画面が変わった。



「おいおい、いまいいところだったのに」

「ああいうのは我ら神でも、気安く見て良いものではない」



 画面を変えたのは羽の生えた女性、サマイエイル。

 画面はすでに、どこか道路の脇が映されているようになっただけである。



「なんにせよ、あいつらあれだな…もう一日中朝昼晩問わずにアナズムでもチキューでもイチャコライチャコラ猿みテーに。俺があの場に居たらどうにかして引き離してるところだぜ」

「仕方ないだろう、それが人間というものだ」

「だったとしてもあいつらは6人が6人して度が過ぎてるだろーがョ!」



 盃に残っていた酒をスルトルは一気に煽ると、新しくまた酒を注ぐ。 



「そんなことよりあいつだあいつ」

「ああ、あいつな」



 サマイエイルが指差す方を、黒い男スルトルは見て頷いた。その先には道路の脇に置かれている一体の地蔵が。



「あれの中にいるんだもんな」

「ああ、そこにいる」

「あの野郎もよく考えたよな…オレ様ら3柱を離すためにわざわざ別世界に行くってのはよ。いや、正確には帰ってくる…か?」



 スルトルはサマイエイルの空になったの盃をみて、勝手に酒を注いだ。サマイエイルはそれを気にする様子もなく煽る。



「…まあ、なんにせよ、アリム・ナリウェイ達が3人目の魔神と接触するのは時間の問題ってわけか」

「わからんぞ? もしかしたら接触しないかもな」



 スルトルはニィと口角を釣り上げる。

 しかし、すぐにその表情は崩れた。



「接触しなかったらあいつらどうするんだ?」



 不安げにサマイエイルにむかってスルトルは問う。



「思い人どうしで幸せに暮らしてくだろうさ」

「だろうな」



 サマイエイルのその答えにスルトルはつまんないような表情を浮かべると、酒のつまみを口に放り込んで丸呑みした。

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