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第四百七十五話 また地球からアナズムへ (翔)

「はい戻ってきたよー」



 アナズムに帰ってきたと同時にアリムがそう言った。



「今日はみんな何もないよね? リルちゃんから地球の感想は今度きくとして、とりあえず解散!」



 アリムがさらにそう言い、俺達は思い思いに過ごし始めることに。

 とりあえず俺は報告とは別に1日ぶりにリルとたっぷりと話でもするぜ。

 俺が話さなければならないこともあるし、リルも俺に話したいことがわんさかあるだろう。

 そういうわけで俺とリルは未だ一言も交わさないままに部屋に戻ってきた。



「…おうリル。向こうはどうだった?」



 朝にスマホでやりとりしていたとしても、日中は通話アプリが中々できないからな。

 とりあえずはその間の話でもしようと考え、そう話しかけてみた。



「わふん。私の一応の故郷だとは言ってもこの世界とはまるで違う異文化だからね。びっくりことがたくさんあったよ」

「はは、そうかそうか」



 俺とリルは隣り合いながらソファに座る。

 時差8時間の国に離れてるリルの顔を一旦距離を置いてからこうして見てみると…やはりリルは可愛い。

 贔屓目抜きでだぜ?



「ショーなんだか私の顔、じっくり見てくるね? 何かついてるかな?」

「いや、一旦離れてからこうして一緒に過ごしてみるのもまた新鮮だなぁ…と」



 そう答えると、リルはその丸い目をさらに丸くしながら俺の顔を見つめてくる。



「確かにね。1日だけなのに1ヶ月くらい離れてた気がするよ。こういうのニッポンでは『一日千秋』と言うんだろう?」

「あ、ああ。よく知っるな」

「わふん。ニッポンをたくさん勉強したっていうことになってるからね。知識だけは豊富なんだ。それにしても」



 リルは俺の腕にしがみつき、その筋肉を撫でるように手でなぞり始めた。なんだかこそばゆい。

 …と思ったらまた俺の顔をじっくりと見て頬を染める。



「好きな人から少し離れてもう一度見直すとより魅力的に見える聞いたことがあるけど本当なんだね。ショーはやっぱりかっこいいね」

「そ、そうか? ありがとな」



 体だけじゃなく心もなんだかくすぐったいな。

 


「それに素敵な筋肉だ」



 リルはそう言いながら、今度は腕に頬ずりしてきた。

 前からこういう風にすることはあったが、力こぶに向かって頬ずりは初めてだと思う。



「私ね、どうやら筋肉フェチというものらしいんだ」

「マジで?」

「まじでだよ。昨日はそう言おうとしたんだけど言いそびれちゃって」



 なんつーカミングアウトを…。

 いや確かに俺みたいな(?)たくましいのが好きだとは言ってたが、それが地球に行くことによって筋肉フェチへと昇華するとは思わなかったぜ。



「わふん。その……もし、もしいいならちょっとお願いが…」



 リルは頬ずりをやめ、俺の顔を見ながらもじもじとしだした。

 リルからお願いしてくるのはまあまあ珍しい。

 べつに何お願いされても俺はべつにいいんだけどな。



「いいぜ。何だよ」

「いいのかい!? …あ、あつかましいかもしれないけど…その…身体をよくせてくれないかい?」

「お、おう」



 まあ、筋肉フェチとカミングアウトしてからお願いって言った時点で察してたがな。

 俺は上着と中シャツを脱いでほっぽり、上半身だけ何もに身につけてない状態となった。

 よく他の人に筋肉を見せる羽目になる俺としては、べつにどうってことない。



「わふぅ…!」



 リロは俺の身体を舐め回すように目を輝かせて見ている。

 さすがに恥ずかしいが、よく考えるとリルは何回も俺に同じようなことしてんだよな。胸を見せてよ。

 その場合、俺が頼んでるわけじゃねーけども、ジロジロ見てるのは否定できねーし。



「何度見ても綺麗な逆三角形…まるで彫刻のような芸術品だよ。柔道をしている人って筋肉ついててもゴリゴリしてるとか一見腹筋とかに筋肉ついてるように見えなかったりするのが多いって私は把握してるけど…ショーはすごいね」

「はは、サンキューな。なんなら…っつーか、今更だけど、べつに好きなように触ってきたりしてもいいんだぜ」



 リルはゴクリと唾を飲み込むと、恐る恐る俺の腹筋を撫でる。ひんやりとして細くて冷たげな手が心地いい…ってなんだか変態みたいな感想が思い浮かんじまった。



「筋肉密度が高い…見た目によらず、ショーって体重高いんじゃないかい?」

「ん、まぁな」

「……その、もうちょっと色々して良いですか?」

「い、いいぜ?」



 なんか一瞬だけ口調が変わったリルは、俺をベッドに移動するように言ってから、ベッドの上で抱きついたり、背筋を撫でたり、背中から抱きついたりしてきた。



「……最高だよ」

「そうか、良かったな」



 リルに抱きつかれて俺も嬉しいとかはべつに言わないがな。うん。



「わふ。もう満足かな」

「おうそうか。じゃあまた今度な」



 俺はさっき脱いだ服を拾おうと、ベッドから降りようとした。



「待ってくれないか?」

「ん? ああ」



 リルに呼び止められる。

 なんだろうか、筋肉が足りなかったか?



「わふん。ショーに見せてもらったんだから私も」

「え?」



 そう言うとリルは、前回…前々回のように服をたくし上げ始めた。…またか。

 まあ仕方ないから今回からちゃんとしたリアクションをしてやろう。

 そんな感じで下品ながらもそう考えていた。



「うう…」



 しかし、リルは顔を若干赤くして、下着が見えてきたほどで服を止めてしまう。

 どうしたのだろうか、いつもはバッと脱ぎ捨てるのに。

 まさか…恥ずかしくなったのか?

 今更?



「リル、恥ずかしいなら無理すんなよ? つーか別に俺は頼んでないんだが」



 そう言ってやる。



「そ、そう言うわけには行かないよ! 私はショーに好きな筋肉を見せてもらう、ショーは私の胸を……す、好きにするんだ。これはいわゆる等価交換なんだよ。で、でも1日過ごしたことによりより入ってきた地球での記憶が、すごくコレを恥ずかしがってるんだ! アナズムはそう言うのに対して意識が薄いって気が付かされてるんだよ!」



 なんか一人で必死に言い訳しながら、リルはあれからも徐々にたくしあげてゆく。



「いや無理すんなって」

「し、して…ないっ」



 そしてリルは上着を脱ぎ捨てた。


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