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第四百六十八話 ラブラブ登校

 2駅のち電車が止まり、扉が開く。 

 俺と美花は手を繋ぎなおし、駅から改札を通って出た。

 やっぱりめっちゃ視線が集まる。

 うちの学校の生徒が多いし…特に俺と美花は有名だから、注目されやすいのかもしれないね。


 ま、人から注目されるなんて物心ついた時から俺と美花はずっと経験してきたことだし、行き過ぎたりしなければ特になんとも思わないから良いんだけど。


 だから誰に注目されようが構わないから、俺と美花はこのまま学校まで歩くんだ。



「ね、有夢。いつも…こうして一緒に登校してたよね」

「うん。そうだね」

「えへへ…もう何回も同じ道通ってるはずなのに、今日は全然違うように見える」



 そう、しみじみと美花は言う。

 


「こうして一緒に歩き続けてきた間も、有夢が近くにいるからドキドキしてた…ううん、してるんだよ。ずっとね」

「ははぁ…美花もだったんだね。俺も好きだったから…好きだから!」



 やばい、すごく良い雰囲気。

 こうして一緒に歩いてただけでも胸が踊るような思いだった。幼稚園から小中高とずっと同じだったけれど、そのたんびに。だからゲームで忘れちゃったのは偶然なんだって。

 偶然美花と登校せず、偶然頭の上に花瓶が落ちてきて、偶然打ち所悪くて死んじゃって、偶然異世界へ飛ばされて、偶然美花と再会した。

 ……なんかすごいね。


 美花がジッと俺のことを見つめてくる。

 かく言う俺もミカのことを見つめる。

 相変わらず可愛い。抱きしめたい。

 でも今抱きしめるのはいただけない。

 そう思っていたら。



「あっ……!」



 美花がそう呟くと、俺の腕を素早く抱きしめて、そのまま早足で進み始めた。

 と、思ったらすぐに手を握りなおし、元に戻った。



「どしたの?」

「あ…いや、今の所は…その有夢が、ね」



 ああ、そっか今の所は俺が死んだ場所だったんだ。

 美花にとってはトラウマになっていて当然の場所。



「もう大丈夫、俺が美花の前からいなくなる事なんてないから」

「うん!」



 美花は微笑む。

 まるで天使みたいだ___________



「すいませんちょっと通りますよ」



 そう感傷に浸ってるうちにうちの学校の女子生徒だとみられる人がわざわざこの広めの道で俺と美花を押しのけるように通って言った。

 そしてこちらを振り返り、恨みでもあるかのような目でこちらを確認してきて。



「えっ……えぇえええええっ!?」



 大声で驚愕された。

 うん、その顔は見覚えがある…というか、同じクラスの女子、佐奈田さん。



「おはよー! さなちゃん」



 美花が懐かしげにそう言った。

 美花は佐奈田を愛称でそう呼んでいる。まあ、クラスの女子全員がそう呼んでるんだけど。



「お、おはよぉ…ミカっち…。え、あれ? 隣いるのはミカっちのお嫁さんだよね?」

「むぅ。美花のお婿だと言って欲しいなぁ」



 なんて俺も言ってみる。



「は…はぁ、お婿? え、どこのリア充が学校近くでいちゃついてるのかと思ってたら…。いままで二人ともアレだよね、おふざけ無しでさ、親友以上恋人未満みたいな感じだったよね?」

「まあね、いままでは…ね」

「ねー」



 なんて俺と美花はあわせて答えてみる。

 いよいよ佐奈田の顔が信じられないようなものでもみるような顔になってきたぞ。



「まって、マジで付き合ってる?」

「「うん」」

「ええええ……」



 なんだよ、俺と美花が付き合ってると何かダメなことでも……。



「なんか百合っぽい」

「違うよ」

「違うね」

「でも百合にみえるんだよなぁ……それにしてもこれは…一大ニュースかも。ね、昨日休んでたよね? あんたら3人して休んでたよね? 何あったの?」



 おっとどうやら佐奈田は俺と美花が死んでしまったことは覚えてないみたいだ。中学からの知り合いが記憶にないとなると、やはり、そのことを覚えてるのは近親者だけなんだろうか。



「いやぁ…色々ね、色々よ。まあえっと…とにかく私は念願のお付き合いしてるから」

「は…はぁ……いままで見ていてもどかしかったからねぇ…。でもこれでついにこの学校…ううん、この地域一帯のトップアイドル2人は恋人持ちかぁ…」



 いや、トップアイドルて。

 美花はまだしも俺も入ってるのか。



「とにかく……とにかく! じゃあね! 知らさないといけないから、知らせないといけないから!」



 ハッとして何かに気が付いたように佐奈田は目を見開くと、なぜか同じことを2回いいながら俺と美花からダッシュで離れて行き、先に学校に行ってしまった。



「見ててもどかしかったって」

「あはは、確かにそうかも」



 それはわかるんだよ。

 もどかしかったかもしんない。



「今日はみんなこの反応なのかな」

「さあわかんない」



 俺と美花は数多の目に注目されながら、残り数分ぶんの登校路を仲良く進み、学校に到着した。



 

 

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