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第四百六十七話 久々の登校

「あーゆむっ!」



 外に出るなり、制服に薄いジャケットを羽織い、学校の鞄を持った美花が抱きついてきた。

 お隣さんだから俺の家と美花の家の玄関の間は10歩も歩かない距離しかない。

 ……あれ、一瞬母さんが玄関からニヤついたような気がするけど気のせいかしらん。

 


「えへへへー。行こっ!」

「うんっ」



 俺と美花は抱きつきあいながら____________というのは流石にせず、また腕を組み合うのも周囲にとってイチャつきすぎてると認識されるかもしれないから、ただ恋人繋ぎで手を握って歩いた。

 美花も理解してくれてるんだけど、ちょっと不満そう。



「あーら、おはよう。有夢君、美花ちゃん。今日も仲良いねー」



 近所のおばさんの今井さんだ。

 毎朝、俺たちに声をかけてくれてるの。



「おはようございます」

「おはようございます!」

「あらあらー、本当に今日はいつもより仲良さげねー。なんで付き合わ……あれ? 手繋いでない?」



 この人も翔と同様に俺たちの中を弄ってくるんだけど、俺と美花の恋人繋ぎに気が付いたみたいだ。



「え、えへへ。そうなんですよ」

「も、もしかして…付き合い始めたの?」

「はい…その、昨日色々ありまして……」



 今井さんは驚いたかのように、あるいはクジ引きでもあたったかのように目をクワッと見開き驚いた、そして次の一声。



「ええええっ!? ちょっと…ちょっと!!」



 この人は普段大声を出すタイプじゃないんだけど、よほど俺たちが付き合い始めたことに度肝を抜かしたのか、そう叫んだ。

 途端に出てくる近所の皆さん。



「ど、どうした!?」

「あれ…有夢君と美花ちゃん?」

「手ェ繋いでるぞ!?」



 5~6人は出てきてしまったよ。

 この中に俺に空手を教えてくれた京野さんも居る。

 この人のおかげで俺は異世界ライフがうまくいったといっても過言ではない。今度それとなくお礼言わないとね。それはともかく。



「あのね、あのね、有夢君と美花ちゃんがやーーーっと付き合い始めたんだって!」

「はぁぁ…やっとかぁ」

「14年かい、長かったな」



 そう口々に言ってきた。

 それだけでなく、『結婚式はいつ』だの『デートはどうする』だのと色々聞かれ始めたので、俺と美花は逃げるように、学校に遅れてしまうことを口実にそそくさとその場から退散した。



「は、はぁ…大変だったね」

「うん。でもたくさんの人が私達のこと応援してくれてるね」


 

 美花はニコッと笑う。

 あああああ、天使のように可愛いっ。

 俺と美花がいつも使用してる駅まであるいてる道中、何回かヒソヒソ声が聞こえる。無論、それはほとんど俺と美花に向けられたものなんだけど。



「おい…あの子ヤバイくらい超可愛いくね?」

「え、でも彼氏持ちじゃん。リア充じゃん…ん? 隣にいる子も女の子だな。めっちゃ可愛い…」

「や、でも男の制服着て…あ、あれだ。成上有夢と曲木美花だぜ、あれ」

「あーー、あの有名な。やっぱリア充じゃん」



 そうなんだ。俺と美花が一緒に歩くと、毎朝こんな会話が聞こえたり、ジッと見られたりするんだよ。

 今みたいなちょっとガラ悪そうな人達だけでなく、普通の人もね。ま、理由はわかる。

 美花が100人居たらそこにわざわざ900人加わって1000人になって、その1000人全員が一度振り向いたら凝視し始めるくらい可愛いから……だと思う。

 そして俺も可愛いらしいし。

 自分で言うのもなんだけどねっ。


 ちょっと赤面しながらも、俺と美花は手を離すことなく駅まで辿り着いた。

 ここから2駅分電車に乗って、その駅からまっすぐ10分ほど歩けば学校だよ。

 ちなみに翔は俺たちより数分ぶん駅から距離が近いため、2回に1回は俺たちより少し早く学校に着く。

 残り半分は一緒になるんだ。


 余談かもしれないけれど、電車は技術の革新によって大雪とか台風が来ても止まらないようになってる。

 これがすごく便利らしいんだけど、その前の世代は俺たちが生まれる6年前が最後だから、恩恵がよくわかんないんだけどね。

 止まらなくて当たり前…みたいな?



「あっ…有夢と美花だ…」

「あれなんかいつもと雰囲気違くない?」



 駅内のホームにて違う高校の人達もそうヒソヒソと言っている。俺と美花、そして翔…叶と桜ちゃんもここら一体ではかなり有名らしいから。なんでだろうね。


 定期券でホームに入り、電車を待ってる間も大体みんなこっちを見る。

 ある人はまるで絵画でも見るように、ある人はちょっと危ない目で、ある人はリア充を恨んでるかのような目で__________俺と美花が可愛いくて羨ましいのはわかるけど、ちょっと自粛して欲しいよ。



「電車が参ります______」



 数分後、電車がやって来たから俺と美花は乗り込んだ。

 いつもちょっと早めの時間に出るから人が少ない、故に座れる。

 ……まあ早めの時間に出るのはその……やんわりと言って電車内で性的イタズラしてくる人が居るからだけども。

 美花はおろか俺ですらターゲットらしいからね。よくわからないよ。

 まあでも、某ガーディアンのおかげでここ1年半はそんな目にあってないんだけどね。

 奴はこの街で『最強』とまで言われてるから。

 ガーディアン、不良でもないのに。それを恐れてるのかも。


 ちなみに叶と桜ちゃんも同じ路線なんだけど(中高大一巻校で同じ学校に入ってるから当たり前なんだけど)、眼鏡してても可愛い桜ちゃんは全くそういうことされたことないらしい。

 どうせ叶が死守してるんだろうけどね。

 

 まあ痴漢避けだけでなく、早く電車に乗ると椅子にすわれるのもありがたい。俺と美花は互いに身体を常識の範囲内で近づけて椅子に座った。

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