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第四百六十三話 大泣き狼

「そ…そうか。お、俺もり、リルのことはその…あ、ああ…えっと…愛してるが…。突然どうしたんだ…よ?」



 唐突に愛してると言われたショーは恥ずかしそうに頬をかく。

 そんなショーから離れる様子もなくリルちゃんはその質問に答えずにわんわんと泣いていた。

 俺とミカは勿論、温かい目で見守ってあげてるよ。



「あぅ…ぁぅ…ぅああ…」

「おいリル?」



 全く泣き止まないリルちゃん。

 もう正直尋常じゃない。あれだ…そう、この世界で初めてミカに会った時の、ミカの泣き方に迫るものがある。

 


「わりぃ、ちょっと俺とリルだけで話してみるわ」



 そう、ショーはリルちゃんを自分の身体から優しく剥がし、申し訳なさそうに言った。



「あら、いいのよ。どれだけ時間をかけてもいいからゆっくり話てきなよ」



 ミカが俺が今まで見たことないくらいにニヤけてるよ!

 かくいう俺もそうなんだけど。



「あ、ああ。ところでなんだそのニヤケ…。まあいい。とりあえず話してくる」



 ショーはこの部屋を出て行き、リルちゃんの背中をさすりながらあの二人にあてがった部屋へと戻って行った。



「な、何があったんだろう?」

「さあ。どうせまた予想もつかないことが起きたんでしょ」



 サクラちゃんの問いに、この中でおそらく一番冷静に答える弟。



「それにしても…。ショーとリルちゃんも完全にラブラブになってきたね」

「そうだねぇ。地球でトリプルデートするのも楽しそうだね」



 なーんて俺とミカはのんきに話し合ってみる。

 リルちゃんがショーに「大好き、愛してる」と言いながら抱きついたということは、あの1時間の間になにかあったということだろう。

 ……って、頭を使わなくてもわかるよね。

 よし、じゃあI.Qがめちゃくちゃ高いカナタに訊いてみよう。



「カナタはリルちゃんに何があったと思う?」

「んーリルさんの身に何があったか。たった1時間であの反応であると考えると、ほとんど1つに絞れるよ」

「その一つって?」



 もう考察し終えてるのか、カナタはすんなりと答える。



「まず、兄ちゃんとミカ姉が最初にこの世界に来た時またいにランダムで記憶そのままにどこかに送られたという説は違う。その程度じゃああそこまでにはならないだろうし」



 む、確かにそうだ。

 いくらリルちゃんがショーのことを好きすぎると言っても、1時間離れた程度でああはならない。



「仮にリルさん自身の身に何かがあったとしても、SK2は引き継がれるからね。例えば…暴漢に襲われるとかがあったとしても、自力でなんとかできるはず」



 確かに襲われたりしても、普通の人は全く歯が立たないだろうね。

 なるほど、だからランダムで送られたのは違うというわけか。



「で仮にショーさんの近場にリルさんが出現したとしたら、泣いたりせずに喜んでるはずだから、としたら考えられるのは1つ。リルさんは記憶を加えられた」

「えっと……それってリルちゃんが地球で暮らして行く上で必要な情報を与えられたってこと?」



 サクラちゃんのその問いに、カナタは首を振る。



「惜しいね。おそらくはさらにその上。暮らして行くための情報だけでなく過去も与えられたと考えた方がいい」



 過去が与えられたとは……え、そのままの意味でいいのかな? つまり__________



「もうわかったと思うけど、リルさんは人生を一回体験してきたんじゃないかと思う。あるいはその作られた過去の記憶が一斉になだれ込んできたか」



 そう、つまりはそういうこと。

 確かにあの大泣きの仕方はそれがしっくりくるよ。

 


「で、さらに考えられるのは神様…が俺たちの辻褄を合わせてるのだとして。リルさんの『地球での過去』でもショーさんのことが好きであるということに合わせてるのだとしたら、ああなるよね」



 あー、カナタはさすがカナタだなー。

 お兄ちゃんなんかより全然優秀!



「偉いねー、さすがカナタだねー。お姉ちゃん、嬉しいよー、カナタがそんなに頭良くて」

「う、うん……」



 賞賛のつもりでカナタの頭をちょっと背伸びしながらも撫でてあげたけれど、カナタは微妙そうな顔をしていた。



_____

___

_



「わるい、戻った」



 ショーだけがこの部屋に戻ってきた。

 その間、実に2時間。



「リルちゃんは?」

「リルは泣き疲れなのか、なんか一気に疲れがきたみてーで、寝ちまってる」



 まあ、あれだけ大泣きしてたら疲れるよね。

 でも人間より頑丈な獣人がそれぐらいで倒れるとは思えないから…やっぱり、カナタのいうとおり、記憶が増えた系の考えが正解してそう。



「この時間……さてはイチャついたわね?」

「ふぇぇ!?」



 ミカのその言葉に、サクラちゃんが驚愕する。

 だけどもショーは激しく首を振って否定した。



「い、いや…特に」

「なんだ残念」



 ミカは本当に残念そうにそう言う。

 なんだ、俺もショーとリルちゃんが大人なことしてるのかとすこーしだけ思ってたけどそんなことなかったみたい。



「じゃあ…何があったの?」

「そ、それがな____________」



 ショーは俺らに、リルちゃんから訊いた話をしだした。

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