第四百五十八話 結果報告
次の日。
俺達は城へと戻って来た。
「「「「おかえりなさい!」」」」
子供達が揃って2週間も居なくなるのは流石に寂しかったのか、国王様、大臣さん、騎士団長さん、大司教さんとその奥様達全員で俺らのことを迎えてくれたんだ。
「ただいまです! お父様、お母様! 皆様!」
鍛錬をした人の中で一番年下であるカルアちゃんが国王様の元まで駆け、抱きつき気味に身体を寄せる。
そんなカルアちゃんの頭を国王様は撫でようとして______手を止めた。
「……どうなされました?」
カルアちゃんが首を傾げて国王様に問う。
おっと国王様だけでなく、どうやらその場に居た戦闘経験を積んだことのある人たち全員が異変に気がついたみたいだ。
「か…カルア…な、なんだその魔力は!?」
「えっ…ああ。アリムちゃん達の教えの下、お兄様達と一緒にレベル上げを頑張ったんです!」
魔力のステータスはね、体外に漏れ出しちゃうからね、仕方ないね。
本気も本気、超本気を出したSSランカーの魔法使いくらいの魔力なら、人を気絶させるくらい放出できたりするもん。
他人のステータスが基本的に見ることができないこの世界では魔力で測ったりするものなんだけども。
「が、頑張ったって…。俺を抜く魔力ってどれだけ……」
「そ、それだけ頑張ったんですよ…?」
国王様達の異常な驚き具合に逆にカルアちゃんも驚かされてるみたいだ。
そこにティールさんが助け舟を出すべく、国王様の元へ。
「お父様」
「ティール、お前も相当なことになってるようだな…」
「あはは、はい。アリムちゃんの強さの秘密がわかりましたから」
ニコニコとしたティールさんによってそう告げられた国王様は、目を見開いたまま俺の方を向いた。
「じゃあアリムちゃんくらいの実力に?」
俺を見たり、カルアちゃんを見たりを繰り返してる国王様の代わりに、カルナ王妃がそうティールさんに問う。
「いえ、お母様。アリムちゃんには到底敵いませんよ。ですがまあ、それはそれは相当な力を手に入れました」
「あなたが言うんだったらそうなのでしょうね…」
ステータスを見ることのできるティールの言うことは、もはや誰も疑う余地すらない。何かのアイテムによって強化されたとかは皆無になったと、今頃みんなは考えてるのかも。
「……とりあえずは話を聞かなければな」
深い瞬きを数度してから、国王様はそう言う。
俺達は部屋を移動した。
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「__________________どうして、今まで誰も気がつかなかったんだろうな」
ティールさんのメモを10分程度で読み終わった国王様達が、悟りでも開いたような顔をしてそう言った。
メモ…もとい、俺のレベル上げ方法が詳しく書かれたティールさんの日記。
それは俺のアイテムの効果によって複製と加工、さらには読み手に通常の数倍のスピードで読ませることができるエンチャントを付与してあるんだ。
「し、しかしこれは大変なことになりましたぞ。ダンジョンの重要性がより高くなりましたな」
複製された一冊を読んだ大臣さんがそう言った。
ちなみにこの本を悪用しないと考えた人である国王様、大臣さん、騎士団長さん、大司教さんの4人にのみ俺が選りすぐって見せている。
「ああ、それよりも今は……転生についてだ」
国王様は本をパタリと閉じ、机の上に置いた。
「先に言っておこう。我…いや、俺のレベルは今、250だ。そしてレベルの最大が255であること、そしてその先に転生があることは知っていた」
へえ、国王様ってレベル250だったんだ。キリがいいね。
「しかし…しかしだ。実際に転生を本当にやる人間なんて今まで出てこなかったし、誰も転生する者が現れるとは思ってもいなかった」
ルインさんやティールさん達の最初の反応から、この世界の住人の全員が転生のことについて知らないと思ってたけれどそういうわけじゃないのか。
俺は思わず手をあげてしまった。
「あ、あの、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
「えっと…その、転生ってほとんど良いことしかないと思うんですけど…。どうしていままでやる人が居なかったのですかね?」
まあ大方、前々から予想してた通り、転生しなくても大抵のものが倒せる実力がその時点でついてるからだとは思うけれど。
「わざわざレベルを1に戻し、ステータスを下げてまで強さを求める必要がないからな。SSSランクの魔物などまず出てこないのだし、SSランクの魔物を一度に数体倒せる実力があればいい。……と言う考えからだろうな。俺もそう思ってた」
ていうか、国王様ったらさっきから口調が"俺"になってるのね。冒険者魂とか燻られたりしてるのかしらん。
「しかし、今日からは俺は…否、俺達はその考え方を改めよう。転生、これはつまり魔神に太刀打ちできる実力が手に入る道筋だったのかもしれん」
国王様は勢いよく椅子の背もたれにのしかかると、口元のみを唐突に、ニコリとし始めた。
「まあ、しかし。それはそれ、これはこれ。今は皆が鍛錬を終え、強くなって帰ってきてくれたことを素直に喜ぼう!」
うんうん、と、その国王魔の言葉にお父さんズは首を頷かせた。やっぱりこの人達にこの本を公開しても大丈夫だったね。
「俺も強くなって悪いことする」みたいなこと言われたらどうしようかと思ったよ。




