第四百三十八話 アリム流ダンジョン探索
「んーっ! 今回も美味しかったよっ!」
お昼寝を1時間した後、少し早めの昼食をとった俺達。
なお、倒したチャイルドラゴンの肉を使ってお昼ご飯は作ったんだよ。
折角だしね。
「ありがとうございます! …さて、もう一回潜りましょうか」
俺がそう言うと、全員、それぞれ装備品を再度装備し始める。間も無く、ダンジョン内に移動した。
「また最初からか」
最初の魔物…今回は2匹チャイルドラゴン。
それらが見えて来たところで、オルゴさんはそう呟いた。
ちなみに、この魔物の配置が変わったりするのは、楽しみのダンジョンの特徴だったり。
「まあ、それが狙いなんですけど」
俺もそう呟く。
「どういうことだ?」
「んふふー、気がつきませんか?」
「何を?」
全員が顔を見合わせながら、あたまにハテナマークを浮かべる。
よし、そろそろ教えようじゃあないですか!
アリム(地球)流ダンジョン探索術をねっ!
「ダンジョンって、出入りしたら魔物がまた現れるじゃないですか」
「うん、困る事だよね。なにせ休むことだとか食料が尽きた時、出ちゃったらもう一度やり直しなんだから。仲間数人で入って、一人が荷物を取りに行くみたいなことしないと」
そう、それがこの世界の絶対的一般常識。
今まで数万人の人間が居て、ダンジョンのその利点に、転生転送されてきた人間以外は全員気がつかないという謎。
まるで呪いでもかけられてるみたいに、言われるまで気が付かないんだ。
スルトルあたりに訊いとけば、この謎は解けたかもしれないけど……それはもう別にいいや。
厄介ごとには突っ込みたくないし。
「ですがそれは、逆に言えば出入りすれば魔物を狩り放題って事じゃないですか」
「………? どういうことかな、詳しく頼むよ」
ティールさんが書とペンを取り出しながらそう、尋ねてくる。他の5人も興味津々だ。
「魔物は…普通なら、どっかから絶対に出てくるというわけではありませんよね?」
「まあ、そうだね」
「ですがダンジョンを出入りすれば、そこに絶対居るんです。魔核も素材も何回も手に入ります。経験値もね」
しばらく6人は考え込む。
1分ほど考えた後_____カルアちゃんがなにかを掴んだように、弾けるように叫んだ。
「なっ….なら、そうですねっ!? 魔核も素材も経験値も、安定して手に入る……!! 言わば、ダンジョンは、ある程度の強ささえあれば無限に魔核や素材を手に入れられる資源の宝庫って事なんじゃ……っ!!」
「そういうことだよー」
そのカルアちゃんの気がつきに、のこり5人も全員がハッとして何とも言えないような顔をし始めた。
「えっ…えっとじゃあなにかな? ダンジョン自体は…下手すれば、クリアした時に手に入る称号や伝説級のアイテムなんかよりもよっぽどのお宝……!!?」
「ええ、そうです!」
「どうして今までそんなことに気が付かなかったんだ!? 俺達は…」
「ど、どの本にもこんなこと書いてませんでしたっ!?」
「うわぁ…ななななな、こんなことって…」
口々に驚愕驚嘆の声を述べる。
……リルちゃんもこんな感じだったんだろうか。
「じゃあ…そうか、アリムちゃんはこうしてその強さを…っ!」
「はい。レベルに合う魔物だけを倒すことを繰り返して、皆さんと合うまでにはAランクの冒険者くらいの実力は持ってましたよ。レベル1から始めて」
ダンジョンを見つけるまでに小物を何匹も倒してるから、過大報告かもしれないけど、まあ、別にいいよね。
…でもやっぱり腑に落ちないのは、そんななのになぜ最初のボス、虹帝犬や金王犬を今から見れば案外さっくり倒せたのか何だよね。やっぱり、あのダンジョンは特別だったんだろうかね?
「まだ……気持ちの整理がつかないけど……こうなったらとりあえず、ダンジョンの出入りを繰り返そう! …まずはそこのチャイルドラゴンを倒さなきゃ」
「そうですね。皆さん気がつけたなら、あとボクが教えられるのは効率のいい『周回』の仕方ぐらいです!」
「じゃあアリムちゃん、あのチャイルドラゴンはどうすればいいかな? リロの魔法で手っ取り早く倒すかい?」
魔法を使わなくても余裕で勝てる相手には魔法を使わないほうがいいからね。
俺は、首を横に振った。
「まず、あれはルインさん達が剣で普通に、スキルを使わずに倒して下さい。とりあえず、補助魔法をかけてから」
「わかったよ。ミュリ、お願い」
「はいっ!」
ミュリさんがルインさんとオルゴさんに補助魔法をかけた。すぐにチャイルドラゴンに飛びつく二人。
このダンジョンに来る前よりもいくらか良い動きで、数十秒で倒してしまった。
まあ……このくらいのレベルならいけるはずだもんね。
「よし…次だ!」




