第四百三十一話 譲り受けたダンジョン
地球に帰って、またアナズムに戻って来てから3日後、国王様から俺たちの元へ手紙と、メモが書き込まれた地図が届いた。
手紙の内容はカルアちゃん達との鍛錬をする日にちの確認とダンジョンを明け渡す準備ができたとの報告。
地図はダンジョンがある場所を指してるみたい。
地図をみんなに見せながら、俺は提案してみる。
「どうする? 早速行ってみようか」
「ああ…リルにとって必要な事だからな、早いうちに行こうぜ」
他のみんなもその意見と同じ考えみたいだ。
というわけで、早速、ダンジョンに行ってみた。
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カナタの便利な便利な瞬間移動のおかげで移動時間なんてほとんどかからず、ほんの1時間程度で5つ全部を回ることができた。
えっと…ダンジョンの種類としては、『楽しみ』が2つと『喜び』『怒り』『哀しみ』がひとつずつ。
『喜び』と『哀しみ』のダンジョンは初めてみたよ。
特に、ショーから事前に『哀しみ』のダンジョンがどんなものかは聞いていたけれど、『喜び』のダンジョンは全員が初めてなんだよね。
というわけで、今は『喜び』のダンジョンの前に居て、中を探検しようとしてるんだ。
この俺達が居る喜びのダンジョンは、でっかい木の根元にあるのが特徴的。
「誰が見に行くんだ? 6人全員で入るのか?」
「いや、1人で大丈夫でしょ。勿論、ボクが行く」
だよな、とショーが呟いた。
やっばりこういうのは俺でないとね。
「じゃ、行ってくるから!」
そう宣言してから、木製の床が見えるダンジョンの中に飛び込んでみた。
何時もの通りに頭の中にメッセージが表示される。
【パルキー二の森「喜び」のダンジョン に 入りました】
床に足をつける。
木の板が軋む音がした。
……ていうかここ、港町が近いのに、なんでそれっぽいものじゃないんだろうか?
ちょっと納得がいかない。
ま、そんなのどうでもいいんだけど。
今のところ、目の前には一本道しかない。
……楽しみのダンジョンと同じで、一本道に魔物が配置されてるタイプなのかな?
いや…それだったら、ここから見える位置にもう魔物がいたりするはず。
とりあえず前に進んでみた。
普通の人の速度で40秒ほど歩いていたら、ある2つのものを見つけることに成功した。
魔物を見つけたとかじゃないよ。
一つは、やっとなんか部屋っぽいのが視認できたってことで、もう一つはアレ、そう、隠し部屋。
俺という中学一年生の女子が普通に歩いて40秒かかったこの地点で、他の木と材質と色がにわかに違う壁が1組あったんだ。
怪しいよね、すごく怪しい。
これはもう、壁をけ破るしかないんじゃないんだろうか。蹴破ろう。
びゅんと、唸る前蹴り。
他の壁と比べてほのかに暗い色をした壁は、木っ端微塵に粉砕。
しまった、今、20倍の腕輪をつけたままだった…。
ま、いいよね別に。
壁の中から通路が出てきたから、迷うことなく進む。
体感している時間がそう長くもなくあっという間に一つの部屋兼行き止まりにたどり着いた。
しかし、めちゃくちゃ広い。それも長方形型に真っ直ぐに。それになんか、机っぽいのがあって、その上にナイフが刺さってるんですけど……。
頭の中にまたまたメッセージが浮かんでくる。
【パルキー二の森「喜び」のダンジョン の、シークレットステージに入りました。ここでは、ミッションが出されまさす。
そのミッションをクリアすると、宝箱が現れます。クリアした際の達成度によって、手に入る宝箱の中身が変化します】
これって、どこのダンジョンでも説明変わらないんだね。
さて、ミッションはなんなんだろうか。
ナイフを使ったなんかだとは思うけれど。
【手前のナイフを投げろ。飛んだ距離がながければ長いほど、あるいは、先の的に命中し、さらに真ん中に近く、そして投豪のスピードが早いほど、宝箱の中身は良くなる。それでは、ミッション開始】
なんだ、ナイフ投げか。
条件が妙に長いけれど…要は正確さと威力と速さを測定するんだね。
器用を試す試験なのかもしれない。
とりあえず俺はそこに刺さってるナイフを机から引っこ抜き、的があるらしいのでそこに向かって全力で投げた。
おそらく、はたから見たら高速で飛んで行ったナイフ。
しばらくしてカツーンというナイフが壁に刺さった音が響いた。
その数秒後、ナイフが刺さっていた机が引っ込み、何回も見た宝箱が出現する。
こんなのでもらえるんだ、楽だね。
フォレストタートル討伐は討伐だけあってそれなりに苦労したのに。
バランスとかちゃんと考えて欲しいよね!
それはさておき、宝箱を開けた。
中身はやっばりアムリタ。
なんだ、アムリタか。
どうせ沢山あるし、その場で一気飲みしてやった。




