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第四百二十六話 俺の部屋で美花と -2

 …とても…暖かくて…女性らしいというか、なんかいい匂いがする。

 体格も…3年ってこんなに違うんだね。

 13歳の美花と16歳の美花どっちも良いんだけど。


 

「えへ…好きっ」

「俺も大好きだよ」



 可愛いなぁ…本当に可愛いなぁ、もうっ。

 美花は顔を俺の身体に擦り付けるのにはもう満足したのか、顔を上げて俺の顔を見上げる。

 くりっくりの目をして、瞳の中に俺の顔を写らせてるよ。

 


「有夢、いくつか質問していい?」

「いいよ」



 美花は改まっておずおずと。



「あの…あのね、こっちの世界…地球でも、私、有夢の彼女でいいかな? …その…結婚するつもりでお付き合いしたいなって…」

「…勿論こっちからも。お願いします」

「えへ…うんっ! よろしくお願いします!」



 ぺこりと頭を下げる美花を、俺はゆったりと撫でる。

 


「んっ。あ、あともう2つ質問あるの」

「なに?」

「あのね」



 美花はおもむろに、俺のベッドの下に手を突っ込む。

 ……ち、ちょっとまって。

 そこには確か________



「これ、これなんだけどさ」



 俺が偶然手に入れた、大人の薄い本が取り出された。

 ……叶から、美花が俺の部屋に侵入してたのは知ってたけれど……これも見つけられてたか。



「有夢ってこういうの好きなの? 私にこういうことしたい? ……正直、私が持ってるあのオトナな漫画より内容が…その…あれだから、初めて見たときびっくりしたんだけど…」

「あー…」



 どうしよう、どう言い訳しよう。

 そう必死に考えいると、俺が機嫌を悪くしたと思ったのか、美花が慌ててそれをベッドの下にしまいなおす。



「ご…ごめんねっ。あの頃の私、おかしかったから…勝手に探っちゃって…本当にごめんなさい」

「ああ…うん、まあ。知っちゃったなら仕方ないし、もういいよ」

「えへ。ところで、有夢って私にああいうことしたいの?」



 返答に困る。

 いや…どうしよう。

 …と、とりあえずここはちょっとかっこいい事言って逃れよう。

 そういうのが見つかった時点でカッコ悪いだとかそういうのは無しで。



「いや、したくはないよ。それは漫画だからいいのさ。現実と二次元は違うでしょ?」

「あーー、えへへ、そっか。ならいいや。変なこと訊いてごめんね?」



 頬を赤らませながら俺に寄りかかってくる美花。

 可愛い。

 うん、可愛いんだけどこれからは気をつけなくちゃいけないね。

 ……パソコンのフォルダは調べられてないよな…大丈夫だよな….セーフだよね?



「ところで有夢、パソコンのフォルダの」

「……!?」



 やばい、やばいよ。

 そこまで見られてるの…!?

 ど、どどどどうしよっ…。

 これから警戒しなくちゃ…いや、これからじゃなくて今も…ぁぁぁあ。



「『思い出』ってフォルダなんだけど」

「え…ああ、それか」

「私との写真とかたくさんあったね」



 思い出のフォルダなら良かった。

 あれは美花や翔とのスマホで撮った思い出の写真がしまい込まれてるやつだから、見られても問題ない。



「うん。あれはスマホで撮った写真をまとめておいたんだよ」

「そっかぁ。有夢、私との思い出の写真、たくさん取っておいてくれてるんだね。嬉しい」



 セーフ、セーフ。

 だけどこれからはマジで気をつけよう。



「うん、有夢への意地悪はここまででいいかな。ね、有夢」



 い、意地悪だったんだ。

 なんてシャレにならない意地悪をするんだ。

 そんな俺の思いに勘付いたのか、美花はウインクしながら下をぺろりと出す。

 まあ、可愛いから許すか。 



「こんど…デートしよ? 向こうの世界じゃああまり面白いデートスポット無いからさ」

「そうだねえ」



 確かにあの世界はデートスポットが少ない。

 お花畑だって正規のデートスポットなんかじゃなかったし。



「どこ行く?」

「そうね、遊園地行こうよ」

「遊園地かぁ…いいね。でもいつ行く? 美花がトラックに轢かれた日を過ぎてからの方がいいと思うんだけど」



 その日を過ぎたら、もう安心じゃないかと俺は思う。

 そもそも今後、歩きスマホは絶対にしないから事故ったりしないかもしれないけど。



「じゃあ…こっちの世界で3週間後?」

「そうしよっか」

「むぅぅ、それまでどうしよ」



 腕を組んで悩む美花。

 そんなこと。



「部屋でこうしていればいいんじゃないかな」

 


 美花の手を握る。

 美花は目を丸くして、その握られた手を見た。



「い…いいの? ゲームしなくていいの?」

「いや…ゲームもするけど、美花との時間を一番大事にするよ。これからずっと一緒で離れることなんてないけれど、大事にするから」



 そんなふうに言ってみる。

 美花の頬が、先ほどに増して赤くなる。



「そ…そうなんだっ。えへへ」

「うん」



 ゲームはもう…どうでもいい。

 それは嘘だけど、美花の方が比べるまでもなく大切だから。


 ……いい雰囲気だったから、俺は美花にキスをした。



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