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第四百十八話 地球への帰還

「帰れたぁ…!」



 そのあと、ミカとサクラちゃんが一緒に試した。

 セーブ機能によって、ミカ達が移動したから、強制的にもう一度地球に送られたりしたけれど。



「よし…! どうやら誰も問題なく帰れるみたいだね。……どうする? このまま一旦、1日だけ帰って母さんや父さんと過ごそうか」



 カナタのその提案に俺は頷く。



「もう完全に行き来可能だからね! そうしよう。えっと…誰かが移動するだけで、みんな移動するんだよね?」

「うん。セーブ機能をオンにしてたらね。オフにしてる人は分裂した魂とやらがそのまま活動を続けてくれるらしいけど」



 ちょっと理解力が足りない俺じゃあ難しかったけど、カナタの説明でわかったかな?

 要するに、セーブ機能をオンにしてる状態だと、他のセーブ機能をオンにしてる人もろとも強制的に送られ。

 オフにしてると、セーブ機能をオンにしてる人が向こうの世界に行っても強制的に送られることはなく、かわりに分裂した魂が動いてくれる…とのこと。

 それにセーブ機能のセーブ対象は1人じゃなくて、一度でもセーブ機能を使用した人全員が、誰かの最新のセーブ機能が反映されるんだって。


 ………?

 お兄ちゃん…やっぱりよくわかんないや。えへへ~。



「みんな…オンだったよね?」



 カナタが呼びかけてくる。

 よくわかんないけど、オンだったことは確かだから、頷く。他3人も同じみたい。



「よし…じゃあ行くよ!」

「わふ、いってらっしゃい!」

「ああ、行ってくるぜ!」



 リルちゃんの元気ないってらっしゃいの声を聞きながら、俺らは瞼を閉じた。



________________

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 目を開く。

 身体は残念ながら男になっていた。

 ……ん? 残念ながら?

 ちょっとアリムでいた期間が長すぎて、そんなこと思っちゃってるね、これは良くないかもしれない。

 元々女装癖があったから特に変わんないかも知んないけど。



「あ…そうだ!」



 俺はこの部屋についている窓の一つに急いで駆け、ガラリと開けた。

 初秋の少し肌寒い風が、夏仕様の寝間着姿の俺の肌を凍えらせる。



「有夢っ!」



 お向かいから声がした。

 よく知ってる声。

 何年も聴き続けた声。

 俺とおんなじことを考えたであろう、愛しい幼馴染…否、婚約者の声。

 


「美花っ!」



 黒くて長くて綺麗な髪、くりっくりの目に黒い瞳。

 何人もの人を、異性同性問わず、視認させるだけで骨抜きにしてきた美の塊。でも俺の嫁。

 16歳の曲木美花が、窓からこちらに向かって身を乗り出していた。

 うーん、胸も大きくなって(戻って)るみたいだし……寝間着姿がなんかエろ……なんでもないです。

 そんなこと口走ったら、美花はその気になるだろう。

 自重しなければ。



「桜っ!」

「叶っ!」



 ガラリガラリと、また窓が開けられた。

 この隣の部屋の窓から叶が、美花の隣の部屋から桜ちゃんが、俺たちと同じように窓から身を乗り出している。



「よかった…全員、ちゃんとこれたんだね」

「まって、まだ翔を確認してない!」



 俺はこの部屋のどこか……ああ、あった。

 俺の死んだ原因の一つとも言える、スマートフォンを手に持ち、例の通話アプリを開く。

 翔に連絡をした。



≪こちらは全員、無事に帰宅成功! そっちはどう?≫



 そういえばあいつのスマートフォンって今、アナズムにあるんじゃ……?

 でもそんなことは杞憂で、すぐに返信が来た。



≪俺も無事だぜ! 今から母ちゃんと親父と話をしてみようと思う≫



 なるほど。

 俺は一旦、スマートフォンを置いて、3人の方を向き直した。



「翔もちゃんと来れてるって!」

「そう…なら安心ね」



 ホッとした顔をみせる美花。

 …やっぱ美花ってかわいいなー。



「そうだね。じゃあ、とりあえず……母さんと父さんに挨拶してみようか。そっちもね。もしかしたら、3組の親御さんを交えて話しをする…なんて事態になったりしてね? ありえなくはないと思うから、念のため」



 それだけ言い残すと、叶は窓から顔を引っ込めた。



「じゃあ…私も!」



 桜ちゃんが続けて頭を引っ込める。



「あっ。じゃあね有夢! 私も叶君の言う通りにしてみる! あとでね」



 美花までも顔を引っ込め、窓を閉める。

 ただ鍵はかけないみたい。

 俺も仕方なく顔を引っ込めて窓を閉めた。


 カレンダーをみる。

 今日は俺が死んだであろう日の当日だ。

 なんだか複雑な気持ち。

 死んだと思ったら、たくさんの新しいもの引っさげて戻ってきたんだもの。


 隣からゴソゴソと音が聞こえる。

 おっと…俺も準備しなきゃ。

 とりあえず寝間着を脱ぎ、制服にいっそいで着替える俺。

 そして、ドアを開けた。

 会うために…母さんと父さんに、会うために!

 

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