第四百十四話 説明の後
「ふむ……だいたいわかったな」
国王様が満足そうに言った。
地球のことや俺らのことへの質問をいくつも答え続けていたんだ。
気づけば大臣さんが色々メモしてるし。
「ならば賢者ら…いや、カナタとサクラとショー、そしてリル」
名前を呼ばれたカナタ達は国王様に注目する。
「メフィラド王国に永住するもよし、エグドラシル神樹国に帰ると言うのならそれも良いだろう。とにかく、この国にいる間はのんびりするが良い。無論、アリムとミカもな!」
「ありがとうございます…!」
カナタが嬉しそうに頭を下げた。
サクラちゃん達もそれに続く。
「ははは! そんなに畏まらなくてもいい。お主らは賢者なんだから、もう少し堂々としていても良いのだぞ? ああ、それとリル」
「わふ!?」
名指しで呼ばれたリルちゃんは、耳をピンと立てて目を見開く。
国王様はその様子を可笑しそうに笑って見ながら、こう続けた。
「エグドラシル神樹国から来た獣人ということは、やはり、そういう扱いを受けていたのか?」
「……わ、わふ! そういう扱いを受ける前に、ショーに拾われましたから…その…大丈夫です!」
エグドラシル神樹国は奴隷制があるもんね。
国王様はそのことについて言いたいんだろう。
「そうか、それは幸運だったのだろう。メフィラド王国では奴隷は一人もおらぬ。国の目が届かなかった、裏の奴隷取引ですら、この国のSSSランカーであるラストマン率いる冒険者らが成敗したからな。獣人や魔族だからと言って不当な扱いを受けたりはしない。安心するといいぞ」
「わ……わふ! はいっ!」
リルちゃんにとっては…まあ、リルちゃんだけでなく、この世界の人全員にとってこの国は暮らしやすいと思う。
ショーがホッとした顔をした。
カナタも、口論的な意味で大人に反抗してるあいつにしては珍しく、なんの不満もないみたい。
「……して、アリムよ。今回の礼の件なんだが」
話題を変えてきた。
ああ、その話ね。
「やっぱり良いですよ。弟達を良くしてもらったりして…。十分」
「いやいや、魔神を二度も滅したという報酬が、その程度でいいわけなかろう。たしかに、もう地位も名誉も金も物もスキルカードも要らぬだろうが…」
そうなんだよね。
だけど、最近、貰えそうなものを思い付いたんだ。
それになにも要らないなんて本当は建前だったりする。
俺は…今、これが喉から手が出るほどとはいかないけど、欲しいんだ。
「えっと……なら、良いですか? 言っても」
「ああ」
「その前に訊きたいんですが、国ってダンジョンを管理してたりしますよね? クリアしてない管理しているダンジョンはこの国は何個あるんですか?」
国王様はその問いに、髭を撫でながら答えてくれた。
「ふむ…11個ほどだな」
「そ…そんなに!?」
「ああ。これでもいくつかクリアしたりしてるがな。一番多い時期は15個は管理していたか…?」
ひええ!?
そんなに管理してたんだ…!
要するに、俺はダンジョンが欲しいんだよ。
転生ショップ、そしてリルちゃんも向こうの世界に行けるという事柄があるからね、是非とも。
ダンジョンを探し出すアイテムを作ってもいいんだけど、国で管理されてるのをもらった方が、俺たちも管理しやすいと思って。
「えっと…その…」
「なんだ、ダンジョンの権利を譲って欲しいのか? それならそうだな…全て…は少し困る。すまないが8個ほどでどうだ?」
「えっ……そ、そんなにいいです! 5個…5個で良いんですよ! 5個で十分なんです!」
「……そうか?」
そう、5個で十分。
普段から俺が使う用とか、保存用とか。
それとカルアちゃん達の鍛錬、それに使う用とか…!
「なら5個でいいか? 今度、与えるダンジョンの詳細や場所を教えよう。……それだけでいいのか?」
「あ…は、はい!」
やった!
これでもう俺が手に入れられてないものはない…と言っても過言じゃないだろう。
「ふむ…話はこれくらいか。すまないな、皆、長々と話をさせてしまって」
「い…いえ!」
「こちらこそ、ありがとうございます、本当に色々と…!」
カナタやサクラちゃんが御礼を言う。
すでに座ってたみんなは立ち初めていた。
「うむ、ではこれでお開きだ! ところで…どうするんだ、アリムとミカよ。今日はうちに泊まって行くか? なんならサクラとリルも良いぞ。無論、ショーとカナタもな」
そんな友達に言うように言われた、『うちに泊まるか』と言う一言に、リルちゃんとサクラちゃん、そしてショーとカナタは驚いた。
「あはは…んーと、どうする?」
「今日は泊まってかない?」
俺とミカはそんな相談をする。
カルアちゃんの方を見ると、ものすごく嬉しそうな顔をしていた。




