第四百十一話 アリムの誕生日 -2
「うむ」
今、俺は膝枕をしてもらっている。
浦島太郎電鉄っていう、人生ゲームみたいなゲームで、3時間どころか4時間半は2人で遊んだ後、ミカは俺の身体を、ミカの誕生日に俺がやったみたいのと同様に頑張ってマッサージしてくれたんだ。
そして、今はマッサージが終わって、せっかくだからミカに膝枕してもらってる。
ミカは今、俺にサービスするだとかいう理由で生脚で、俺は下半身にブカブカなパンツ履いてるだけ。
「どう?」
「うん、最高」
「えへへ…そう、良かった!」
ミカが俺の頭を撫でる。
普通の俺なら、膝枕はともかく、こんなお互いに露出の多い格好でこういう事をするのは恥ずかしかっただろう。
ふと、時計を見る。
「あ、もう30分もしてもらってた。痺れてない?」
俺はミカの膝から頭をあげる。
「ううん、だいじょぶ! …あと1時間あるんだけど…。うーんと、これの時間は…私の誕生日の時、有夢が私のお願いを聞いてくれたことあったでしょ? その逆やろ。私が有夢のお願い聞くよ」
「うーん…ちょっと考えるね」
なんだろ。
俺は何してほしい?
ミカは頼めば普通の日でもなんかやってくれそうだからなぁ。こういう時は特別なのがいいな。
よし。
「じゃあ、あと1時間、また一緒にゲームしよっか」
「それでいいの?」
「うん」
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「……………くっ」
「あはは、有夢、誕生日だからって勝たせてあげたりしないよ!」
格闘ゲームをやった。
その結果、ほぼ全敗した。
「…と、時間ね。有夢、お夕飯食べるから、私達の部屋に移動しよ?」
くそ…勝ち逃げされたか。
仕方がない、次こそ俺が勝たせてもらおう。
とりあえず、ミカの夕飯は楽しみだし、名残惜しいけど移動することにした。
部屋に入るなり、朝につけてたのと同じエプロンをミカは着ける。
「じゃあ…今日はちょっと特別なもの作るから」
「んー、期待してる!」
ご飯はそれから40分後にできた。
出て来た料理はハンバーグなんだけれど、いつもとは違う。
「えへへ…。今日はね、スキルなしで料理したの。…その、めしあがれ?」
「うん、いただきます」
スキルを使ってしまえば料理はあっという間に完成するのに、ミカったらわざわざこんなこと。
俺はいいお嫁さんをもらったんだなと、再確認する。
「ミカ、美味しいよ! あーん、してほしい」
「うん、あーん」
朝食も、ゲームをやってる間にたべた昼食も、夕食もあーんって食べさせてもらっちゃった。
今は食べさせてもらって、口の中のプチトマトがなくなったと同時に、俺はご食事中だけれどミカにキスをした。
さすがに今はディープキスではないけれど。
「えへ…今日の有夢はキス魔だねぇ」
「ふふ、そうかな」
まあ、何回も何回もキスしたからね。
俺の誕生日だし、いいよね。
「さて、ごちそうさま! ……ケーキはお風呂の後にしよう」
「そうだね。ところで今日はすごい流星群が来るらしいけど。一緒に見ない? お風呂入りながら」
「えっ!?」
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「こ…こんなところがあったなんて」
「いや、実は昨日用意したんだ」
俺とミカはこの屋敷の屋上に昨日作った夜空が見渡せるお風呂に入っている。
まだ、流星群は流れてないけれど。
「えへ…それにしても有夢と裸でお外でお風呂入るって…その、恥ずかしいね」
「まあ、周りには絶対に見られないようにしてるから大丈夫だよ」
それにさすがにタオル巻いてもらってるしね。
……今、お互い素っ裸だと、このミサンガのアイテムの効果のせいで、気持ちを抑えられなくなっちゃうから。
俺の視界に、キラリとしたものが唐突にうつりこんだ。
「あ、ほら、見て! 来たよ!」
「わぁ……!」
俺が空を指すと、ミカはそっちを見る。
言葉通り、ものすごい流星群。
一つ一つは地球の流れ星となんら変わったとこはないけれど、空が星の流れる線で埋め尽くされててすごく幻想的だね。
この数秒に何個の星が流れてるんだろう?
とりあえず、願い事を。
ミカも同じようなこと考えてるみたいで、口の前で手を組み、何かを口ずさんでるみたいだった。
「なにお願いしたの?」
「えへへ、ないしょー」
屈託のない笑顔で笑うミカは本当に可愛い。
いや、どんなミカも可愛いけれど。
「じゃあ、俺もないしょね」
「うん、それがいいよ。それにしてもすごく綺麗ね! 街の人が騒ぐわけだよ」
「ミカの方が綺麗だよ」
「えー、そんなこと言ってー」
とは言ったものの、ミカはすごく嬉しそうだ。
ソッと、俺はミカの肩に腕を回す。
「ん? えへへ。あがったらケーキたべようね」
「うん」
しばらくして俺らはお風呂を出る。
部屋に戻り、ミカはケーキを用意してくれた。
チョコレートケーキだ。
イチゴとトリュフチョコ、そしてチョコクリームがたくさん乗ったケーキ。
「えへへ、これはスキル使っちゃったんだけど…。とりあえず、有夢、お誕生日おめでとう!!」
「ありがとう!」
俺は間髪入れずにミカにキスをした。
唇を離すと、ミカは嬉しそうにニヤケていた。
「えへー。なんだか私が誕生日の気分」
「そう? まあいいや。食べよ」
チョコレートケーキは美味しかった。
どのくらい美味しかったかっていうと、ただ俺が普通にスキルの力で作るケーキより、愛が満タンまで詰まってる分、とても。
「いやー、美味しかった! ふふふ、愛が詰まってたね」
「う…うん。私、有夢大好きだから…! その、またプレゼントがあるからね、そのね」
なぜか顔を赤らめながらミカはそう言った。
俺がミカの誕生日の日に、寝る前にプレゼントをしたのと同じことをしたいんだろうけど。
あれかな、手紙とかくれるのかな?
だから顔を赤くして…かわいい。
「あの…目を瞑って後ろ向いてて欲しいの」
「ん、わかった」
何をプレゼントする気なんだろう。
楽しみで仕方がない。
10秒のち、ミカから『いいよ』と言われたのでその声がした方を振り向く。
そこにはミカはおらず、体育座りした女の子がすっぽり入るくらいの大きさのプレゼントボックスが。
「これがプレゼントかな?」
誰も答えない。
仕方ないから、そのおおきなプレゼントボックスを俺はゆっくりと開けた。
「わっ!」
「おわっ」
だいたい蓋の緩みがなくなってきた頃、箱の中から勢いよく立ち上がってきたのは、頭に赤いリボンを着けたミカ。
ウワー、ハコのナカからミカがでてきたー。
おどろいたなー。
「おどろいた? おどろいた?」
「ああ…びっくりした」
「えへー、私がプレゼントだよ! どうぞ!」
そう言いながらミカは俺に向かって手を広げた。
可愛い。
………ふむ。
プレゼントだというのなら、ありがたく貰っておこう。
とてもいいものを貰った。
俺はミカをハコの中から抱き上げ、そのままお姫様抱っこすると、ベッドまで直行しようとした。
今から俺が何をしようとしてるか勘付いたミカは。
「わ、わ、おろして! ごめん、一旦おろして! まだ渡したいものあるの」
「あ、わかった」
ちょっとお預けをくらった気分だけれど、俺はミカを降ろす。
「ふー。…はいこれ!」
渡してきたのは、推定100本の赤い薔薇。
その薔薇の花束のあいだには、手紙が挟まれていた。
「えへへ、なんか有夢の真似になっちゃうけど…。薔薇って愛を伝えるのにとても良いじゃない? …そ、それと手紙も読んでね」
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「ちょっと、ミカ、おいで」
「ん、なに? えへへ…読み終わった?」
目の前にいるミカを、俺はわざわざ呼びつける。
ミカは一歩前に出て、ちょうど抱きつきやすい場所に立ってくれた。
________断言する。
ミカは俺の嫁。
俺はミカをただただ抱きしめた。
うーむ、やり始めたのが俺だとわかっていても、手紙っていうのはこんなに嬉しいものなんだね。
「ん…大好き」
「俺もだよ。愛してる」
「ね、有夢。叶君から私の話…聞いたんでしょ? ね、私のこと危ない人だとか思わない?」
抱きしめられたまま不安げな顔で俺を見つめるミカを、俺はより強く抱きしめる。
「ううん。多分、俺も同じだ。ミカのことを狂おしいほど愛してる。……実はね、俺からも渡したいものがあるんだ」
「え…なに?」
ミカを離し、俺は数日前からずっと用意してたものを取り出した。
それは赤い一本の細い糸。
「なにこれ?」
「うん、鑑定してみなよ」
この赤い糸は神具級。
一度小指につけてしまえば、外すこと専用の神具級のアイテムを使わない限り絶対に外せない。
この糸の効果は、自分の小指につけた後、思う相手の小指につけて発動する。
この赤い糸はつけた後、目に見えなくなって、触れなくなる。ただ、心を繋げるんだ。
これをつけた者同士は互いに離れられなくなるし、離されるような状況にあったとしても、絶対に離れないように運命が動く。そんな代物。
さらに、相手のことをずっと魅力的に思えるようなのとか、そういう小さい効果もたくさん付いてるんだ。
いわば、これをつけてしまえばお互いに依存し続けるというか。
束縛し続けるというか。
意味合いだけだったらとても危ない代物だけど。
ミカはつけて________
「えへ、こうかな?」
ああ、もうつけてくれていた。
「いいの? これつけたら、自由的なものとかなくなるよ?」
「えー、ずっと愛し続けるみたいなアイテムでしょ? もー、私は有夢に依存してると思ってたけど、有夢も私が居ないとダメなのね! えへへ、ほら、早くつけて」
「うん」
俺はその赤い糸を小指につける。
赤い糸は赤く発光すると、見えなくなってしまった。
「これで…誕生日に渡したブレスレットと合わせて、俺とミカは絶対に離れられなくなった」
「………幸せ」
そう言いながら、ミカは俺に抱きつく。
俺はミサンガを外した。
「ミサンガ…外すの?」
「うん。今日はもう良いからね」
ミサンガをはずした瞬間、気持ちが変わる。
……うわー。今からするんだ。
そう思うと、ちょっとはずかしくなるけれど…もう2回したし。ミサンガをつけてたあいだに度胸はついた。
「よし。じゃあ」
俺はミカをベッドの上に押し倒した。




