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第四百八話 兄(姉)と弟

「結局添い寝じゃないのかー」

「当たり前でしょ…」



 呆れたような声でそう言うカナタ。

 俺の部屋にベッドを二つ置いて、できる限り近づけて、話し合ってる感じだよ。



「カナタ。今朝も言ったけど、しばらくの間、迷惑かけてごめんだったね。まさか上から物が落ちてきて死ぬとは思わなかったよ」

「それが普通だよ。まあ、兄ちゃんはなんも悪くないから謝る必要はないよ」



 優しい弟だ。

 


「ほんと、カナタだけじゃなくてお母さんにもお父さんにもすごく迷惑かけたね」

「うん……。まあ、俺はそれより兄ちゃんがこっちで女として、アイドルみたいなことやってることをお母さん達にどう説明しようか悩んでるんだけどさ」



 うっ…痛いところを突いてくる。

 


「せ…説明しなくていいんじゃないかな?」

「後ろめたい気持ちがあるならやめれば?」

「やだよ、楽しいもん」



 チヤホヤされるの楽しいからね、仕方ないね。

 カナタは「ハァ」と溜息をついてから話を続けてきた。



「なんでこうなったのやら」

「まず、ミカ始め、みんなして俺に女装を強要したのがいけなかったね。俺が一番最初に女装した…いや、させられたのは3歳の時らしい」

「そっか。俺も反抗してなかったら、こんな風になってたんだ」



 むう? 

 なんか毒のある言い方。

 


「なにさ、言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」

「いやぁ。俺はそんな趣味を持たなくて良かったなーって」

「なんだと厨二病」

「その通りでしょ? 女装癖」



 酷い弟だ。

 お兄ちゃんに対してなんて言い草なんだっ! 女装癖だなんて…っ! まあ何にも間違ってないから反論できないんだけど。



「でもカナタ、お前のその厨二病に対してサクラちゃんはなんて言ってるの?」

「んー? この世界の魔物の素材で作った眼帯貰ったよ。だから受け入れてくれてるとおもう」



 そっか、こいつの厨二病はすごいからな。

 今は中学二年生だからそう不自然でもないけど、カナタに厨二病が発症したのは幼稚園児の時だから。



「そっか、良かったね。そんな理解のあるサクラちゃんと付き合えて」

「うん? うん。まさか告白がOKされるって思わなかったよ。ずっと俺の片思いだと思ってたから」



 ずっと片思い…ねえ。 

 こう言っちゃうとカナタは傷つくだろうし、正直には言わないけど…ちょっとお兄ちゃん的にはカナタはストーカーじみてると思うんだ。

 ほんと、ものすごく冷静に考えたらの話だけど。


 そう周囲からは思われてないし、サクラちゃんはそれを嬉しがってる面があるしで問題視されないだけで。

 何度考えても、自分のポエム帳に好きな人の写真を挟んでるって…少し危ない気がする。



「それがびっくり、両思いだったと」

「兄ちゃん達もおんなじようなものでしょう?」

「まあね」



 結局俺とカナタは似てる。

 顔だけじゃないんだ、似てるのは。



「それでさ、お前、サクラちゃんに抱きつかれながら普段寝てるんだって? そこんとこどうなの?」

「どうなのって言われても……。恥ずかしいとしか言いようがないさ。寝てる間に瞬間移動で逃げたりしてた。付き合う前まではね」



 カナタがサクラちゃんから逃げる…!?

 そんなこともあるんだね。



「でも付き合う前だったとしても、好きな人に抱きつかれたら嬉しくない? 俺は嬉しかった」

「まあ、嬉しいんだけど。違うんだよ…もっと別の要因があるんだよ。美花姉にも当てはまるし、兄ちゃんならその要因がわかるでしょ? 俺が好きなのは桜の身体じゃなくて桜なんだから」



 お、今こいつドヤ顔した気がする。

 絶対、自分でいいこと言ったと思ってるぞ。

 


「そこは全部好きとか言うべきじゃないかな?」

「あー、そうだね。そう、全部好き」



 俺のその言葉をすんなり受け入れるあたり、きっとドヤ顔してなかったんじゃないかと思いなおす。



「で? そのうち結婚するの?」

「ま…まだ早い…。けど、いつかそうなればいいね」

「まあ、そうなるでしょ」

「いや、わかんないよ。……ほら、兄ちゃん達みたいな例もあるし」



 カナタは遠い目をしてそう言った。

 俺が死んだのはやっぱり…周りに与えた影響が大きかったのかなーって思うと、申し訳なくもあり…でも、嬉しくもある。複雑な気持ち。

 …そうだ、ミカって俺のいない間、どうしてたんだろ。

 すごく悲しんでくれてたって本人から聞いたけれど、どのくらいだったか知りたい。

 その程度によって、ミカにべたつこうと思う。

 


「カナタ。一つ訊きたいことあるんだけど」

「なに、兄ちゃん」

「ミカって、俺のいない間どうしてた?」



 カナタは一瞬驚いたような表情をあらわすと、すぐに悲しそうな顔になった。

 なんだよ、一体なにがあったって言うんだ。



「兄ちゃん、もし、もしだよ? 俺の話を訊いて、美花姉嫌いになったりしない?」

「お、おい、なにがあったのさ!? どっちにしろ婚約した仲だからね! 何があってもミカとは離れないさ」



 そんな当たり前のこと、カナタならわかるよね。

 カナタは俺の意思を察してくれたのか、コクリと頷くと、ゆっくりと口を開いた。



「だろうね、なら話すよ。お兄ちゃんが死んでからの2週間、美花姉は________________________」


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