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第三百九十三話 こっちに来てから、それぞれ

「みんな、食べ終わったね。……実は全員の味噌汁の中に良く頭が働くようになるお薬を入れておいたんだ。……あ、そっちの意味じゃないよ? 単純に目覚めが早くなるというか。とにかく、今から結構大事な話をし合おうと思ってるってさっき言ったよね」



 叶と翔が頷く。



「…よし、じゃあボク達の_______」



 どうやってここまで成り上がってきたか、それを言おうとした時に、リルちゃんの存在に気がついた。

 これはいけない。



「と、その前に。ごめんリルちゃん! ちょっと席を外してもらえないかな? こっちの世界の人に知られると困ることが結構あるんだ…。あとで、教えられることは教えるからっ」

「わふ、わ、わかった。じゃあ」


 

 手を合わせて頼み込む。

 リルちゃんは言った通りに、席を外してくれた。

 よしよし。これで元の口調で話せる。



「……と。こっから元の口調で話すよ?」

「ああ」



 全員、黙っている。

 そりゃあ、なかなか大事な話だろうからさ。



「どうやら…一番最初にこの世界に来たのは俺みたいだね? じゃあ、話そう_______」



______________

_______

___




 1時間後。

 俺とミカで手分けして、俺ら二人のこの世界に来てからの話をした。あくまで大まかに…だけど。

 流石にいつから頻繁にキスをするようになっただのの話はしてないし。

 それとまだ、地蔵型転送装置(仮)の話もしてない。



「えーっと、兄ちゃんをこの世界では女の子として…姉ちゃんとして扱わなきゃいけない理由とか、知りたかったことは大体わかった」

「それにしても、二人とも偶然こっちの世界に来たなんて……それって本当に偶然なのかな? 奇跡に近いよね」



 叶と桜ちゃんがそう言ってくれる。

 なお、翔はこれまでになくニヤニヤしていた。



「なに、そんなにニヤニヤして」

「いや? …お前らもう結婚しろよって、マジで」

「うん、だからあと数年したら結婚するよ、ねぇ?」

「う…うん」



 あれ、ミカったら普段はノリノリのくせに改めてこうやってここまでに至る経緯をなぞるの恥ずかしいのかな?

 顔を赤らめて恥ずかしがっている、可愛い。



「しかし…本当に良かったな」

「うん、ですよね」



 叶と翔がミカをちらりと見てから、顔を見合わせた。

 何か俺が知らない間にミカに関する何かがあったのかな? 

 そういえば、めちゃくちゃ悲しがってたとかっていう話をミカから前に聞いたよね。

 どんな様子だったかは詳しくは知らないけど、それを見ていた人達にとっては、ミカが俺とこっちの世界で付き合ってるというのは、とても喜ばしいことなんだろうか?

 ……ミカをこれからも大事にしよう。



「んで、リルとかこの世界の人に説明しなきゃなんなくなった時は、なんて言うんだ?」



 こちらに向き直し、そう訊いてくる翔。

 俺はすぐに答える。



「向こうでの俺らの関係をすべて、俺が女であったってことにして簡潔に話すつもりでいるよ。要所で質問されたら、その都度、俺のこちらの扱いに合わせて答えるつもり」

「まあ、それが一番か」



 だってほら、例えばカルアちゃん達とか。

 俺が前は男だったなんて、一緒に寝たりお風呂に入ったりしてる手前、話すわけにはいかないもの。



「こんな感じかな。俺の能力もわかってもらえたでしょ? あとは2組とも教えてちょうだい」

「うん」

「わかったぜ」



 まずは翔から、こっちの世界に来てからの話をし始めた。



______________

_______

____



 また1時間後。

 3人の話を訊いた。

 リルちゃんと翔がどうやって知り合ったか、どうして付き合うことになったかとかを主に知れたよ。やっぱりと言うか、翔は翔だ。昔から正義の塊のような人間だっただけある。実はそこに惚れてる女の子も、日本では結構多かったらしいんだけど………ま、それは今はいいか。


 叶と桜ちゃんは、叶が桜ちゃんを守りながら過ごしてたって印象かな。これも昔からだし。

 とにかく、叶が桜ちゃんとちゃんと付き合うことになって良かったよ。



「叶君…ありがとね! 桜を大事にしてあげてね!」

「うん。そのつもり」

「桜、叶君ならお姉ちゃんは大手を振るって大賛成だから、これからもお付き合いするように。果てには私達みたいに結婚なんかも…」

「えっ…ええっ!? ま、まだ早いよ…」

 

 

 ミカは叶が桜ちゃんの目を治そうと尽力したことに感動して、椅子から立ち上がって、叶と握手してそんなことを言い出した。

 やっぱりミカは妹思いだよね。

 叶も、そのつもり、だなんてさも当たり前かのように言ってるけど本心は照れてることをお兄ちゃんは知っている。

 それより問題は翔だ。

 俺は翔の方を向き、問いかける。



「それで、翔はどうするの? リルちゃんとどうしたいの?」

「俺は……俺も、リルと一緒にいたい。だが…帰る方法があるんだろ?」

「うん、その説明は後でリルちゃんに俺らのことを教えた後にするよ。…たっぷり考えなきゃね」

「ああ……」



 翔は思いつめたような表情をした。

 相当悩んでるようだ。

 力になってあげたいけど、俺が今のところできるのは、ただ、送り返すことだけ。



「じゃあ、リルちゃんを呼んで、この話はおしまいにしようか」



 その提案に誰も反対する人はいなかったから、メッセージでリルちゃんを呼んだ。

 すぐにリルちゃんは食堂に戻ってくる。

 2時間も暇にさせちゃったのは謝らなきゃ。



 

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