第三百八十八話 夕飯
「じゃあ…翔とリルちゃんがこっちの部屋で、叶と桜ちゃんがこっちの部屋ね」
俺はカップル2組に部屋を割り当てた。
その二部屋は、俺とミカの部屋から、10歩は歩けば着く距離にある。
まあ、いわゆる客間で、カルアちゃんやローズ達もこの部屋に泊まったりしてたんだ。
「なんか要望とかない?」
「ねぇねぇ、アリム、面白いから、この二つの部屋のベッド、ダブルベットにしようよ」
な、なんという提案をするんだ、ミカは。
「はぁ…。ねえ、みんな。ダブルベット、まだ恥ずかしいよね?」
「んなことはねー。俺らが泊まっていた部屋は、ダブルベッドだったしな。ちなみに、そこの二人の部屋と俺らの部屋はおんなじ間取り、備え付けの家具も同じだったんだぜ?」
「ち、ちょっ……翔さん……っ!!」
翔がニヤニヤしながら、叶と桜を弄るようにそう言った。リルちゃんも、翔の方をちょっと驚いた表情で見てる。
ミカは満足そうだ。
「じゃあ、二部屋ともダブルベットね」
俺はパチリと、指を鳴らす。
これで家具の変更は終わったんだ。ふふん。
なんて、ただ単にダークマターを部屋の中で開いてベット作っただけだけど。
「えっ…ええ…」
「…あれ、叶君は桜と寝るの嫌なの?」
「えっ…ううん、そういうわけじゃ…」
「じゃあいいじゃない。ね、桜」
「……ううぁぁ…う、うん……」
ミカはとにかく強引に推し進めた。
これじゃあまるで、一緒に寝ることを強制してるみたいじゃないか。いいんだけど、別に。
「……じゃあ、これからお夕飯の準備するからさ、みんなそれぞれ準備しててよ。10分くらいで作り終えたら呼ぶからさ」
俺はそう言ってから台所へ向う。
ふふ、ゴールドローズクィーンドラゴンのステーキを食べさせてあげよう、そう思って。
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「できたよ! おいでね!」
豪華な食事ができたから、それぞれの部屋の前で5人を直接呼んだ。俺の声に反応して出てきたみんなを、大型な食堂へと誘いながら移動する。
「ジャジャーン!」
「おおっ!?」
その声は誰のあげたものか。
まあ、翔なんだけど。
俺のこの作ったご飯はどうだろうか、美味しそうかな?
リルちゃんなんて狼族だから、お肉は多分、好きでしょう。
「えーっとですね、今日のメインは、ゴールドローズクィーンドラゴンのステーキでーす」
「ドラゴンの成体のステーキ?」
「そうそう、ドラゴンだよ。SSランク亜種のね」
叶と桜ちゃんが驚いてる。
まあ仕方ない、ドラゴン肉は普通は王様達でも特別な日にしか食べないような、超高級肉。
それの、SSランク亜種の肉。
お値段なんて考えたことはない。
「冷めないけど、早く食べてね!」
「お、おう」
ミカはすでに俺が座る予定の隣の席に座ってたけど、他の四人も座りだした。
この机は丸型だから、意中の人と隣になりやすいだろう。だから、並び的には俺、ミカ、桜ちゃん、叶、リルちゃん、翔となっている。
「あ、早く食べてね、なんて言ったけど、先に連絡しとくよ」
そう言って、みんなをこちらに注目させた。
「積もる話とか、小難しい話とか、全部、ぜーんぶ明日にしようね! 今日はもう遅いから、部屋にあるお風呂に入ったら寝ること! 帰る方法とかも探さなくても、俺が知ってるから、変な心配しなくていいし………」
うーん、本当は帰って欲しくなかったりするけど、叶と桜ちゃんが帰らないと、あの両家は子供が一人もいなくなるし、翔は一人っ子だし。
帰れると聞いて、ほとんどみんな顔色が変わったけど、今は本当に気にしないことにする。
「連絡は以上だよ! 食べて!」
「あ、ああ…じゃあ、いただきます」
「わふ、いただきます」
「「いただきます」」
戸惑いつつも、みんな、ステーキに手をつけてくれる。
ちなみに、ミカはいただきますと小声で言って、先に食べてたみたい。
とても幸せそうな顔をしてくれて、俺も嬉しい。
さて、他の人はどうだろう。
…ステーキをひとかけら、切り終わって口に運んだ翔。
「うまっ………………!? は、なんだこれ。え、なんなんだこれは」
美味しすぎるかな? えへへ。
言葉が言葉になってない。
「おいひい……………」
「ええ…………………」
この二人もそうだ。
絶句するしかないのかな?
なんて、のんきに思ってたんだけど、一人、その感動の仕方に尋常じゃない娘が居た。
「_______、_______! _______、_______……_______!」
何を喋ってるか、全くわからないリルちゃん。
特に目なんて、涙目になっている。
やっぱり肉好きだったか、そうかそうか。
なんてのんきに考えながら食べてたら、いつの間にか食事タイムは終わって居て、みんな、俺に、なにか奇跡的なものでも見るような目を向けながら、『ごちそうさま』と言葉を残して、各々の部屋へ戻って行った。
俺とミカもそうする。
みんないなくなってから、こっそり、食後のキスをしたのは内緒。




