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第三百八十五話 都合

 俺は、メッセージを開いた。



【……終わりましたよ、国王様! 黒魔神スルトルをカナ…賢者達と協力し、滅することに成功しました!】

【おお、おおおおお!!】



 メッセージ越しから感じられる、国王様の感嘆。

 むふー、喜んでくれたのなら、やった甲斐がありましたな。……まあ、叶とか翔とかが関係した時点で、俺が黒魔神スルトルと対峙することは決まったようなものだったのかも。


 ……今、俺、ミカ、叶、桜ちゃん、翔、リルちゃんはエグドラシル神樹国のお城に居る。

 当たり前のことだけど、お城はすごくバタバタしていた。

 色々あるんだけれども、1番の理由は、この国の国王であるローキスって人が、黒魔神スルトルの手にかかって死んでしまったこと。

 まあ、ほとんど形だけだった上に、血筋からの権力を振りかざすような国王だったらしく、今までも政治を取り仕切ってきたのはその周囲の人達だったから、政治の方、今後の政治はなんら問題ないみたい。


 むしろ、あの人がいなくなることで政治的に良くなることが…例えば、奴隷のことだとか、戦争が少なくなるだとか、そんなのがたくさんあるだろうと、メフィラド王国からのスパイのおじいちゃんはこっそりと言っていた。


 ……そんな中、俺とミカは、客人としてちょっと豪華な部屋で待機させられており、その暇に国王様とメッセージのやり取りをしてるってわけ。

 翔達は、今後、自分たちがどうするか、この国のお偉いさん達の前で宣言してると思う。


 おそらくだけど、叶達は俺とミカと居たがるだろうから、国を出してもらえないか、交渉してるか口論してるんじゃないかな? 

 叶なら、きっと、一方的にこちらが有利な条件でこの国を出ることに成功するに違いないと、俺は思う。

 土壇場には弱いし、中二病だけど、計画するのと後処理するのは叶の得意分野だと、お姉ちゃんは弟の自慢をするよ。



【……今、そちらに潜んで居る者からも連絡があった。魔神を滅ぼすことに成功したとな! 本当に、本当に良くやってくれた! これで我が国とエグドラシル神樹国は戦わなくてよくなるわけだ】



 安堵しているのが、ありありとわかる。

 王様は俺に愚痴を言い出した。



【…正直言えば、あの国王さえどうにかなれば、否、あの血筋の者さえいなくなるか改心をすれば、我が国とエグドラシル神樹国関の歪みは無くなるのだ】

【こっちの国王は魔神に殺されましたが…】

【それも聞いた。我々が対立している理由はな、はっきり言って、よくはわからんのだ。ただ、なにかメフィラドとセッグライの双方に、昔、いがみ合いがあったというのは推測できる。向こうが我々を一方的に嫌っている状態ではあるがな】



 そんなんだ。まあ、単純に考えて、メフィラドの血筋のある人と、セッグライの血筋のある人が仲が悪かった…それも、セッグライの方が一方的に嫌悪していたと、考えるのが普通かも。



【今まで、よく、大きな戦争が起きませんでしたね】

【うむ、なぜだろうな。文献には何も残っておらぬ。……先代勇者とエル殿に少し話を聞いてみたが……その頃から仲が悪かったそうだ。一方的に。でも、大きな争いは起こって居ないのだと】



 へぇ…なんでだろうね。

 まあ、どっちにせよ、ローキスって人がこのセッグライって血筋の末代だったらしいから、いがみ合いなんて起きる可能性は少ないかもだけど。

 ほらしかも、こうして俺らが助けに来たことで、スルトルは封印(消滅)させることができたわけなんだから、メフィラド王国が感謝はされど、これから敵対することはないでしょ。

 なんて、政治初心者なりの考えを出してみる。



【_______ともかく、我が国が抱える問題が一気に2つほど減ったことになるが…。アリムには多大な借りがまたしてもできてしまったな。……なにか、我々にできることはないのか? もう、お前は金も名誉も地位も要らんだろうから、碌な礼が思いつかないのだ。なにか聞いてほしい願いなどはないか? …私ができる範囲で、応えてやろう】



 今回の報酬ってわけだね。

 ……なにか…あるとすれば、そうだね、とりあえず叶、桜ちゃん、翔、リルちゃんがメフィラド王国に来てもいいかどうかを訊かなくちゃ。



【あの…なら、一つお願いが】

【なんだ。1つとも言わず、2つでも3つでも言うといい】

【あ、ありがとうございます。じゃあそれは、また、なにか考えつくまでとっておいてもらうとして…。その、賢者達の事なんですけど……】

【ふむ。賢者達について話すと、血相を変えたのはさっきのことだな】



 …これから先を言うと、俺らの正体が_______まあ、正体がバレたところでなんにも問題はないわけだけど。

 


【あの、賢者とその仲間の狼族の獣人の一人を、ボクらの近く_____メフィラド王国に置いてもらえませんか?】

【なぜだ? 訳があるのだろう】

【……はい。話すと長くなるので詳しくは…帰ってから話しますが…。賢者のうち2人が身内なんです。のこり1人もその…親友でして…】



 そう告げると、しばらく、メッセージが返ってこず、数秒たってから返された。



【アリム、記憶は?】

【記憶は…実はあります。ごめんなさい。しかし、ボクらの生い立ちを言っても信じてもらえないだろうし、隠しても特に問題ないことなので、いままで話さなかったのですが…そういうわけにも行かなくなったので】

【そうか……。賢者を連れてくるとなると、エグドラシル神樹国と交渉が必要かもしれぬな。わかった、恩人の願いだ、叶えよう】

【______________ありがとうございますっ!】



 俺は思わず、目の前に国王様が居ないのにもかかわらず頭を下げてしまった。

 途端、この部屋の戸が開かれ、スパイのおじいちゃんが顔をのぞかせる。



「アリム様、ミカ様、呼ばれております」

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