表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
372/1307

第三百五十七話 現状 (桜)

「何があった、サクラ!」



 そう言いながら駆けつけたのは、キリアンだった。

 彼女の後ろには、大勢の兵やこの国の重鎮数名も居る。



「キリアン…さん…」



 サクラは今にも泣きそうな顔で、キリアンの方を振り向いた。


 キリアン達は玉座の間から聞こえた笑い声や爆音を聞きつけここまでやってきたのであったが、今は予想外の現状に、ただ呆然とするしかない。


 大きな穴の空いた壁に、氷が溶け水浸しの玉座。嵐でも通ったかのように部屋は乱雑しており、所々に灰が散乱している。

 そして何より、誰の姿も見えないのだった。


 キリアン含む重鎮達は、カナタとデイスとローキスのやり取りにより、国を危険にさらすにも関わらず、魔神を利用しようとしていたとわかっているつもりでいた。

 これこそカナタの狙いであったのだが、デイスが突然、魔神を呼び出し姿を消した事により、さらにそれは彼らの中では揺るがない事実となっていた。

 故にデイスがこの場に居ないはすでに城中居るものは皆、把握して居る。


 城の者らはローキスが魔神にのっとられたのを知っており、それに対抗するための準備をしていた。

 カナタ、ショー、サクラ、リルの4人が対峙して居るということも承知している。


 しかし、現在はサクラがただ一人、玉座の間の中央に立って居るのみであったのだった。



「な…なあ、サクラ?」

「……えぁ…はい」

「何が…あった?」



 カナタから置いてかれたショックがまだ残っていたが、サクラはカナタからみんなに説明をしろ、と、頼まれていた通りのことをする事にした。



「まず______」



 サクラはキリアン含む、その場にいる全員に、キリアンの持っている情報がまだ行き渡ってない者も居たため、1から説明をし始めた。


 カナタがローキスの陰謀を暴こうとした事。

 デイスがグングニルを壊し、魔神を復活させてから消えた事。

 魔神がローキスに憑依した事。

 リルの氷魔法で一時的に無力化した事。

 そしてその無力化が無意味であり、リルが復活不可能な方法で殺された事。


 サクラはこれより先の説明を、事実とは違うように伝える。

 

 ショーに魔神が憑依する前に、ローキスが魔神に跡形もなく殺された、と、いう事に咄嗟に変更したのだ。

 仮に魔神討伐が成功したとして、ショーがローキスの殺人の罪に問われる可能性を考えた為のことであった。


 故にローキスを殺してから、ショーに憑依したという事にした。


 魔神が出現してから、ショーに促されて逃げ出したこの国の大臣は、ローキスが死んでしまった事に関して、サクラの話の途中で周囲の者に、『あの王が自分で招いた事だ』と言ってくれたのは、サクラにかなりの安心感を生む。


 しばらくして、サクラは残りの、魔神が憑依したショーとカナタが、自分を置いてってどこか無人のところで戦っていると、最後まで説明し終えた。



「つまりは、今は賢者カナタが賢者ショーから魔神を引き出して封印できるように戦っている…と、いう事なのだな?」

「………はい」



 キリアンのその問いかけに、サクラは頷く。



「となると…我々、軍にできる事は…無い…ですよね?」



 キリアンは重鎮達にも、そう問いかける。

 重鎮達はただ、頷く。



「ならばサクラは、私達と共にカナタとショーを待つしか無い。…心配ないさ、サクラのボーイフレンドなら、きっとやってくれるはずだ」

「……はい!」



 サクラは頷き、キリアンの元へ。

 駆けつけた者たちは、カナタの活躍を願うばかりだが、万が一の事態に備え、いつでも出撃の準備ができるように持ち場に戻る。

 重鎮達も同様に、この重要な事態を国民全体や周囲の国に伝える為の準備を始めた。


 そんな中、一人の使用人の中に、他の国と連絡を取るものが一人。



【国王様、国王様! 緊急連絡でございます】

【……今、我が麗しき妻と茶をしてたのだが…。なんだ? 我に直接メッセージを送ってくるという事は、何か大変な事態なのだろうな。ついに動き出しでもしたか?】

【い、いえ、それが______】



 その使用人、否、メフィラド王国からの密告者は、メフィラド国王にメッセージでサクラから聞いた話を含めて詳細を伝える。



【魔神が…復活したか】

【はい、そのようなのです。目撃者が多数であるのでまず、間違いないかと】

【こちらに来られても困る…となれば、もうあの娘しか居ないだろうな】



 国王の『あの娘』というワードが気になった密告人は、その事について問う。



【あの娘…とは?】

【わかるだろう、アリム・ナリウェイだ。あの娘は本当に凄いぞ! …おそらく、そちらの魔神ですら早々に滅してしまう事だろう。………お前の話は全て真実だと信じる。今から、我は色々と手続きをしないとな】

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ