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第三百五十四話 狼少女だったもの (叶・桜・翔)

「一瞬で治ったね…!」

「えっへん!」



 城から約1キロもしないくらい離れたところで、2人はグングニルを修理した。

 特に時間がかかることなく、サクラの回復魔法ですぐに治った。



「じゃあ、戻ろうか」

「うん」



 2人は瞬間移動で無効化されない範囲のギリギリまで飛んでから急ぎ足で、城まで戻った。

 これで全てが終わる、そう思って。

 


 「翔さん、直りましたよ!」



 カナタは玉座の間の中が見えると、真っ先に翔にそう伝えた。



「おおっ! じゃあひとまず_____」



 と、翔とそしてリルが立ち上がろうとしたその時、部屋いっぱいに眩ゆい閃光が走る。



「ああ、悪い、今なんか立ちくらみが……」



 そう言いながらフラフラと立ち上がろうとする翔。その翔の足元には先程まで無かったものが有り、隣に居た者が居なかった。


 足元に大量にある何か。

 ショーが助けたと言う狼族の少女の着ていたはずであった服とバック、腕輪などと共に大量の灰が翔の足元に散乱している。


 頭の良い2人は、それが何かをすぐに察した。

 それはリルである、否、リルであったと。

 言葉が出ない。

 ショーは2人のそんな顔をみてなにか不審に思っているようだが、足元の灰に気がつかない。

 


「あ…し…しょうさ…ん…う…うし…うしろ…り…」



 カナタは震える声を絞って出し、ショーにそう言った。

 ショーはカナタに言われ、後ろを見てみるが、それは魔神を確認しただけであった。

 しかし、その目線をカナタとサクラに向け直した時、彼は発見。



「あ…?」



 ショーはそんな間の抜けた声しか出ない。

 うまく状況が飲み込めない。

 しばらくその灰と服を交互に見た後、首を傾げる。


 

「なあ、叶君、桜ちゃん。これは…?」



 虚ろになった目を2人に向ける。

 信じたくない、そう、言いたいような顔だった。



「そ…それ…あれ…」



 うまく言葉が出ない。

 カナタの頭は固まりかけていた。



「これは…リルの下着…これはカバン…ダンジョンで見つけた腕輪…で、これはなんだ? 灰…だよな? どうやってこの一瞬で、どうしてリルは服脱いでここに灰を置いてったんだ? さっきからメッセージも繋がらねーし……裸でほっつき歩いてんのか? なんのために…」



 砂のような灰を一握り掴み、もう一度地面に落とす。

 ショーはもう一度、サクラとカナタの方を見た。



「……? なんなんだろうな、これは_____」



 そう、言った時だった。

 その場に突然、突風が巻き起こる。

 その突風はリルであった灰を、ショーがその時掴んでいた分やリルの下着、カバン、腕輪をのぞき、全て巻き上げ、やがて竜巻となった。


 依然としてこの場では一切魔法が使えないカナタとサクラはどうすることもできず、その竜巻は壁に大きな穴を開け、外へ。

 その行先は誰も知らない。

 否、わかるはずがない。



「はァ…氷ってのはちべてェのな」



 そんな声が玉座の方から聞こえた。

 ショーを除き、2人がそちらを向く。


 ローキスを閉じ込めていたはずの氷が段々と溶け始めていっていた。それはおろか、ミスリルでできた槍でさえも溶け始めている。


 しばらくして、その氷の中からローキスが、何事も無かったかのように出てきた。

 側にあった腕を拾い上げ、それを腕の断面に押し当てると、それはすぐにくっつける。

 他の傷もすべて癒えているようであった。


 ローキス、もといスルトルはニタリと笑うと、まるで誰かを怒らせるかのように、とても不快な口調で話しを始めた。



「あれ、アレェ!? どなたか一人減ッてません? オレが氷漬けにされてる間にナァにがあッたのかなァ?」



 ショーに向かって歩み始めるスルトル。

 しかし、ショーは灰が飛んでいった外を見るばかりで、反応を示そうとしない。

 カナタはリルの消失、スルトルの突然の復活、二つの要因により二度目の脳内フリーズをしていた。



「……だれも答えねェの? まァ、アレだろ? おおかた、獣クセェ奴隷一匹が灰になってお空に舞い上がッたッてだけだろ? 気にすることねェジャン、ナァ?」



 ショーのもとに辿り着いたスルトルは、その場に座り込み、ショーと全く同じ目線でまた、話をし始める。

 ショーは、呆然としており、周囲を気にしようとする様子がない。



「あ、ちなみに。ローキスのアホには『限定即死』ッつゥスキルがあるんだわ。数日間魔力を一定量貯めれば、好きな人を殺せる。まあ、1年に1回しか使えねェんだけどよ。んで、それをオレ様の特徴を生かして強化! なんとなんと、殺した相手が灰になるようにしましたァ!」



 顔をズイッと近づけてくるスルトルの目と目を合わせるショー。スルトルはニヤリと、また笑った。

 今までより一番、口を歪ませて。



「ちなみにどうやっても生き返らせることできないからなッ! 賢者の回復魔法も、何も意味ねェし! そもそも、その程度の灰の量じゃ、何をしても無理だッつゥの! ごシューショーさまァ! ………ま、どうせ奴隷だしな。『元』だろうが、なんだろうが。別に問題ねェだろ? な?」



 わかっていた。これがリルかもしれないということは、ショーには分かっていた。



「り…リル…。テメェ…テメェ…ッ…」



 スルトルの言葉により、ショーの中で何かが崩れ、ブチッという切れるような音がしたと思ったら、スルトルの胸ぐらを掴み、そのまま殴りかかろうと_____


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