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第三百四十四話 大切に (翔)

 国王と面会してから1週間以上が過ぎた。


 2日に1回くらいのペースで、叶君達と共に呼び出されては、デイスさんと打ち合わせだけをして帰る日々。

 その時はリルも同行して良いって言ってたんだが、それは国王が直接関わらないからか。


 言われた通り、あれから仕事は一切してない。

 せっかく、武器を新しく作ったというのにそれを披露できねーのは残念だが、まあ、こんな風にゴロゴロと自堕落な生活を送るのも悪くねーよ。

 筋トレしたくなって仕方なくなる時もあるがな。



「わふぅ。私の負けだ」



 リルはしょんぼりした顔でそう言った。

 俺とリルはオセロで遊んでいる最中だ。



「でもリル、前よりめちゃくちゃ強くなってるぜ?」

「そうかな? …わふっ!」



 俺はリルの頭の上に手を乗せ、撫でる。

 リルは嬉しそうに目を細め、尻尾をパタパタとせわしなく動かしている。


 ……こうして一緒に居てやれる残りの時間が少ない。

 これから魔神が復活し、そいつを俺と叶君と桜ちゃんで封じ込めたら俺らは日本に帰ることになる。


 国王達の話から推測するに、魔神とやらは近いうちに復活しそうだからな。

 

 思えば、リルとはこの世界に来た日からずっと一緒に居るな。…つっても、まだこの世界に来て1ヶ月半経つか経たないかくらいだが。

 


「ショー、どうしたんだい? 私の顔になんかついてる?」



 リルの顔をジッと見つめてたら、そう言ってきた。

 俺は思わず、その撫でてた手をリルの後頭部へとやり、それを優しく押してこちらに持って来た。

 背中にも手を回す。


 そういや、会ったばかりの時、俺の感情が高ぶってあまりにリルが可哀想だと思ったから、思わず、抱きしめちまったことがあったっけな。

 その時と同じように、俺はリルを抱きしめた。

 ……俺の彼女なんだし、良いよな?



「抱いたり撫でたりしてくれて嬉しい。しかし、なんならもう少し、その、キスとか…」

「ん、わかった」



 俺はリルにキスをする。

 異世界でできた人生初めての彼女は、寂しがりなんだと俺は思う。

 詳しい話はトラウマなんだろうな、リルが訊いて欲しくなさそうにしてっから訊いてねーし、わからねーが、酷い扱いを受けてきたのはわかる。

 

 俺が居なくなったらどうするんだろう?

 確か、普通に冒険者をやって暮らしてくって言ってたな。

 ……ここを去る前に何か、リルに大きなお願いを聞いてやるべきなんじゃねーか?


 そう思い、俺はリルのみずみずしい唇から、俺の唇を離してから、何かお願いがないか言おうとしたが、



「なあ、リル。お…あっ…」

「…? 何かな、キス以上のことする?」



 俺は思いとどまった。


 リルのお願いといえば、そう、俺との子供が欲しいだった。

 初めての肉体関係を持っちまった日に、リルはそう言っていた。

 リルと子供を作ったら俺は、きっと、日本に帰れなくなる。


 俺が俺の意思で帰らないことを選択するだろう。

 嫁と子供残して、自分の意思で二度と会えない遠くに行くとか、俺にはできない。無理だ。


 いや、もし仮に俺が帰ったとして、なんやかんやあってこの世界のことを両親に説明しなきゃいけねー時が来るとしよう。

 必然的にリルの話もするよな。

 それで、リルとの間に子供が出来たと言ったら俺の親はなんて反応するか……。



「ショー、難しい顔してる。どうしたのさっきから」

「ああ、いや、少し考え事をな」

「そっか、それでその…さっきの答えをくれると嬉しい」



 キス以上のことをするかどうかか。

 もちろん、するだろう。



「それは…夜な。昼間っからは良くねーと思うんだ、うん」

「わかった! 楽しみにしてるね」



 なんか楽しみにさせてしまった。

 


「わふ、こんな時間か、そろそろお昼ご飯つくるね」



 リルはオセロセットを片付けると、昼飯を作り始める。

 俺がさっきあんな返事をしたからか、とても機嫌がいい。それがまた、すごく可愛い。

 

 いっそのこと本当に、この世界からリルを日本まで連れ出すか、この世界と日本で行き来できれば良いんだが…。

 

 ……リルが俺に告白してきた時は本当に驚いた。

 嫌いじゃねーし、思わずOKをだして、今に至るわけだ。

 最初は、こう…この世界にいる間限定だと思ってた。実際にそうだし、こう…『愛してる』とか、あまり深くは思わないようにしてきたつもりだったが……今じゃあ俺もリルのことが本気で好きだ。大好きだ。


 叶君が桜ちゃんを守るあの決意と同等かどうかはわからねー。だけど、もし、リルに何かあったら俺は_____



「わふ、できたよ。召し上がれ」

「ああ、ありがとう」



 リルはテーブルに昼飯を置き、俺の隣に座る。


 _____ああ、俺は、どうなるんだろうな。


 怒り狂うかもしれねーな。

 あの国王が変なことしねーか、心配しとかなきゃ…な。

 

 と、そのとき、俺の頭の中にメッセージが。

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