第三百四十一話 イチャついていたところに
本日から13章ですよ!
「おはよ、有夢~、好きだよー」
「えへへー、俺も大好きだよー」
「…なら私は超大好きだよっ!」
なーんて言い合いながら、この日は目覚めた。
昨日はスキルを考えて強いのを作ったんだけど、もう少し増やしたりした方がいいかどうか、ちょっとミカに訊いてみる。
「今日もスキル増やそっか?」
「えー、明日から、また数日間は仕事あるでしょ? 今日はデートしよ、デート」
「ん、わかった」
俺とミカは朝食を食べた後、デートを開始した。もちろん変装して、俺ら本人以外の周りの人には俺とミカの姿が別の少女に見えるように。
天気も快晴だしね。
デートの内容は決まってなかったから、とりあえず、劇を観に行った。
その劇の内容は、まあ、特に変わったところもない身分差の恋愛モノだったんだけれど、驚いたのが周りの行動。
カップルであろう人々のほとんどが、劇のキスシーンでキスをし始めたのだ。
そういえば、俺達が表紙を飾った雑誌の1つのコーナーに、最近の流行りとして、劇のキスシーンでキスをすることが流行ってるとかあげられてたっけ?
忘れてた。
この世界では俺達だけがこういうことしてるもんだと思ってた。バカップルとはどこにでもいるものなのね。
「みんなキスしてるけど…」
「なら、しない手はないよね」
「えへへ…」
ミカは頬を赤めながら顔を近づけてくる。
俺はそれを迎える。キスなんて家では毎日何回もしてるのに、人の前だから恥ずかしい。
それに見た目少女同士でキスしてるもんだから、周りから少し変な目で見られたけれど気にしない。
この反応は慣れた。
劇を見終わった俺とミカは、昼食にはまだ1時間ほど早い時間だったから、特に考えもなしに街の中をブラブラと歩く。
そして、途中で公園に入って、時間を潰したら朝に作ったお弁当を食べさせ合う。
そんな感じで過ごしていた。
お弁当を食べ終わって、また、手をつなぎながら公園を歩いてた時に、頭の中にメッセージが来るまでは。
【忙しいところすまない! アリム、ミカ! 大至急、城に来てくれ】
国王様からのメッセージだった。
俺とミカは顔を見合わせる。
メッセージからして大分大慌てなみたい。
「何があったんだろうね?」
「またカルアちゃんが攫われたとか?」
「それはないよ。警報が来てないもの。…とりあえず、お城に急ごう」
「うん」
俺とミカは全速力で城へと向かい、一瞬でたどり着く。
城門前では、特に慌てた様子でもない門兵さんが、門を開けてくれる。
……慌てているのは国王様だけみたい?
城の中にいる人達に挨拶しながら、国王様のお部屋まで来た。扉をノックする。
「おお、来てくれたか! 入ってくれ」
と、言われたから入る。
やはりちょっと慌ててる感じがするよ。
俺らはその部屋の戸を開け、中に入った。
「忙しい中、すまない、本当にすまない。緊急事態なのだ。…とりあえず、そこに座ってくれ」
国王様に勧められるまま、用意してあった二つの椅子に俺達は腰掛ける。相変わらず座り心地が良い。
ベヘモットが刺繍されてるこの椅子。
「先に謝っておこう。仕事が沢山あるお前達を、急に呼び出して本当に申し訳ないと思っている」
「いえ、大丈夫ですよ。今日は仕事はなく、アリムと私とで外で遊んでただけなので」
「そうか」
明日からまた、俺の誕生日まで仕事だけどね。
また、雑誌の表紙の写実を描かれるんだ。アイテムマスターを所持してる俺が言うのもなんだけども、すごいの、写真みたいにリアルなんだよ、毎回。
……そんなことより、国王様の話を聞こう。
「それで、要件とは一体?」
「要件を話すその前に、話しておくことがある」
そう言いながら国王様は地図を取り出した。
それを一旦膝に起き、語り始める。
「知っているかとは思うが、この世界には三柱、魔神が居る。この国に封印されていた一柱はこの間、アリムが滅してくれた、悪魔神サマイエイルだ」
魔神が3人…じゃなくて三柱居るってことは本を読んで知っている。知ってるけどこの国に危害が無いなら俺らには関係無いし、倒すつもりは無い。
サマイエイルを倒したことで国から貰った2兆円のお金を末代まで残せるようには考えながらも贅沢に使いつつ、冒険者兼世界的アイドルの活動を続けて、ミカと一緒に長い余生をのんびりイチャつきながら過ごそうと考えてたんだけどね。
この言い方から察するに、現れちゃったんだね…もう一柱。
「つまり、魔神がまた現れた…と」
「うむ、そういうことだ」
ミカが先に国王様にそう訊き、国王様は答えた。
この会話の内容から察するに、俺らにそれを倒してほしい…と、言うことなのかな?
国王様はさらに、詳細を話すらしい。




