表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
350/1307

第三百三十五話 待機中 (叶・桜)

「もぉ…最低…っ!!」



 サクラは激怒している。



「…そうだね」



 カナタはローキスが失敗した者にあたる性格であることは理解していたが、やはり怒っていた。



「女の子の顔面を殴るなんて!!」

「うん。まあ、見るからに全力で殴ってたよね」



 実際にローキスは自分の持てる攻撃のステータスから本気を出して殴っていた。

 ローキスのステータスはAランクの冒険者程度はある。

 デイスも、防御のステータスのいくらかは引き出していたが、ローキスの怒りを抑えるためにあえて、死なない程度までしかステータスを出さなかったのだった。

 そんなことは誰も気づいてないが。



「ふぅ…ふぅ…。むぅ…ねえ叶、私、あの人の前にショーさんと一緒に居たリルって娘を出すの、なんか嫌なんだけど」

「わかるけど、翔さんのことだから、リルさんのことはしっかり守るでしょ」

「そりゃ、そうだけど」



 カナタはサクラの背中をさすりながら、怒りをなだめようとした。サクラはさりげなく、その手を掴み、自分の頭の上へと持ち上げる。



「もし、本当にローキスさんに……あ、ちょっと待っててね」

「ん?」



 カナタはサクラの頭を撫でたまま、目をつむり、空いてる方の手を握って意識を部屋中に集中させた。

 数秒後、目と手を開く。その開かれた手にはたくさんのシールのようなもの。



「みてよ、ほら、盗聴器がたくさん」

「うわぁ…」

「で、話の続きね。もし、あの愚王が帰ることに協力してくれなかったり、裏切るようなこしたり、単に俺達があの人と付き合うのが嫌になったりしたら、瞬間移動で逃げようか、翔さんとリルさんも一緒に」

「ん…そうね」



 サクラがその、カナタの提案にのったその時だった。 

 部屋のドアを誰かがノックした。



「何事かな? ちょっと出るね」

「うん」



 サクラの頭を撫でるのをやめ、カナタはドアを開ける。

 その先には、キリアンとクルーセルが立っていた。


 その様子を見たサクラも、玄関に寄る。



「あれ、お二人ともどうかされました?」



 キリアンは答える。



「いや、ちょっと顔をのぞかせただけだ。そうだ、カナタ、少しサクラを借りるぞ?」

「えっ?」

「案ずるな、女同士の話というやつだ」


 

 キリアンはサクラに向かってウインクをした。

 サクラはそれで察した。



「わ…わかりました! ごめん、カナタ、私行くね」

「え…あ、うん」

「30分したら返してやる、それまで、クルーセルとでも戯れてろ」



 そう言ってキリアンはサクラを連れて何処かへ行ってしまった。

 残されたクルーセルとカナタは顔を見合わせる。



「……残されましたね?」



 カナタはクルーセルにそう声をかけた。

 唐突にクルーセルはカナタの肩を掴み、その目は憂いを含み始めた。



「賢者カナタッ…貴方の鍛え方の方が、どうやら正解だったようだっ! さわりでもいいから、是非とも教えて欲しい、どうか、この通り……」

「あ、えーっと、なら、サクラ達が話してる間に、レベルの大切さを…」

「ああ、是非教えてくれっ!」



 カナタとクルーセルは、また、別の部屋へと向かった。



_____

___

__



 サクラとキリアンは、前に雑談した部屋に再び来ていた。キリアンはニマニマしている。

 まず、サクラが心配そうにキリアンに問う。



「あの、キリアンさん。なんともないですか?」

「なにがだ?」

「その、カナタと手合わせしてから、ローキスさんに何かされたとか…」

「いや、これといって特になにも?」



 サクラはその会話の間に、失礼だとは思いながらも、透視で身体に、最近できたような傷はないか見てみた。

 確かに傷だらけではあったが、新しい傷はない。

 サクラはホッとした。

 なお、キリアンの胸の大きさより、自分の方が若干上であることも知ったようだ。



「あ…あ、そうなんですか」

「…? そんなことより、サクラ。あの後、カナタと進展はあったのか?」



 そう訊かれたサクラは、モジモジしながら答えを返す。



「あの、はい。おかげさまで、実は…付き合うことになりました。えへへ」

「おおっ!? 思ったより早かったな。…で、どこまですすんだ?」



 サクラは顔を赤らめつつ、ゆっくりと返事をする。

 キリアンはノリノリで、身を乗り出しつつそれに期待する。



「キスを2回くらい…」

「それでそれで?」

「添い寝とか頭撫でて貰ったりしました」

「それから?」

「も、もうないです! ここまでです!」


 

 キリアンはそれを聞いて、満足気に腕を組む。



「ふむ! まあ、二人の年ならそんなもんだろ」

「は、はぃ…」

「念のため、一応言っておくが、行為に勤しむのは、この国の法律では13歳以上でないとダメだからな! まあ、サクラは14歳だし、もう大丈夫かぁ…」



 そう言われたサクラはさらに、リンゴのように顔を真っ赤にしてそれを否定した。



「ま…まだそんなことしませんっ!」

「そうか。…一緒に風呂に入ったりは…?」

「し、しませんよ!」

「いいな、初々しくて」



 キリアンは笑いながら、その後、サクラにカナタとの関係での色々な質問をした。そしてサクラが答えるたびに、ニマニマと笑って見せたのだった。


 ついにサクラは、逆に、キリアンに恋愛事情を訊くことにした。



「_________わ、私はともかく、そういうキリアンさんはどうなんですか!」

「私か? 私はもう夫は居るしな。25歳の時に結婚して、今は2年目でな子供はまだ居ない。しかさ、私がカナタに負けた後、治療室で手を握っていてくれていた…そんな男だ。ふへへ」


 

 今度はキリアンが気恥ずかしそうにハニカんだ。



「ちなみに、城内の図書館の司書でな、私がそこから恋愛小説を借りてたら________と、もう30分経ったな。後少しでまた、ローキス様に呼ばれるんだろ? もう戻りな」

「はい…また今度。それと、あの、お幸せに!」

「む、そっちこそな!」



 サクラは自分たちの部屋に戻った。

 カナタもいつの間にか戻ってきており、二人は30分間、いちゃつきながら呼ばれるのを待った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ