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第三百三十三話 スルトルの興奮

「……デイス、ひとつ訊きたい事がある」

「ほぉ…なんでしょう?」



 ローキスのその問いに、グングニルを持ったデイスが答える。今は2人と1本が相談をしている真っ最中だった。



「なぜ、何故に、ここ1ヶ月以上メフィラド王国の重大な情報が入ってこないのだ。僕が最後に聞いたのは、あの国の姫が何者かに攫われ、それを今、巷で絶大な人気を誇っている、アリムとかいう幼い女冒険者が救い出した…という事だけだ」

「そうですのぉ…」



 彼らが…否、この国の人々がメフィラド王国についての情報が全くないのは、メフィラド国王が隠しているからである。

 悪魔との戦争をしたことは、協力国以外の他国、特に仲が悪いこのエグドラシル神樹国には、絶対に知られないようにしていた。



「お前の予知でわからないのか?」

「ほぉ…残念ながら…。あの国に関しての予知が降りてこなくてのぉ」

「………チッ、使えん。……まあいい。で、なにか予知は他にあるか?」

「そうですの、明々後日に来る、新しいSSランクの冒険者2人のことならば…」



 ローキスは飲んでいたワインのグラスを盆の上に置いた。



「ああ、あの者らについての情報は入っている。なんでも、フレスベルクが現れた際に行方不明になったが、力をつけて戻ってきたとかいう男と狼族の奴隷の二人だったな」

「ええ、あの、男の方が、我々の計画に深く関わることになるだろうと、予知ができましたでの」

「ほぅ、どんな」



 ローキスは、この件に関しては快く思っていなかった。

 狼族の奴隷の少女にSSランクという地位を与えるのが嫌だったのだ。

 しかし、今は強い者を求めるスルトルが居り、強さを認めて戦わせれば、魔神の機嫌が取れると考え、我慢することにしていた。



「いえ、そこまで深くは…。しかし、彼は必ずワシらになんらかの形で協力するでしょうな」

「漠然としているが…まあ、邪魔をされるよりはマシか」

「それと、ローキス様、あのスキルの準備をお願いしますの」

「………何に使うのだ」



 ローキス、彼自身の強さがAランク程度ではありながら、発動条件を満たすことによって相手の強さにかかわらず一瞬で殺せるスキルを所持していた。

 幼少期の時、彼の父親がダンジョンを攻略してきた冒険者から買い取ったスキルであり、それを覚えさせられていた。



「使うときがあるのじゃと、そう予知できましたの」

「………まあ、それもわかった。準備をしておく。僕に命令するなんて腹ただしいが…まあ、これもメフィラド王国を潰すため。仕方ない」

「申し訳ありませんのぉ」



 デイスが土下座をすると、唐突にローキスは立ち上がり、マントを翻し始めた。



「僕はもう寝る」

「おやすみなさいませ」

「……グングニルを片付けておけ」



 ローキスはそのまま、デイスとスルトルを玉座の間に残し、寝室に向かってしまった。

 デイスは玉座の間を出て、そのままグングニルを安置するためだけの部屋へ向かった。



『なァ…』



 グングニルの中に封印されている、スルトルがデイスに話しかける。



「なんですかの?」

『……1ヶ月前…サマイエイルの奴、封印が解けただろ。メフィラド王国はそれを隠してるな』

「はい、御復活なされましたぞ」

『しかし、奴の魔力が感じられねェ。……まさか、しくじったのか?』



 その言葉に、デイスは手を止めて答える。



「…ええ」

『……どういうことだ? まさか勇者にやられたってんじゃねーだろうなァ!? 普通の勇者じゃねェ、真の勇者に…!! だとしたら_____』

「いいえ、サマイエイル様を滅したのは、勇者ではありませんのじゃよ」



 スルトルは絶句し、しばらく黙った。

 そしてしばらくしてから、再び話し始める。



『オレらには…普通の武器は効かねェ。魔法もある程度の威力がなきゃ無効化できる。……勇者でもなんでもねー奴が、サマイエイルを滅した…のか?』

「はい、そのせいで、メフィラドの血筋を絶やすということはできておりませんのぉ」

『……そうかァ』


 

 デイスはスルトルがニタリと笑ったような気がした。



『つまりそりャ…マジで強いってことか…。そんなことができるヤツだ、尋常じゃねーくれェ____』

「……楽しみですかな?」

『サイッッッッコーーーになッ! ああ、あああ、ああああ、あああああッ!! なあ、なあ、デイスッ、あのクソ王に、オレをはやくここから出すように言えよ、言ってくれよォ、なァッ!! コロシアイ…コロシアイをはやくッ…はやくゥゥゥゥゥゥッッ』



 デイスは丁寧にグングニルを台座に置いてから、その絶叫とも呼べる声に、返答をする。



「了承しました、任せてくだされ」



 デイスはそのグングニルの保管室から出て行こうと、背を向けたその時、スルトルは先ほどより少し落ち着いた様子で問いをかけてくる。



『あ、最後に。そいつの名は…なんつーんだ?』

「アリム・ナリウェイじゃよ」

『……え、あれか、巷で噂の美少女なんちゃらかんちゃらとかいう……』

「そうですじゃ。本当は男なんですがの」

『………なんじャそりャ…』

3 3 3

(*゜∀゜*)

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