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第三百二十四話 魔核提出 (翔)

 リルとより深い関係になった後、デートをしたその翌日。俺とリルはギルドに来ていた。

 そろそろランクを上げる。そもそも今日あたりにそうする予定だったしな。



「すいません、ランクを上げたいのですが」

「わふ」


 

 そう言いながら、俺らはギルドカードを受付のお姉さんに渡す。

 お姉さんはそれを丁寧に受け取った。



「はい。レッドイヤーのショー様とリル様ですね。パーティランクと個人ランク、どちらの昇級ですか?」

「あーっと、俺とこの娘、それとパーティも、全部で」



 出てきた魔核は3つ。

 俺とリルであのフレスベルクとかいう魔物は同時に倒したわけだが…ちゃんと、魔核も二人の物となってるのか気になるところだな。



「はい、承りました。現在、お二人ともDランクで、パーティランクもDランクですので、Dランクの魔核30個以上か、Cランク以上の魔核を3つずつ提出して下さい」

「はい」



 俺はSSランクの魔核を2つ、リルは1つを取り出し、受け皿の上に置いて提出した。

 受付のお姉さんの顔色が一瞬で変わる。



「えっ…えっ…ええ?」



 やっぱりSSランクの魔核って凄いんだな。

 昨日、リルは驚かれて当然だろうと、俺に話していた。

 でも目を見開いて数秒間絶句する程とは……。



「……ショー、ちょっと後ろ見てみてよ…」

「んあ?」



 リルは俺の袖をクイクイと引っ張り、そう言った。

 

 そういえば静かだった。俺達がSSランクの魔核を提出してから、妙に。

 その理由ってのは…受付のお姉さん同様、野次馬達がこの昇級の様子を見ていて、絶句してるかなんだな。


 SSランクの魔核って、出回ってないくせに形だけはみんな知ってるのか。



「えっと、すいません。SSランクの魔核なんですが…」

「あ…ああ…えっと…はひ、しょうしょうお待ひ下さい…」



 受け皿を持って、ガタガタ震えながらお姉さんはカウンターの奥へと消えていった。

 どこかの部屋の戸を開けたその後、音のみが響く。


 その音と同時に、今の光景を見ていた野次馬達…もとい、冒険者や客、依頼人達がドッ俺らを囲むなり、声を上げるなりし始めた。



「なんっ…なんだよおまえらぁぁぁぁあっ!?」

「SSランクの魔核…! 博物館以外で初めて見たわ…」

「あれ…えーっとつまりどういう事?」

「つまり、あの娘達がSSランクになるという事ですね…ふええ…」



 ワイワイガヤガヤ。

 数十人の冒険者達が俺らの周りに居る。

 そんな中、俺の唯一、リルを除いてよくつるんでると言えるオセロ好きのおっさん達がその群衆を割って出てきた。

 俺の肩を掴む。



「ショー…おま…お前…これはどういう事だ……?」

「その…遭難してる最中でダンジョンを見つけて…。魔物を倒しながら迷ってたもんだから、レベルも上がってて…それでそのダンジョンのボスを倒せて、SSランクの魔核を手に入れたんスよ」

「しぇ~っ!?」



 どうやらその説明で、この人達も、周りの人達もみんな、納得してくれたみてーだな。

 そんな顔をしている。



「そ…遭難してる間にそんな事が…」

「く…苦労したんでしぇ…でも、ダンジョンを見つけてクリアしちゃうなんて幸運なんでしぇー!」

「まあ、俺は最初からお前が大物になる事は分かってたがな! フハハハハ!」



 しばらくして受付のお姉さんが、ちっこいお爺さんと一緒に戻ってきた。

 確かあの人は…ここのギルドの責任者だったはず。

 

 お姉さんとその人が何か話、それが終わったのか、お爺さんが俺達を手招きし始めた。

 それに応じて、カウンターの中に入れてもらい、そのお爺さんの元へ。



「あの魔核を提出したのはお前さん達か」

「はい、そうです」



 リルはやっぱりまだ見知らぬ人が苦手なのか、喋らずに頷いた。

 お爺さんは俺らを一瞥すると、ボソリと『ついてきなさい』と言い、お姉さんをカウンターに残し、カウンター奥の戸を開いて中に入っていった。

 それに続く。


 その部屋の中は、ちょっとそこらへんのものよりは少しだけ高めであろう椅子と机がある。

 個人用と話し合い用みたいなの、合わせて2セット。


 お爺さんはその、話し合いをするために設けたであろう椅子に座った。

 いつの間にかその前の机の上にはお茶が3杯、置かれている。



「まあ、座りなさい」



 掌でもう一方の長ソファをさしながらそう言った。

 俺とリルは言われた通りにそこに座る。



「儂はここのギルドの責任者だ。知ってるね?」

「あ、あ、はい」

「うむ」



 満足そうな顔をしてからお茶をすする。



「ところで、このSSランクの魔核は3つとも、間違いなく君達のものだ。そう判断できた」

「は、はい」

「というわけで、君達は晴れてSSランクのパーティのSSランクの冒険者となったわけだね。おめでとさん。まあ、まだ仮の段階だけど」



 そう言いながら、また、お爺さんはお茶をすすった。



「ふぅ。…君達はこれから数日後に、城に呼び出されるだろう。そこで国王からSSランクだと認めて貰うのさ。といっても何もしなくて良いんだけどね」



 今度はポケットから包み紙に包まれたマシュマロのような菓子を取り出し、口に含んだ。

 そんなお爺さんに、リルはちょっと震えてる声で質問し始める。



「あ…あの、私…御主人…ショー様の元奴隷で…今はその奴隷を解放してもらってる身なのですが…元奴隷で獣人の私でも、あのお城に行ってもいいんですか?」

「ああ、いいよ。今回の場合はね。既に奴隷じゃないし…そもそも、冒険者は、身分は誰もがほぼ公平という事になってるから。普通はね」



 そう言うと、ちょっと難しそうな顔をした。

 今度は俺が質問をする。



「何か問題が?」

「まあ…口には出せないんだけどね。問題はあるよ。決まりは決まりなんだけど、たった一人の我儘でそれが無効になることもあるから…さ」



 おそらく、国王のことを言ってるんだろう。

 やっぱり評判は良くないし、リルが問題あるっていう事は差別主義の人間か。

 うう…会いたくねーなぁ…。でも、会わなきゃ帰れねーしな…。

 

 リルが何かされそうになったら、逃げるか守る。

 そうすりゃ良いのかもしれねーけど。



「わかりました…その…呼び出される日はいつですか?」

「うむ、だいたい3日から1週間後だな。それまで休んでるといいよ。……困ったことがあったら相談にのるよ」

「ありがとうございます」



 そのあと、魔核をどう手に入れたかや、遭難してる間どうしてたかをある程度捏造してお爺さんに話してから俺達は部屋に帰った。



 

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