第三百十八話 翔、部屋を借りる (翔)
「わふぅ…ここが私達の部屋……」
「おう。これで月9万ベル。ここで2番目に安い部屋らしい」
「月9万ベルっ!? わふわふわふ……」
俺は部屋を借りたぞ。
驚け、なんと、叶君達の部屋の隣だ。
叶君達を呼んできてくれたあのスタッフのお姉さんが受け持ってくれたおかげでこの部屋を無事に借りられた。
色々込みでかなり金が掛かったけどな。
まあ、1000万ベル以上、財産はあるわけだし良いだろうな。
なお、リルは震えている。
「御主人…御主人っ…! 本当にここに私達がすむのかい?」
「おう」
「私…場違い…」
「まあ、そういう事は気にすんなって! 俺は隣に挨拶してくっからよ」
「わふ…」
俺は隣の叶君達の部屋に挨拶した。
二人とも、また、驚いていたぜ。なんか仲良くプリン食ってたらしいし…。それに、なんか余ってたとかいうプリン2つ貰っちゃったけど。
お八つ時を少し過ぎたくらいだし、そのプリンを頂く事にした。
「このぷるんぷるんしたのは何かな?」
「俺達の世界の甘味…その名もプリンだ!」
「なんか…そのままのネーミングだね」
「そうか? 美味いぞ」
リルは匙でプリンを恐る恐るすくい、口の中に入れる。
「わふぉ…食感も見た目の通りだなぁ…美味しいね」
「だろ? プリンだからな」
プリンを食べ終え、片付ける。
俺とリルは今後について話し合う事にした。
「あの…探してたカナタとサクラって子達と会ったから…もう御主人は帰っちゃうのかな? 帰ったらもう二度と逢えないよね…」
そう言いながらリルはまるで飼い犬のように身体を擦り付けてくる。耳も尻尾も寂しいという感情がすぐに伝わってくるようにペタンとなっているな。
俺はリルの頭を撫でながら答える。撫でてもいいんだよな? ……嫌がらないしいいか。
「いや、まだまだ帰れないらしい。なんでも…帰るには、この国の国王に頼らなきゃいけないんだとか…」
「うわぁ…それは難しいぞ。こんな事言うのもアレだけど、今の国王はちょっと…ね。まあとにかく、タイミングが悪いというかなんというか……」
リルが顔をしかめる。
なるほど…国民からの指示は悪い国王なんだな。
「なんでも、俺達を呼び出したのがその国王らしい」
「わふっ!? 何を企んでるんだろ…」
「なんかな、黒魔神?……とかいうのを倒して_____」
「っ!?」
黒魔神。
その名前が出た途端、リルは幽霊でも見てしまったかのような顔をし、俺を掴んでいた手にはより力が込められる。
「黒魔神…なんて…そんな!?」
「なんだ、そんなにヤバイやつなのか?」
「わふ…ヤバイなんてものじゃないよ…。ま…まさか御主人達、本当にそんなのと戦うんじゃないよね?」
リルはその黒魔神について知っているみてーだが…。
だから俺は詳しく訊こうとしたが、リルも漠然としたこと……なんでも『強い』ということと『別の世界から来た"賢者"が槍の中に封印した』ということしか知らないらしい。
まあ、ただ。その魔神ってのがこの世界でどんな扱いを受けてるのかはわかったから良しとしよう。
「そうか、なるほどな」
「でも…だとすると…黒魔神って本当に居たんだ…。そうだよね、異世界から来た人…賢者が、今こうして、3人も居るわけだから…」
「まあ…それも何時になるかわかんねーからよ。その間は…その…なんだ? 彼氏としてリルのそばに…だな」
「わふぅ…御主人」
リルはさらに俺を強く抱き締め、顔を埋めてくる。
柔らか……違う、今は割と真面目な話をしてるんだ。
俺はその彼女である狼少女を抱きしめ返したりしてみる。
中々恥ずかしいというか…慣れない感じがあるんだ、これが。
しばらく間を置いてから、俺はまた話し始めたりする。
「で…リル。今後はどうする?」
「SSランクかSSSランクにならなきゃいけないんだろう? ならまずはSSランクの魔核を提出すべきだね」
「まあ…それはしばらく後だな。疲れてるしちょっと休もうぜ。3~4日以上は…よ。忙しくなっちまったら二人でどこか出掛けるとかもしにくくなるだろ?」
「えへへ…それもそうだね」
リルは俺に向かってニッコリと笑った。
うーん、可愛い。
「わふふ…それにしても…あのサクラって子はエライ美人だったね…。カナタって人もいい顔してたし…御主人はカッコいいし…。もしかしてそのチキューってのは美男美女しか居ないのかな?」
「え?」
俺が…カッコいい? ……それは置いといてだな。
違うんだよなぁ…あの子達が特別なだけで…どちらかというとこっちの世界の方がそれに当てはまるんだよな…。
「いや、俺はどうか知らねーが…あれは叶君達が異常なだけだ。顔の良さの平均値の高さで言ったらこの世界のがかなり上だぞ?」
「そうなのかい? へー」
その後、俺とリルはその部屋で心身ともにゆっくりと疲れを取るように休んだり…そのなんだ、如何わしくない程度のスキンシップもとった。
明日はデートをしようと、そんな話をしながら。




