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第三百十二話 久しぶりの街 (翔)

 俺とリルは遭難するまで泊まっていた宿屋へと来た。

 中へ入る。



「あの…すいません…」

「はい、いらっしゃ……ふぇぇぃっ!?」



 店主さんに、すごい声出して驚かれたぜ…。



「あのつい1週間程前まで泊まっていた者なのですが…」

「し…ショー様ですよね? 魔物に襲われてお亡くなりになられたと聞きましたが!? お…お化け…」

「お化けじゃねぇっす。ちゃんと生きてますよ」



 その後、なんとか死んでいないことを証明した。

 店主さん曰く、部屋を居なかった間、契約していた日数分空けていたので、代金は返却できないとのこと。

 まあ、それは仕方ない。


 その代わり部屋に残していた荷物は返してもらえた。

 なんでも、明日、破棄する予定だったとか…。重要な物は残していかなかったから良かったが、それでも危なかったな。


 ついでに今夜も泊めて貰えないか訊いたところ、満室らしいのでそれは叶わなかったぜ。



 俺とリルは次に、俺らが受けていたクエストがどうなってしまったかを訊くためにギルドへ。

 本来ならば失敗したら、最高で報酬金の5%、罰金として払うらしいが…。


 

「すいません、『レッドイヤー』というパーティなんすが、1週間前に受けていたクエストに失敗してしまって…」



 と、ギルドカードを二人分、渡しながら受付嬢に訊く。



「はい、レッドイヤーのショー様とリル様……ぇ…ええ…ええええっ!?」



 受付のエルフの人にも驚かれたぜ。

 それもここはギルド…多くの人が集まるから、今の絶叫とも呼べる悲鳴を聞いて多くの冒険者達が俺らの元に集まってきた。



「なになに、何があった!?」

「なんだ、なんだ」



 ぞろぞろと集まってきた人達。

 俺が変なことしたと勘違いされないように、ゆっくりと、遭難から帰ってきたと、その大衆に話した。

 ______その場にいる冒険者、ほぼ全員から幽霊扱いされた。遭遇しただけで死んだと思われる……それほど、SSランクの魔物は驚異らしい。



「よがっだ…よがっだんだしぇ……」

「オォォイオイオオイオイ、よがっだなぁ…」



 俺にギルドで一番最初に話しかけてきた賭け好きの人達は、俺達が幽霊でないと弁明するために言った、何があったかをトールさんにした説明と同じものを聞き終わると、泣き出してしまった。

 その他にもいろんな冒険者から感嘆の声が。


 俺とリルは宴会をやるとか言い出した皆からの誘いを『やる事がある』と断り、その場から抜け出した。


 とりあえず、俺が聞きたかったことはきけたぞ。

 どうも、SSランクの魔物が発生するという(世間一般から見て)どうしようもない事故なため、依頼をこなせなかったお金は発生しないらしい。

 

 ギルドの外からチラッと聞いたが、俺とリルが居ないってのにどっちみち宴会はするようだ。

 まあ……リルは知らねーけど、俺は酒飲めねーしな…まず未成年だしな。



「御主人。この次はどこ行くの? もう、会いに行く?」

「いま、まだだな。いくらか魔物の素材や宝石を売って荷を軽くするってのもアリだが…まずは昼飯だろ。もう12時半だしな…宴会に参加した方が良かったか?」

「ううん、私は御主人と二人で食べる方が嬉しいな」

「そっか…。ならピザでも食おうぜ」

「うん!」



 俺とリルはピザ屋へ。

 とにかくチーズとかの乳製品や小麦で作ったもんが食いたかったんだよな、俺。

 別々の種類の、個人で食べきれる大きさのピザをそれぞれ1枚頼んで半分ずつわけて食べた。

 ……俺はちょっと足りなかったからフライドポテトも食ったがな。


 その次は目的だった、道具やらアイテム、魔物の素材、武器などをなんでも売り買いできる店へ入る。


 その場で俺は、とりあえず依頼されてたのが無効となり不必要となったスクリューフーク+その他と、ダンジョンで殺しまくったその進化系のデサントフーク20匹の死体を売った。


 かなり驚かれたが、この国で一番大きな店だったので、俺が売ろうとした分の金は用意できたようだ。

 ……占めて1320万8000ベル……1億3208万円。


 ほんと、よくこんな金用意できたよな。

 心配になって訊いてみたんだが…実は常にそういう事があっても対処できるようにしてるらしい。


 Bランクの魔物を20匹も売ってくる客は初めてらしいが……Sランクの魔物を買い取ることはあるらしいからな。


 それと、この商人組会のVIP会員にさせられてしまった。優先的に魔物の素材を売って欲しいとのこと。

 まあ…ここ以外に売れる場所ないし、別に良いんだがな。



「1000万……わふ…わふぅ…1000万……」

「ミルメコレオとかもまだまだあるからな。全部売れば1000億ベル行くかもな…なんて」

「ひぃ……」



 その値段を訊いて少し震えてるリルの手を握ってそのまま銭湯へ行ってから、高級住宅街のトールさんが言ってた賃貸へ。


 会員登録やらなんやらしてるうちに、もう15時だったからな。まあ…一番の理由は銭湯で俺にしては珍しく長風呂してしまったことだとは思うが。


 叶君と桜ちゃんが住んでるらしいマンションは、とても豪華で広そうだった。 

 こんなとこ、ふつうなら逆立ちしても住めないだろう。

 いや…今の俺らなら住めるかな。


 リルはその建物を見て、少しどころか…全身、ガクガクと音がなりそうな程に鳴らし、震えている。

 そんなリルの背中をさすりながら、俺は広い借家の中に入った。


 そしてすぐに受付へ直行する。



「すいません」

「ホーム・ロイヤリティへ、ようこそおいで下さいました! 御用件をお申し付け下さい」


 

 受付はエルフの美人なお姉さんだ。

 どうもこの国は、公共施設や大規模の店、高級な店の受付はエルフが多いな。


 リル? リルは黙って震えてるぞ。



「その…知り合いに会いに来たのですが。カナタとサクラという入居者は居ますか? 俺と同じ黒髪黒目なのですが……」

「カナタ様…とサクラ様ですね。はい、居りますよ。お呼びいたしましょうか?」

「お願いします…。俺の名前…『ショー』と…あと、『女の子みたいな高2男子の親友』と言えばわかると思います」



 こういう、『と、言えばわかる』みたいなやりとりは一度してみたかったんだぜ。

 ……別に今する必要もねーけどな。したかったんだ。



「ショーさん…で、『女の子みたいなコォニ男子の親友』ですか?」

「はい」

「承知いたしました」



 一礼してから受付のエルフのお姉さんは、この広い屋敷の何処かへ消えた。


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