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第三百八話 双子の思考記憶鴉 (叶・桜)

「ふふ…ついに…ついに我らは挑戦するのだ…ここの主にな……気分はどうだ、桜よ」



 自分の黒い眼帯にそっと触れながら、カナタはカッコつけて変なポーズのままそう言った。


 ダンジョンの最期の一周をし、ミッションを伝説級で留めてクリアして鍵箱を手に入れたカナタとサクラは、大扉の前でそれを掲げ、大扉は謎の光を出してから開いた。



「気分はどう…って言われても…ね」

「じゃあ…剣神奥義と新しい剣には慣れたか?」

「まあ、それは慣れたかな」



 この最後の周回をする前に、カナタはサクラに剣神奥義を作っておいて貰った。

 ★★★★の奥義では足りないと感じたのだ。



「じゃあ入ろっか……。補助魔法は限界まで全種類かけたっけ?」

「大丈夫、行こう」



 カナタとサクラはその大扉へと入っていった。



 中は真っ暗。と言ってもお互いは何故か見える。

 サクラは試しに透視をしてみたが、カナタの上半身が裸に見えたくらいで、他にはなにも見えない。 



「桜…足元とか気をつけてね」

「そっちこそ。私はこんな感じ…目が見えてない時に慣れてるけど、叶は全然でしょ」



 ほぼ無意識に、当たり前のように手を握る二人。

 そしてしばらく歩いたところで、部屋が突然明るくなった。

 この部屋はどこか機械的であり、壁には一定の間隔で緑色の光が走る。



「すごい…かっこいい…あああ! なんか本当にボスステージって感じだぁ…」

「はいはい、そうね…。それより向こう見てよ。あれが多分ボスよね?」



 サクラが指した方向…この部屋の奥には黒く、今までの魔物と同じように緑色に光る、大人2.5人分くらいの高さはありそうな鳥の魔物が二体立っている。双方ともほぼ全く同じ姿だ。



「そうだね…カラスか」

「それにしてもボスって1匹じゃないのね」

「ねー」

 

 

 二人がそう、仲良く話していた時、その2匹の鴉の目が開かれた。

 一方の目はエメラルドのように常に緑色であり、もう一方は金色をしている。

 そして、咆哮のように鳴くとすぐに翼を広げ、天井がものすごく高くなっているこの部屋の上へと飛んだ。



〈私の名は思考大鴉 ムニン〉

〈私の名は記憶大鴉 フニン〉



 二人を見下しながら空中で止まって飛んでいるまま、その2匹は自己紹介をした。



「おおおおっ…カッコいい! 俺も俺も! 我が名はカナタ! 別世界から来たり、漆黒の_____」

「……バカ。こんな時になに言ってるの。張り合わなくていいわよ」


 

 夫婦漫才のような息ぴったりな二人の様子を見せられた2匹の大鴉は、変わったモノを見るような目で二人を見ている。



〈なあ、ムニン〉

〈なんだい、フニン〉

〈あの少年と少女はココにふざけに来てるのかァ?〉

〈さあね。でも実力はあるみたいなのカぁ〉



 その後、数秒黙った2匹。

 そして、息を合わせて同時にこう言った。



〈〈どちらにしろ、迎え撃つのみ!〉〉



 2匹はさらに高く飛び上がる。



「いよいよって感じだね!」

「だ…大丈夫なの? やっぱり強そうよ?」

「まあ…見てるが良い」



 そう言うとカナタはサクラの隣から消えた。 

 次にカナタが現れたのは、ムニンと呼ばれている方の大鴉の上。

 そしてカナタはこう呟きながら槍をふるう。



「槍神奥義…極、五の五月雨」

〈な…にっ!?〉



 次の瞬間、ムニンは無数ともいえる槍突きの雨に襲われた。身体中に穴が開く。

 そしてその一撃はどれも威力がとてつもなく高い。


 ゆえにムニンはその一つの技で息絶えてしまった。



〈ムニ……ン!?〉



 フニンがその名を叫ぶも、答える相手はいない。

 大鴉の遺体は吐き出されたSSランクの魔核1個とSランクの魔核5個とともに落下____はせず、いつの間にか地面にまで届いていた。


 カナタが瞬間移動で地面まで移動させたのだ。

 カナタはサクラの隣に戻る。



「はい」

「わあ…あっさりと倒しちゃった……。流石カナタね!」

「ふふふ…力は本物なり。我は本当に強い厨二病患者……」

「あ、そこ、自分で言っちゃうんだ」



 余裕そうな表情でボケとツッコミを交える二人を見た大鴉フニン。



〈そ…そのように余裕でいられるのも今のうちかァっ!〉



 その言葉とともに、Sランクのスキルの魔法陣が一気に3つ展開された。

 その様子をみて少し慌てるサクラだったが、カナタは依然、余裕の表情だ。


 すぐに魔法は二人に向かって放たれた。

 それは無数の羽のような闇魔法と風魔法の複合矢や、闇魔法と風魔法のレーザー、風魔法と氷魔法の嵐。


 どれもこれも、高威力の技であった……が、二人に当たる前に消えてしまう。

 カナタもサクラを中心に、どこか水色で透明なバリヤーのようなものが貼られているのが見える。



「ね、なんともない」

「な…なにこの…ドーム状のやつ」

「これは俺のスパーシ・オペラティオンの技の一つだよ。この壁に当たったものは俺が指定した場所まで勝手に瞬間移動する。ふふふ……俺のスキルは単純な瞬間移動だけじゃないんだよ。まだたくさん、使ってないのがあるのさ」



 そう、カナタは自慢気にサクラに言った。

 そしてその説明が終わると共にあらわれる、フニンが放ったはずの魔法…。場所はフニンの真上。


 

〈カァッ……!?〉



 全てをフニンは回避する間もなく全て受けてしまう。

 それらは主に翼を狙ってあらわれたため、羽がやられ、フニンは天井近くから、黒い羽根を撒き散らしながら落下した。



「倒したの?」

「まだだよ。その前にする事がある」

「する事?」

「うん。転生しないと。さっきの一方を倒した時におそらく、レベルが限界まで行ったから」



 そう言われ、サクラはステータスを覗いた。

 たしかに、転生ができるようになっている。


 そのままサクラはカナタに転生するようにと言われ、転生した。勿論、カナタは既にしている。



「よし…で、あのカラスのとどめは桜がさして」

「なんで?」

「もし、俺らがなんらかの理由で冒険者になった時、SSランクの魔核は、自分でトドメ刺した魔物のでないと受け付けてくれないから。そのためにとっておく」

「わ…わかった!」



 二人が話し、転生してる間に再び飛ぼうとしていたフニンだったが、二人が話し終わった次の瞬間、首が斬り取られてしまう。

 サクラの技だった。


 こうして無事、二人はダンジョンをクリアした。

 

 

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