第二百九十話 ダンジョン-2- (叶・桜)
二人が次の部屋に来ると、そこには大きなムカデがいた。その魔物も基本黒色であり、目や節の間などは緑色に光っているように見える。
「ムカデ…よね? なんかそんなに気持ち悪くないというか」
「ゲームに居そうだよね。ソォイッ」
カナタは槍を投げる。
先程のロバと同じように念術を駆使して複数回つき刺すと、その無駄にカッコいいムカデはズシンと大きな音を立てて倒れた。
その亡骸からはBランクの魔核が2個出てくる。
「ここの魔物って、みんなこんなにカッコよさげなのかな?」
「さ…さぁ…」
二人は死体を回収し、次の部屋へ。
次の部屋には剣を持っている真っ黒で所々緑色の光が見え隠れしている人型の何かが、5体、佇んでいた。
「おおっ…これもカッコいい…」
「なんだか叶が好きそうな敵ばっかりね」
「そうだね…ふふふ、やっぱりダンジョンとかってこうじゃなくっちゃ。気持ちが高ぶってナンボだよねん」
呑気に話している二人に、その5体は飛び掛ってくる。
しかし、その途中で5体一気に団子のように、くねくねと奇怪に移動する槍に貫かれた。
カナタが槍を念術で操りながら投げたのである。
貫かれたその人形の5体は砂が風で吹き飛ばされるように消えてしまった。残されたのは持っていた剣とDランクの魔核10個。
「あれ? いつの間に倒したの?」
「今倒したんだよ…あ、死体は残ってないみたい。剣と魔核だけだね」
「よく一気に刺せたわね」
「まあ…我だから? フフ」
カナタはドヤ顔をした。
そんなカナタの頬をサクラはつねる。
「いひゃい!?」
「さ、次行くわよ」
「……うん」
二人はさらにその次の部屋へと進んだ。
その部屋の正面には大きな扉。
その扉の前にはミルメコレオが居た。
ただ、普通のミルメコレオと違うのは、肌や毛の色がより黒く、目や爪、関節などが機械的に緑色に光っており、なによりそのタテガミや尾の毛が光の角度によってこれまた淡い緑色に見えるのだ。
次のステージがボスの部屋…ということより、カナタはそのミルメコレオの容姿に興奮している。
「カッコいい…カッコよすぎだって…すげぇ…」
「確かにあれは凄いわね…強そう」
「あれは多分ミルメコレオっていう魔物だよ。Aランクの中ではよく現れる魔物らしい。でも見た目が所々違う…多分亜種だね。ていうかそもそも今までの奴ら全部亜種だね」
この世界での『亜種』は劣っている存在という意味ではなく、変異種等の意味である。
「俺決めた! ソォイ」
「何を?」
「あのミルメコレオの素材を使って、鍛冶屋さんで俺専用のパルチザン作ってもらう!」
「へぇ…良いんじゃないの?」
既に身体に数カ所の刺し傷ができて息絶えているミルメコレオを見ながら、サクラはカナタのその意見に賛成した。
「ところで叶。もうダンジョン終わりみたいだけど?」
「そうだね…ちょっと短い気がする」
「んー? そうかな? まあ良いや、外に出よ_____」
カナタはサクラの手を握ると同時に、話を止め、どこか一点を集中するように見始めた。
カナタが見つめているその場所はこの部屋の角であった。
「叶…? どうかしたの?」
「いや…アレ、あそこ…。なんでこの部屋のあそこの角だけ、緑色のライン入ってるんだろ」
「さぁ…」
「ねぇ…よく見てみて良い?」
「まあ、止める理由もないし」
二人は手を離し、その謎のラインまで近づいた。
カナタはそこをコツコツとノックしてみたり、耳を近づけて音を聞いたりしている。
「何かわかった?」
「いや…だけど何かありそう。桜、ちょっと離れてて」
「ん」
「サンダーマーチレス!」
カナタはそこに向かって魔法を放った。
大きな音を立て、その壁は壊れる。
「あぁっ…! 隠し部屋だぁっ…!」
「ほ…本当だ! 叶、すごい!」
「あああ~、すごい…興奮するー! 素晴らしいー! あーっ!」
「……すごいのはわかったから、ちょっと落ち着きなさい」
興奮して変なポーズをしながら小躍りしているしているカナタの額を、サクラのデコピンが襲った。
そんなに痛くない。
「あべし!」
「さ…ほら、あの部屋に入ってみるわよ」
「…うん」
二人はその隠し部屋へと入った。
それと同時に頭の中にメッセージが流れこむ。
【ニヴルの森の「怒り」のダンジョン のシークレットステージに入りました。ここでは、ミッションが出されまさす。
そのミッションをクリアすると、宝箱が現れます。クリアした際の達成度によって、手に入る宝箱の中身が変化します】
【攻撃を当てて四角い物体を動かし、3分以内に目的地まで運べ。制限時間内に到達した時点でクリア。また、到達が早ければ早いほど手に入る宝箱の中身が良くなる。それでは、ミッション開始】




